第五十三話・勝者と敗者
今回はいつもより遅くなってしまい申し訳ありません
編入試験として出された試験をクリアする為に高山健二と清水由香と闘うことになり、あと少しで清水さんを撃破出来そうだったが、それは健二によって阻まれてしまった。
あの後は2対1になり圧倒的に不利な状況だった為、一時撤退して木の上から相手の行動を観察して攻め時を探っている。
(やはりバラバラには行動しないか)
そう、健二と清水さんは常に近すぎず離れすぎずの距離を保って、お互いの攻撃の邪魔にならないようにしているのだ。
高町
「このままでは埒が開かない、なんとか二人を引き離せればまだ勝ち目があるんだが」複数戦のほうが得意と言っても、少数でかつコンビネーションをしっかり取れている相手では実力が圧倒的に離れていない限り勝利する事は出来ない、それ故に次をどう攻めるかを思案している。
(近距離の鉄球、それも単純な力比べならば武器の性能を考慮しても渡辺に匹敵する威力、それに遠、中距離の弓、それも弓の種類は洋弓ではなく和弓で、持ち運びがしにくい大きな弓だな、身体能力は見た目からでは判断出来ないが、悪いとは言いがたいな、さて、どうしたもんかねぇ)
ふと健二の方に目を向けると何か言葉では言い表しにくい違和感が有った。
高町
「あれはなんだ…? 存在が不確かな感じ、やけにあやふやであれではまるで―っ!!」
あれではまるで陰陽師が使う『式神』のようなものではないか、そう言おうとして漸く健二達の狙いに気がついた。
高町
「ちぃ!!」
即座に別の木に飛び移り、今まで居た木を見ると頭上から健二が飛び降りてきて俺が立っていた木の枝を鉄球でへし折った。
高山
「うわぁぁ!」
本来ならば俺に直撃だった筈なのだが、狙いに気がついた俺は別の場所に移動して健二はそのまま轟音と共に落下していった。
健二を振り切り、木から降りてひたすらに走る、目指すはさっきまで見えていた清水さんが居た場所を。
(今ならば間に合う、新たな式神を作らせる暇もなく、守りに入っていた健二も居ない今ならば確実に清水さんを討てる!)
そして木の影で自分の力を式神の元にしている紙に力を流し込んでいる、近くに健二の式神が居るが、相手にする事なく一気に瞬動で接近する。
高町
「終わりだ!」
そんな作業に夢中になっていたのか、俺の声にゆっくり振り向いてその顔が驚愕から直る前にその肉体を真っ二つに切り裂いた。
高町
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、これで漸く一人か」
真っ二つに切り裂いた死体は残ることなく光の粒子になり消え去った。
真田
『清水由香、討死!』
真田先生から清水さんの敗北宣告を聞き、あれが式神ではなく、本物だった事に安心すると共に
再び走り出し、今度は目的の健二をすぐに見つける事ができた。
高山
「由香を殺るなんて流石に凄いな、瞭」
高町
「なに、大したことではないさ、あれは只単に清水さんが油断をしていたからこその勝利で本番はこれから、だろ?」
その返答に満足した様にニヤリと笑い、鉄球を振り回し投げてくるが、俺には当たることはなかった、いやそもそも当てるつもりすらなかっただろう。
高山
「ここから先にはくだらないおしゃべりは辞めにしようぜ!」
俺は声に出すことなく、頷き、接近する。
高山
「うぉぉぉ!!」
鉄球の様に一度自分の元に戻さなくてはならない武器には必ず隙が出来る状態がある、それは攻撃し終わった後に出来る手元に戻す隙だ、しかし今の俺の技にはそんな速くてタメを必要としない技はない、それ故に今朝練習したアレを試す時なのだろう。
(晃、お前の技を一時的に借りるぞ)
これから放つのは過去の友人が使っていた奥義、今は亡き大切な友人、彼はひたすらに突きの速さを求めた、そしてこの技を編み出すまでにたどり着いた。
高町
「見せてやる、受けよこの一撃!! 我流奥義、偽・スパイラル」
健二はさっきと同じように鉄球を投げ、俺はそれを回避して即座に近づき、それを繰り出す。
放たれた突きは螺旋の様に捻れ、必殺の一撃となり健二の心臓を貫いた。
真田
『高山健二、討死! よって高町瞭の勝利!!』
高々と宣言されると共に来たときと同じく再び光包まれ意識を手放した。
〜〜〜side高町〜〜〜
第五十三話
勝者と敗者
―完―
次回で編入試験編を終わらせるつもりです。