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『ラフィーネどうしだんだ?何故泣いているんだ?』



突然ポロポロと泣き出したラフィーネを見て、エインが驚く。先程まで表情をくるくる変えながら言い合いをしていたラフィーネ。今は瞳が零れ落ちんばかりに涙を流している。



『ご、ごめんなさい。エインの言う「番」はきっとわたくしの事ではないから、そう思ったら涙が止まらなくて.....。』



泣き出したラフィーネをそのままにする事は出来ず、エインは自分の腕の中にラフィーネを抱きしめた。



『は?何故?俺の連れから聞いていた通りだぞ?「金の髪に青い目の大層美しい女性で、ラフィーネという名」、間違いないだろう?』



不思議そうに話すエインに、今度はラフィーネが驚く。



『確かに名前は間違いないけど、でも、金の髪に青い目の美しい女性なのでしょう?』



『そうだ。日に輝く金の髪に空の様に青い目。俺の目の前にいるじゃないか』



『????』



エインの言葉がラフィーネには理解出来ない。ラフィーネの髪は金色ではないし、瞳の色は珍しくもない薄茶色。美しくない出涸らし姫と揶揄られる自分の姿は、これまで嫌になる程見てきた。それなのに、エインはラフィーネの事を美しいと言ってはばからない。



『わたくしの姿は、父上様や母上様、お兄様やお姉さまには似ても似つかない平凡。燻んだ赤い髪に薄い琥珀色の瞳なのよ?エインはどうして、わたくしの事をそう言ってくれるの?』



涙をこぼしつつ、エインの腕の中から見上げるラフィーネに、エインは少し考えて、目を閉じ何かを念じる様に顔を空へ向けた。



『...そうか。そういう事なのか』



閉じた目を開き、遠くに視線を向け、妙に納得した様子でエインがつぶやいた。



『エイン?』



『他の人間はどうか知らないが、俺の目にはそう見えている。他の誰でもない。美しい俺の番、ラフィーネ』



蕩ける様な笑顔を向けつつ、真摯にラフィーネに告げるエイン。

エインの笑顔に、ラフィーネは熟れてたトマトの様に赤面し、パフっと顔をエインの胸にうずめた。







『そろそろ戻らなきゃ』



波立ったラフィーネの気持ちが落ち着くまでずっと、エインはラフィーネを抱きしめ続けていた。それにたった今気がついたラフィーネは、居ても立っても居られず、エインの腕の中から抜け出そうとした。



『もういいのか?遠慮しなくていいんだぞ?』



『も、もう大丈夫!』



にっこり微笑むエインに、ラフィーナが慌てて答えた。



『そうか。ラフィーネがそういうのなら。帰る前に、俺の連れを紹介したいのだが...』



『エインの連れ?お友達?』



小首をかしげて尋ねるラフィーネに、エインは少し口ごもった。



『・・・・友でもあるが、仲間でもあるし。優しくて気のいい奴だよ。ラフィーネもきっと気に入る。ただ、ちょっと大きいから、驚かないでやってくれな?』



『エインよりも大きいの?大丈夫よ。そんな事位で驚いたりはしないわ』



コロコロと笑うラフィーネに、エインはそうは言ってもなぁと小声でつぶやき溜息をついた。

両目を閉じて、先程と同じ様に何かを念じる様にするエインの姿を、ラフィーネは不思議そうに見つめていた。




ふっと息をついて目を開けるエイン。開かれたその金色の瞳に、ラフィーネは心が温かくなる。会ってからまだ一日、過ごした時間などほんの数時間でしかないのに、ラフィーネの心を慰めてくれる優しいエイン。どんどんエインの事が気になるラフィーネの耳に、聞きなれない音が聞こえてきた。

最初は遠くの方で風が吹いているのかと言った音だったのが、段々と近づいてくる。近づくたびに音も大きくなってきて風ではない何かの羽音と気がついたのは、ラフィーネとエインの上に大きな影がかぶさった時だった。

ハッとなってラフィーネが見上げた先に、大きな翼を開いた金色の竜が浮かんでおり、ゆっくりとエインとラフィーネの傍に降り立ってきていた。

金色の竜からくり出される羽ばたきに、ラフィーネは身体を飛ばされそうになったが、エインがしっかりと抱きしめた。



『ランドルフ!ラフィーネが飛んでってしまうだろう。気をつけろ!!』



エインの腕の中から、ラフィーネはその金の竜を見上げた。

太陽の陽の光に照らされて煌めく黄金の鱗。大きな翼をはためかせ、尾を揺らめかせバランスをとって地に降り立つ姿は、神々しくそしてとても美しかった。



『すまなかった、ラフィーネ。そなたはエインとは違うのだという事をすっかり失念していた』



エインの腕の中にいるラフィーネに顔を寄せて、ランドルフが答える。



『え?あの、声が?頭の中に声が聞こえて?』



ランドルフの口が開かれていないのに、声が頭の中に響いてくる。ラフィーネが驚いてエインを見ると、クスっと口元を緩ませた。



『ランドルフは直接頭の中に話しかけてくるんだ。”念”というのか。俺はランドルフに選ばれた騎士だから、俺達が遠く離れている場合でも、念じると互いの思いが伝わるんだ』



『そうなのね。でも、私にランドルフの声が聞こえたのは?私は....』



『其方はランドルフの番。古から竜騎士の番は、騎士と共に竜の声を聞くことが出来るのだよ』



金色の瞳でじっとラフィーネを見つめるランドルフ。自分よりもはるかに大きな生き物を目の前にしても、おそれを感じるどころか、ラフィーネは心を踊らせた。



『嬉しいわ。こんなに素敵なお友達が出来て。エインありがとう』



エインの首に両腕を伸ばしてラフィーネが抱き着く。一瞬驚いたエインだったが、そのままラフィーネを抱きしめた。

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