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『エイン、良い番だな。我を見ても驚かず、感謝するなど』
ランドルフの声が、ラフィーネの頭のなかに響く。
「それはそうだ。俺の大事な番だからな。身も心も美しいだろう?」
エインが自慢げにランドルフに話す。
「エインっ!そ、そんな事ないわ。わたくし、エインの様に美しくなんて・・・・・・・」
エインに抱きついたまま、ラフィーネが小さな声で反論する。
(エインはわたくしの事を番と言ってくれるから、過分な評価をしてくれているのよ、きっと)
ぎゅっと抱きしめる腕に力を込めてラフィーネは身を固くする。
『なんだ、エインの番は随分と慎ましいな。こんなに美しいのに、そんな事は無いなどと。自信家のエインとは正反対だな』
ランドルフは感心したような口調で話しかける。
「一言余計だぞ、ランドルフ。どうもラフィーネには認識阻害の魔法がかけられているみたいだ」
エインがそうランドルフに説明をする。
『あぁ、なるほど。そういう事か・・・・・・。本人もだが、真実の目を持たない者にはそう見えているのだな』
「そうだ。何故こんな魔法がかけられているのかは分らない。俺にとっては意味のない物だが、ラフィーネにとっては辛い事なんだ。俺はラフィーネの心がこれ以上痛まない様にしてやりたい」
エインが抱きついているラフィーネの身体を自分から放して、顔を覗き込む。
エインの向ける柔らかな微笑みに、ラフィーネは顔を赤らめた。
『我にかかれば、魔法は一瞬で解術出来る。しかし、何故そなたの番にそんな魔法がかけられていたのか。まずはその原因を探る事が先決だ。番の親であれば把握しているのではないか?』
ランドルフの提案に、エインも頷く。
「そうかもしれないな。ラフィーネの話を聞くと、ラフィーネの家族は、ラフィーネの事を愛情を持って育てているみたいだし。もしかしたら、知っているのかもしれない。ラフィーネ、家族に俺を紹介してくれないか?」
突然のエインの申し出に、ラフィーネは驚いて固まってしまった。
「うん?嫌か?家族に俺を合わせるのは」
少し悲しそうに眉を潜めるエインに、ラフィーネは大きく頭を振った。
「そ、そんな事は無いわ。エインが良ければ、お父様やお母様。お兄様やお姉様に会って欲しい。ランドルフは、突然会ったらきっと皆驚いてしまうから、説明するのでちょっと待っててほしいけど」
「あははは、確かにそうだな。いきなりランドルフが現れたら。皆腰を抜かしてしまいそうだ」
愉快そうに笑うエイン。
『失礼な奴だな、相変わらずお前は。ラフィーネ、我の事は気にするな。まずは番としてエインを紹介してやってくれ』
黄金の翼に太陽を浴びながら、ランドルフは空へ浮かび上がった。
「ランドルフ、どこへ行くんだ?」
ランドルフの翼が起こす風に目を細めながら、エインが空を見上げて声をかける。
『ねぐらに戻る。ラフィーネの親達と顔合わせが無事済んだら知らせてくれ。では、ラフィーネ、エインを頼むぞ』
そう告げると、ランドルフはぐいぐいと空に昇り来た方向へ飛び立って行った。
「慌ただしい奴だな。ラフィーネ、大丈夫か?」
ランドルフの起こした風にあおられて、ラフィーネの髪はボサボサ、来ているドレスは枯葉だらけになってしまった。
「全然大丈夫じゃないわ。これじゃお城に戻ったら、皆に叱られてしまう」
困った様に目じりを下げるラフィーネに、エインは笑顔で答えた。
「大丈夫だ。叱られる時には一緒に叱られてやるよ」




