001 三つ子の妹と血が繋がっていなかった
お久しぶりです。新作書いてみました!
「実はな、智也は俺と死んだ母さんの息子じゃないんだ」
「は?」
「あ、でも白姫・發樹・真中は俺たちの娘だぞ。実子じゃないのはお前だけ」
「いや…………え?」
19年生きてきて、経験したこともない情報量だった。まさかサークル合宿から帰ってきたその日にこんなことを告げられるとは思ってもいなかった。
俺はこの桜田家に生まれ、大切に育てられたと思っていた。だが、実子ではなかったらしい。
漫画の主人公のように、家を飛び出して走り出そうとは思わなかった。ただ茫然と、黙って座っているしかなかった。心臓にナイフを突き立てられた、そんな思いだ。
しかし穴が空いたような心に、一筋だけ光が残っていた。
「親父、それアイツらには伝えてあるのか?」
「おう、お前が合宿行っている間に伝えておいたぜぇ」
親父は年甲斐もなくピースサインを俺に向けた。
そうか、あいつらも知ってるんだな。
「「「ただいまー」」」
「噂をすれば帰ってきたな!」
「あ、智兄お帰りー」
「なんだ智也、ずいぶん呆気に取られた顔だな」
「お兄ちゃん、もしかして実の子じゃないってカミングアウトされた?」
「ちょっと待て。同時に喋るな。白姫、發樹、真中」
仲良く同時に帰ってきたのは三つ子の妹たちだ。
長女の白姫は天然なおっとりさんだ。白いふわふわの髪の毛、常に眠そうな目、そして謎の行動力。17年一緒にいるが、いまだに掴みどころが分かっていない気がする。
次女の發樹はしっかり者だ。姉が天然な分、自分が頑張ろうとする。ストレートな茶髪は發樹の性格をそのまま表したように真っ直ぐだ。俺へのあたりが少し強くて、17年一緒にいるが、いまだに信頼を掴めていない気がする。
三女の真中は揶揄い好きな小悪魔だ。金髪ツーサイドアップはまるでアニメキャラのように目立っている。俺も2人の姉も揶揄いの対象になるため、困った妹という位置付けだ。だが末っ子ゆえに、みんなに愛されている。
俺には個性豊かな三つ子の妹がいる。だがこいつらは血の繋がっていない義妹……なんだよな。なんだか現実味がないぜ。
「ちょうどいい、白姫・發樹・真中も座りな」
親父の言葉に素直に従い、俺の妹たちは椅子に腰掛けた。
余談だが、妹たちの名前は親父がつけたらしい。親父は麻雀好きで、三つ子と判明した時点で三元牌の「白・發・中」から名付けることを決めたらしい。女の子に麻雀牌から名を取るとはなんて父親だとちょっと呆れている。
改まって座った桜田家5人。親父はヒゲをなで、軽い口をわざと重そうに開けた。
「知っての通り智也は実子じゃない。でもまぁこれまで通り家にいていいから安心しろ」
「それは助かるけど……なんでこのタイミングで言ったんだ? 普通20歳になったタイミングとか、成人した去年とかだろ」
19という年齢はカミングアウトするには微妙すぎる年齢だ。何か理由があるんじゃないかと疑っている。
「あー、お前には話しにくいな」
珍しく親父が罰が悪そうにしている。こんな姿初めてだ。
「言ってくれよ。もう今さら何を言われたって驚かないさ」
「智兄カッコいいー」
「白姫、こんなのヤケになってるだけよ」
「えー、お兄ちゃんカッコいいと思うけど?」
「そこ、うるさいぞ」
「ごほん!」
わざとらしすぎる咳をして、親父は俺たちを黙らせた。
話す覚悟を決めたような親父の顔は、これまた初めて見る親父の姿だ。
「智也、なんでこのタイミングで言ったのかを疑問に思ってるな?」
「お、おう」
「それはな……お前がモテないからだ!!」
「…………………………は?」
18:30ごろもう1話更新します。




