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炎の魔人編③『新たなる黒仮面』

連夜は、怪人:黒仮面が現れているという噂を教室で耳にする。

黒仮面は真白先輩だったのでは?

不審に思った彼は、噂について調べることにしたのだった。

炎の魔人編③『新たなる黒仮面』

 謎の襲撃者と謎の女に襲われた翌日。俺は替えのブレザーを着て家を出る。そして沼津駅の北口を出た後、こっそり昨日の現場に足を運んだ。

「うわ……」

 襲撃場所に着いた俺の前には、驚きの光景が広がっていた。

 めくれあがっていた地面は綺麗に整地され、ボコボコになっていたアスファルトは新しく敷き直されている。石の破片らしきものも綺麗に掃除されており、道路の色が新しくなっていることを除けば、昨日起きたことの痕跡は綺麗さっぱり無くなっていた。

「あの人……李緒さんの言う通りでしたね」

「っ……と、ヨウさん。おはよう」

「おはようございます。連夜君」

 現場の風景に驚いていた俺は、背後から気配を感じさせずに現れたヨウさんに一瞬動揺したが、なんとか平静を保った。

「これなら、何とかなりそうだな」

「そうですね」

 これなら、学校にとやかく言われることはないだろう。

 俺達は安堵の気持ちと共に、学校へと向かった。


「ふぅ……」

 昼休み。俺は食堂で1人、いつものようにカ◯リーメイトを齧っていた。

「ねぇ知ってる? 怪人:黒仮面のう・わ・さ」

「黒仮面って、あの? いじめっ子をやるって噂の」

 すると、後方から、2人の学生が話をしているのが聞こえてくる。声からすると、女子のようだ。

 ……また、嫌な雑音が聞こえるかもしれない。

 そう考えた俺は、カ◯リーメイトを齧りながら、両肘で両耳を塞ごうとする。

「何でも最近また現れたらしくってさ」

「まじ?」

 だが、耳を塞ぐより前に彼女達の黄色い声が耳に入ってくる。

「まじまじ。先週の土日にさ、あったじゃん? 南口の方で、人が5~6人くらい一度に倒れたの」

「えぇ……? そんなのあったっけ?」

「あったよ! 救急車も来てて、結構騒ぎになってたよ! それでさ、そのときその場に『いた』らしいのよ。その……黒い仮面を付けた、ローブの男が!」

 疑問を呈する黄色い声に対し、絶対に違うと言わんばかりの調子で返すもう1人の黄色い声。

「……は?」

 その2つの声のやり取りを聞いた聞いた俺は、思わず声を漏らす。

 だが、その声は2人には聞こえていなかったようで、彼女達の話が続く。

「それって本当なの?」

「いやそれがさ……私の友達がその人が倒れた現場にいたらしくて、物陰に消えていくそいつを見たって言ってんの」

「見間違いかなんかじゃない?」

「そうかなぁ……。あ、そういえばさーー」

 ここで女子高生達の話題は別の話に移っていった。

(……)

 怪人:黒仮面が現れた? しかも、先週?

 でも、黒仮面の正体は……。

 食事を終え、教室に戻った後も、この時聞いた話は俺の頭の中に残ったままだった。


「黒仮面が現れた、ですか……」

 部活の時間、いつものように自習室で自習していた俺は、昼休み聞いた話をヨウさんに伝えた。

「みたいなんだが……多分デマかなんかじゃねえかなと」

 黒仮面本人は、もうこの世にいない。俺自身がそれを目の当たりにしているのだ。はっきり言って、信じがたい。

「ふむ……。ただ、人が集団で倒れたという話は、少し気になりますね。今までの黒仮面の出現パターンと違っているようなので……」

 ヨウさんは一瞬カバンからスマートフォンを取り出そうとする。

「えっと、ヨウさん?」

「あっ。んんっ……。が、学校が終わった後、ですね。オリジナルにも聞いて調べてもらいます!」

 俺が声を掛けると、ヨウさんは何かを思い出したかのように手を戻した。校内では携帯端末の使用が禁止されている。そのことを思い出したのだろう。一瞬だけ、ヨウさんがばつが悪い顔をしたような気がした。


 その後俺達はいつものように自習を終え、いつものように沼津駅への帰路に就く。

「あっ! ミドリくん!」

 すると、駅の近くで金髪サイドテールのギャル……キララさんに出会った。

「キララさん? こんにちは」

「……こんにちは」

 俺の後ろにいるヨウさんも、俺に続いて挨拶を交わす。

「おいっすー」

 俺達の挨拶を聞いたキララさんも、調子の良さそうな声で返事をした。

「こんなところで会うなんて、奇遇ですね」

 彼女と会うのは、これで2回目になる。

「そうだねー。あ、そうだ!」

 俺の言葉を受けたキララさんは、右こぶしを左の手のひらにポンと当て、何かを思い出したかのような仕草をした。

「キミ達さ、晴斗と同じ学校に通ってるんだよね?」

「あ、はい、そうです」

 俺が返事をするのと同時に、いつの間にか俺の隣にいたヨウさんも無言で頷く。

「だよねだよね! じゃあさ、晴斗に聞いてくんない? 『最近何かあった?』って」

「え?」

 キララさんは両手を合わせ、お願いするような仕草をしてきた。

「なんで俺に……つか、将軍に何かあったんですか?」

「いやそれがさぁ……最近アイツ、何か様子がおかしくて」

「様子が……おかしい……?」

 キララさんに言葉に、ヨウさんが食いついた。

「何というか、思いつめてるというか……妙に焦っているような? そんな感じがしててさ」

 キララさんの声色は、何というかいかにも不安に感じていそうな喋り方だった。

「アタシと先週末遊んだときも、突然切り上げて帰っちゃったもんだから、ちょっと心配なんだよね……」

「そうなんすか。……将軍には、聞いてみたんです?」

 正直、将軍とは普段学校であまり話をしない。同じ進学コースのクラスではあるものの、基本的に話をしてくるのは向こうからで、俺から話をすることはまずない。彼との仲の良さに関してはキララさんの方が何枚も上手だ。だから彼女なら悩みを聞き出せているのではと思ったのであるが……。

「もちろんアタシは聞いたよ? でも何というか、はぐらかされちゃって……」

「なるほど」

 キララさんにも話したくないような、秘密を抱えているといったところだろうか。

「だからさ、同じガッコに通ってるキミ達になら、喋ってくれるかもって思うんだよね。ほらっ、親しすぎる人には話しづらいってこと、あるじゃん? キミ達なら丁度いいと思うんだよね」

「まるで俺らが将軍とあまり親しくなさそうだとでも言いたげな雰囲気ですね……」

「でも、実際そうじゃないの? 晴斗言ってたよ? あいつから話しかけてくることはないってさ」

「うぐ……確かにそうですけど……」

 痛い所だが、真実だから仕方がない。というか、最後に将軍と話をしたのはいつだろうか。確か、真白先輩のあの事件があった翌日以来、彼が話しかけてきた覚えがない。

「でしょ? まぁとにかく! お願いします! そんで、もしアイツが何か悩んでいるようだったら……力になってくれとまではいわないけど、せめてアタシに教えて欲しい!」

「わ、分かりました……聞けるか分かりませんが、やってみます!」

 正直、あまり親しくない人から依頼をいきなり吹っ掛けられている今のシチュエーション……普段の俺だったら何かしら理由を付けて断っていたに違いない。だが今は隣にヨウさんが居たこともあって、何というか、断りづらかった。なので、やれるだけやってみようと思った。

「ありがと~! んじゃ、よろしくね! ミドリ君、葵ちゃん! 良い報告、待ってるよ~!」

 そう言うと、キララさんは駅の方へと走りだしていく。

「あっ、ちょっと!」

「待ってキララさん! 連絡先はー!?」

 ヨウさんの声が届いたのか、キララさんは立ち止まり、俺達の方に戻ってきた。

 危なかった。仮に将軍から何か聞けたとしても、連絡先が分からなければ、報告のしようがない。

「っ! あっ、ごめんごめん! そうだよね! 連絡先ないとだよね……。うーん……」

 キララさんは少し考えるような仕草をした後、ポシェットからメモ帳を取り出し、何かを書き始める。

 そして書いたメモを1枚破って、俺に手渡してきた。

「ここに電話して。夜の10時以降なら……多分出るから」

「わ、分かりました」

 メモに書かれた電話番号を見る。最初の3桁を見ると、携帯端末用に割り振られた番号ではない。彼女の家の電話番号だろうか。

「んじゃ、またねい!」

 今度こそ、キララさんは走り去っていった。

「将軍の様子がおかしい、ねぇ……」

「黒仮面の話とは違いますが、何だかこっちも気になりますね。彼、あまり悩みとかないようなタイプだと思っていました」

 ヨウさんは、キララさんの話に興味津々のようだ。何というか、楽しそうな声色だ。

「だなぁ……」

 俺が抱いている将軍のイメージは、何というか熱くてポジティブで……それでいて非日常の刺激を求めている好事家、といったところか。少なくとも後ろ暗い秘密や悩みを抱えているような人物、という感じではない。だからこそ、キララさんから聞かされた話に、俺は内心驚きがあった。

「一橋君は、連夜君と同じクラスですよね?」

「そうだな。俺の方で聞いてみるよ」

 ヨウさんは普通コースなので、進学コースの将軍とは普段接点がない。彼に聞くのはどう考えても俺が適任だ。

「分かりました。結果が出たら教えてください」

「あいよ」

 キララさんからの依頼について段取りを決めた俺達は、再び駅への道を歩き出した。


「黒仮面、黒仮面っと……」

 家に帰った俺は、夕食と風呂の後、早速PCに向き合い、電子掲示板を調べ始める。

 するとほどなくして、黒仮面の目撃情報らしき書き込みがいくつも見つかった。

(この書き込みは……先週の土曜日!? 間違いない。あの後だ……)

 先輩の死後も、黒仮面の目撃情報が上がっているというのは、間違いないようだ。

 掲示板に書かれている黒仮面の情報をまとめると、次のようになる。

 どうやら10月に入った頃から、多くの人間が集団で体調不良を訴える出来事が沼津市の各所で起きているらしい。

 そして、その現場で黒い仮面を着たローブの男が居るのを見た人が居るという。

 この黒仮面の目撃情報と体調不良事件はネット上では話題になっているものの、例によってニュースになっていないようだった。家で取っている夕刊もチェックしたが、新聞にも全く書かれていなかった。

(あちこちで人が体調不良になっているのにニュースになっていない? 変だな……)

 体調不良事件の頻度は書き込みの日時から推測するに大体数日に1回の頻度で、被害者は1度に大体5~6人ほど。真白先輩が起こしたと思しき『事故』や『事件』よりも頻度が多く、被害者の数も既に上回っている。だがネット上の噂にこそなれど、お茶の間で放送されるような事態にはなっていない。

(どうなってんだ?)

 明らかに何かがおかしい気がするが、その理由を知るための何かが欠けている。謎を突き止めることが出来ず、もやもやした気持ちが湧きあがる。

(黒仮面の事件について、何らかの報道規制が敷かれている、とか……?)

 真っ先に思い当たったのはその考えだ。だが流石に……それは陰謀論めいていてあれな気がする。更に言えば、そもそもこの体調不良事件と黒仮面に本当に関連があるかも定かではないのだ。決定的な証拠は、ネットの海にはどこにも見当たらない。

(……)

 俺は無数の書き込みを読みながら、ただただ首を傾げるほかなかったのだった。

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