表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

6

『確かに、私が行った訳ではありません。でも........』


私の立場だったら、父上にお願いして止めて貰う事が出来たかもしれない。事前に知る事が出来て居れば、もしかしたらと思うと、申し訳なく思う。


『起こってしまったことは仕方がない。これからをどうするかが大事なんだ』


落ち込んでしまった私を慰めてくれているのか、私の背中をポンポンと叩いてくれる。優しい人。


『あの、』

『なんだ?』

『いい加減に離してくださいませ』


じとっとした目で見ると、その人は金色の瞳を丸く開いて、そしてフッっと笑った。


『エインだ』

『?』

『俺の名前はエインだ。君の名は?』

『私の名前?どうして?』


突然私の名前を知りたい?なぜ?


『君を気に入ったから』


気に入った?は?私を気に入った?へ?え?えーーーーーー!?

思いもかけない言葉と共に、エインの唇が私の唇を掠め取る。エインの薄い唇の感触。一瞬触れたその唇の熱に、私はすっかりフリーズしてしまった。腕の中で固まってしまった私をみて、エインと名乗ったその人はひどく満足気に笑った。


**********************************************


エインを私を乗せて来てくれたラジカに乗せ、私はまた呼び寄せた別のラジカに跨る。元いた広場に戻ってくれる様にラジカ達に告げる。

エインはラジカと話している私の姿を興味津々に見ていた。


『こいつらの言いたい事が君には理解出来るのか?』

『えぇ。貴方には出来ないの?』


不思議そうに尋ねる私に、素直に答える。


『なんとなく、だな。君みたいにはっきりは理解出来ないが、なんとなくは分かる。俺の身体が重いと言っているだろう?』

『あら、よく分かりましたわね。固くて重くて大変だって』


確かにな、申し訳ない と、エインはラジカに声を掛けて首を優しく撫でた。


エインの身体に負担にならない様にゆっくり広場に戻って貰った。思った以上に時間がかかり、空には気の早い星が瞬き始めている。

沢山いた小鳥達はもう誰も残っておらず、寝床に戻った様だった。


『ありがとう』


ラジカの背から降りて、エインは礼を伝える。


『どうと言う事はない』


と答えるラジカ。なんとなくなんだけど、お互いの気持ちは伝わっているらしい。


『君は家に戻るのか?』


ラフィーネに尋ねるエイン。


『えぇ、戻らないと叱られてしまうわ』

『そうか。残念だな』 

『何が残念なの?』

『君の事が気に入ったと言っただろう?』


思い出さない様にしていたのに、エインの一言ではさっきの事を思い出してしまった。ほんの一瞬、エインの唇が私の唇に触れた事を。

エインの腕の中から漸く抜け出した事。でも、エインの腕の中にいた時の温かさに、また腕の中に戻りたいと思ってしまった事など様々な事を


『な、何をおっしゃっているの?揶揄うのもいい加減にしてください』


先程の口付けの事といい、エインに振り回されっぱなしだ。


『揶揄ってなどいないさ。君の事が気に入ったのは本当だ』

『私は、醜い容姿ですし、そんな私が気に入ったなどと、揶揄う以外に考えられません』


ラフィーネは自分で言いながらも、自然にうつむいてしまった。


『誰が醜い容姿だと?』


何処からか、ひんやりした空気が漂ってくる。


『皆が言っていますもの。くすんだ赤い髪に、薄い琥珀色の瞳。家族に似ても似つかない妖精の取り替えっ子と』


皆に言われている言葉。聞き慣れた言葉だけど、言われるたびに目に見えない傷ができ胸が痛んだ。家族はそんな事ないと言って、無条件に愛してくれるけど、でも、醜いと言われる事は辛い。


『顔を上げろ。君は醜くなんてない。自分で言うのもなんだが、俺は自他共に認める面食いだ。美しくない女には、食指は動かん』

『面食い?何か、美味しい食べ物?食べるのが得意なのですか?』


ラフィーネが聞いた事のない言葉に小首を傾げ、エインに真顔で尋ねる。ラフィーネの言葉に、一瞬エインの顔が引き攣った。


『まぁ、食べるは食べるがそう真面目に得意かと聞かれると…』


これだから箱入り娘はと、ブツブツとエインが小声で文句を言っている。


『兎に角、自信を持て。俺が惚れた女だ。誰にもなにも言わせない』


エインがそう話し、ラジカの背に乗ったままの私に手を伸ばし、頬に触れる。壊れ物を扱う様に優しいエインの手が、ラフィーネの心をくすぐる。


『あ、ありがとうございます』


恥ずかしさに顔を赤らめたラフィーネに、エインは小さく笑う。


『また、明日。ここで君の来てくれのを待っているよ、ラフィーネ』


そう告げ、ラフィーネの手を取り、指先ににエインはそっと口付けをした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ