表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

俺の話

12/18(月)

 アァ、晴れやかなり日本晴れ。でもって俺ってばドンヨリング。あれ? 現在進行形つてingで良かったっけ?

 まぁ良いや。ドンヨリってそもそも動詞じゃねぇしな。形容詞か? なんか雰囲気ソレっぽい。


「来ねぇなぁ……」


 説明しよう! なぜ、俺がドンヨリングなのか!

 そう、絶賛シカト中だからである。そりゃまぁ? 一昨日に大喧嘩したばっかだし? というか、その原因も俺と言えば俺だし?

 でも、日曜丸々っとシカトしといて、今日は目も会わないってのは、流石にさ……悲しいだろ。

 なんか避けられてるのは分かるから、LINE送ったのに……返ってて来ねぇし。いや、避けられてんならそーなるだろーけどもさ。


「鏡見が静かな時って、だいたい頭ん中うるせぇよな。」

「お前さ、顔に全部出るんだからせめて騒げって。こう、視界が煩い。」

「冷たい奴らだなぁ、おい。友達が悩んでる時によ。」

「どうせ、おりっちゃんだろ。直ぐに仲直りするだろうし、心配するだけめんどくさい。」

「むしろこのままの方が難しい。」

「ハクジョーモン……」


 毎度毎度、何一つ自分からは動こうとしないあの無気力人間に、必死こいてお膳立てして謝りにいって仲直りするのは俺の役回りだ。俺の努力をコイツらは知らない。

 オーバーにおチャラけんのも、アイツが不安にならないように。色々とイベントやトラブルに首を突っ込むのも、アイツの経験値を考えての事だ。俺が居なければ、今頃ハイスペックなだけの見事な引きこもりAだったに違いない。

 そう考えると、もしかして俺って、結構お節介? アイツからすりゃ、余計な事ばっかりするどうでも良い奴だったリするんだろうか……


「絶対、変なこと考えてる顔だな、これ。」

「いつもは「分かってねぇなあ、アイツは感情表現が下手っぴなだけだって、俺はチョーマブダチだから!」とか謎の自信滾らせてんのに。」

「あ、今のモノマネちょっと上手かった。」

「マジで? やったぜ。」

「もー、お前ら黙れよ……ちくしょう……」


 心配しよーって言う優しさは無いもんかね、コイツら……


「まぁ、俺らに言わせればな? 何も言わないし見ても分かんない織部の奴に、あんだけ着いてけるバ……友達はお前くらいのもんだろうしさ。結構ありがたいって思われてると思うぞ?」

「おい、今なんて言いかけた?」

「そーそー、おりっちゃんが巫山戯たり笑ったりすんの、お前といる時ぐらいだもんよ。ありがてぇと思うな〜、嬉しいとか楽しいとか、ちゃんと信じてくれるヤツってさ。」

「お前ら……!」


 肩を組み、丸くなる俺達を指して、あろう事か「バカ……」と呟いた奴がいた気もするが。バカはそっちだ、これこそ友情だ、青春だぁ!


「よし、つーわけで行ってこい湿気モドキ!」

「さっさとカラッとしてこい濡れ雑巾!」

「お前らぁ……!」


 前言撤回。コイツら、やっぱり許さん。


12/20(水)

 一昨日はソッコーで帰られたもんで、昨日の早朝にアイツん家の前で張り込みして頭を下げてきたら。

 なんかあったっけ? ってな顔で頷かれた。いや、謝罪に「うん」で返して終わらせるなよ……まぁ良いけど。

 しかし、妙な事を言う。会ってもない日曜の思い出を楽しそうにはなすのだ。いや、というか楽しそうなコイツ自体、かなりレアなんだけどな。

 なんというか、どうにも違和感が拭えない。姿も声もそっくりなんだけど、本当にアイツか? と思ってしまう。腐れ縁として、ずっと見てきた俺が言うんだ、ただの気の所為ってモンでも無いと思うんだけどな。


「また考え事? バカの考え休むに似たり、だよ。」

「俺の事バカって言ってる? この前の期末テスト負けたの誰だっけ?」

「一科目が丸々抜けてたからね! 僕ね!」

「勝ちは勝ちだ。」

「誇りとか恥とか、なんか……無いの?」


 先にバカ呼ばわりしてきた奴がなんか言ってやがる。そんなことを気にするくらいなら、俺はダチとバカやってたい。


「まぁ、そんなだから人の事引っ張って逃避行とか出来るんだろうけどね。」

「ん? んな事あったっけ?」

「ほら、去年の事。結局、コツコツ貯めてたお金無くなっちゃってスゴスゴ帰ったけど、ね。」

「ん〜? 忘れるような記憶じゃねぇと思うんだけどな、それ……」


 同じだ、火曜と。俺の知らない俺達の事を、『コレ』は語る。俺の知ってるアイツは、何処に行ったんだろうか?

 本当に、違うのは時々の記憶だけなんだろうか……


12/22(金)

 あぁ、やっぱりだ。『コレ』はアイツじゃない。アイツはそんなに上手く笑えないし、能動的にアクションを起こさない。心変わりがあったとしても、不器用なアイツの事だ、違和感しかないだろう。

 でも、『コレ』は甘え慣れてる。俺を上手く使って来てる気がする。なんというか、「言われたから来た、まぁ楽しいね」というのがアイツで、「楽しみだから来た、君に誘われて」が『コレ』だ。微妙な違い、分かるかなぁ。

 でも、それだけなんだよなぁ……やっぱり不器用で無感動で、それを気にしてるけど深く悩むことも無いような。でも、楽しいことも人一倍好きな奴。


「ねぇ、次の日曜の事は覚えてるかい?」

「何時もの駅に八時だろ? わぁってるって。」


 『コレ』はアイツじゃない。でも、だまくらかすなんて器用な真似を出来そうにも思えない。きっと、アイツであることに違いはないんだ。

 だったら、良いぜ。乗ってやるよ、その茶番。俺がちゃんと、アイツのダチとして、『コレ』も引っ張っていってやる。だって……アイツにしか、見えねぇんだもんな。

 アイツが今、何処にいるのか、そもそもここに居ないのかなんてのは……そのうち考えるさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ