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新たなる場所と仲間達  作者: サイレン
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第五十一話・試験・前編

まぶしいくらいの日差しを浴びて目が覚めて、今日のテストや編入手続きの紙の用意をし終えた俺は優雅に朝食の用意をしている

高町

「さて、今日は普通に食パンでも食べるか」

八枚切りの食パンを袋から取り出し、温めたベーコンをその上に載せながら学校に行く前に鍛練をするかどうか考えていた。

(長いテストだったら体力切れが起きそうだし、軽めの鍛練にしておくか、でもその前に……)

手に持っているベーコントーストを口に詰め込み、皿を片付ける、フライパン等は日野さんが館を使っていた頃の物が有るのだが、最後に使ったのが何時か分からないため破棄した。

高町

「よし、後始末も終わったし、倉庫から竹刀でも取ってくるか」

昨日の内に、鍛練に必要そうなものは近くにある倉庫に移しておいたので、これからは鍛練の用意が楽になるはずだ、倉庫から振る者に負荷を与えるように特殊加工してある竹刀と、鍛練用の投げナイフを五本ほど抜き出し、ターゲット用の缶を10個程用意して庭へと出る、適当に缶を木の上や岩の上辺りにセットしてまずは竹刀を突きをしやすい中段の構えを取る。

(本来ならこんな構えはしないんだがな)

本来雲月流に武器を構えるという動作はない、何故なら雲月流は一子相伝の武術で周囲に自分たちの技や技術が広がることを恐れて自分の子供ぐらいにしか教えてはいけない教えになっている、しかも雲月家は元々の身体能力が低く、反射神経もあまり良くない一族だったので、一部を守りやすかったり、攻めやすい構えそのものを無くし、あえて構えずに闘うという独特のスタイルを見つけ出し、受け継がれてきた、それ故に構えず、相手の冷静さを無くし、多種多様な技や動きで攻め立てる、それこそが雲月流の本来の動き、しかし今は速さを追及した突きのみを軽く練習するためあえて中段の構えを取る

高町

「スゥー、ハァー、当てきってみせる」

大きく深呼吸をしてから標的の缶の中心を狙い、勢いよく放つ!

カァンと鈍い音を発てながら吹き飛び、壁にぶつかって跳ね返ってきた缶をもう一度突く、あとはひたすらこれの繰り返しだ、内容は地味だが反射神経や集中力を鍛えるには役に立ち、しかも短期でも多少効果があるためこれを行う。

何度もやってれば自然と力が入らなくなり、思ったように跳ね返ってこなくなるから、難易度が段々と上がってくるし、腕の疲れも溜まってくる。

高町

「くそっ!」

27回目にとうとう突きを外してしまった、こうなったら違う特訓をする、今度は投げナイフを缶に当ててそれを落とさないようにする鍛練だ、こういった鍛練を時間が来るまで続けた




高町

「さて、行くか」

時間もいい感じで約束の7時の15分前になったので館に鍵を掛けたか確認してからバイクにまたがりさっさと発車させる、バイクは途中にある学生寮に置いてくれと言われていたので、そこまで行ったら駐輪場から学園まで案内してくれる人が居るらしいのでまずはそこまで向かった。




バイクを走らせること5分で光風学園が所有している寮『朝月』(あさつき)に到着してバイクを降りるとゴツい体格でいかにも体育会系の暑苦しそうな男が近づいてきた。

ゴツい男

「お前が今日うちの編入試験を受ける高町瞭で良いのか〜?」

筋肉もりもりの腕がピクピクするのを見て、若干顔がひきつるのを感じながらなんとか首を縦に振る。

高町

「あ、はい自分が高町瞭です、案内の方よろしくお願いします」

ゴツい

「うーむ、しっかりと礼儀がなってるなぁ、うちの学校の奴等は全然相手を敬うということを知らないからなぁ、おっと、話を反らしちまったな、俺は光風学園の2年生の基礎体力増強を担当する真田権蔵だ(さなだごんぞう)、早速案内するからしっかりと着いてこいよー」

そう言うやいなや真田先生は学園に向かってさっさと走り出してしまった

高町

「まずい、早く追わねば道に迷う!」

俺も追い付かんと氣で脚力を強化して走り出すが

(何故だ、一向に後ろ姿も見えない、あれが速すぎるのか!?)

一瞬嫌がらせかの為にやってるかと思ったが、雰囲気的にそういう悪ふざけをするような人に見えなかったからこの考えを切り捨て、違う可能性を考え直す。

(まさか、これ自体が試験の一環なのか?)

他に想像出来る回答見つからないため、暫定的にそれと判断する

高町

「だとすれば活足でさっさと接近するだけだ」

瞬動を使う方法も有るのだが、あれは一時的な加速なので、何回も使わなくてはいけないから、ほんの少しだけだがスピードが落ちてしまうし、どんな技でも連続で使えば疲れてしまう、その点活足ならば継続する加速なので疲れにくいし、スピードも落ちない、それ故に活足を選んだ

高町

「行くぞ、活足!」

足の氣を弾くように放出して一気に舗装されたアスファルトを駆け抜ける




高町

「はぁ、はぁ、はぁ、どうなってんだよ」

真田

「はーはっはっは、言っただろ、俺は二年の基礎体力増強が専門だと、そんな俺が体力で負けるわけないだろうが!!」

結局俺はあの後姿こそ見えたが、追い付くことなく学園の前にたどり着いて、先に到着していた真田先生からのありがたい(?)話を聞いていた

真田

「だがお前もそんなひょろい肉体で凄いほうだ、スピードは中々だし、体力もそこそこある、ここで鍛えればきっと俺の様に素晴らしい肉体を得ることが出来るはずだ!!」

俺はそれをどうしようもないので苦笑いで返した

真田先生は未だに暑苦しい肉体でポーズを取っているが、俺はそこまで筋力をつけるつもりはないし、あんな格好だったら周囲からどんな目で見られるかわかったもんじゃないし、隠密行動をすることが不可能になりそうだからそんな肉体を得るつもりはない。

真田

「さて、まずは学校を案内と言いたい所だが、まずは試験を受けてもらってそれからこの学園を案内してやる、ちなみに寄り道して迷ったら知らんぞ」

高町

「そういえば、試験ってどんな物なんですか?」

言うだけのことは言ったと言わんばかりにさっさと行こうとしてる真田先生を呼び止める。

(何一つ情報が無い状態では厳しいし、心の準備ぐらいはさせてほしいしな)

真田

「あー、それなんだがうちは実力主義だから実戦形式のテストだ」

高町

「武器は、無手ですか? それとも何か貸してくれるんですか?」

ここは重要だ、武器を一つに絞られるならかなり闘いずらいし、実戦での対戦相手と武器が同じならばまず勝ち目がないだろうから

真田

「武器に関しては行けばわかる、見てからのお楽しみだ、だが確実に驚くとだけは言っておく」

そう言ってスタスタと校舎に入っていった真田先生をダッシュで追い掛けた

今度は直ぐに追い付き後ろを歩きながら校舎内を見回してみた。

(校舎内は思ってたより広いし、綺麗だなゴミもそんなに落ちてない、だがそんなことより気になるのは静かすぎることだな、一人ぐらいは朝の鍛練ぐらいはしそうなんだが、ひょっとして学生寮の辺りでやってるからいないのか?)

色々考えながら曲がったりして階段を降りて―

(待て待て、ここは一階のはずだ、それなのに下ってことはこの学園は地下もあるのか!?)

小学生までは通っていたが地下がある学校なんて初めての事だ。

そのまま下に降りていくと幾つかの部屋が有って幾つかは使用中のようで音が聞こえてくる。

真田

「さて、この部屋に入ってくれ」

案内されて入った部屋は4つほど機械が置いてあって黒髪の坊主頭の男と、栗色の長髪の女だけでそれ以外は何もないし誰もいない

高町

「えっと、この部屋で試験をやるんですか?」

どう考えても広さが足りないし、物も置いてないから無手でやらなければならなくなり、敗北は濃くなる

黒髪の坊主

「こいつが新しい奴か、それでこいつとやればいいんすか?」

不意に黒髪の坊主が真田先生に話掛けるが、先生はじっと睨み付けて何も言わない

栗色の長髪

「ごめんなさい、真田先生に、新入生くんほら健二早く謝りなさい」

明らかに悪い態度を正す様に健二と呼ばれた坊主頭の頭を殴り頭を下げさせる

黒髪の坊主

「止めろよ、由香痛いから離せ!」

じたばたと暴れているが結局敵わないと諦めたのかおとなしく謝った。

真田

「さて、あの二人がお前の相手の高山健二(たかやまけんじ)清水由香(しみずゆか)だ、二人とも二年生でお前が試験に合格出来れば同学年だ」

高山

「俺は紹介があったように高山健二だよろしくな、言っとくけど負けるつもりはさらさら無いからな」

由香

「もう、健二は直ぐにそうやって人から怖がられることするんだから、ごめんね健二も悪気はないんだけど、私も紹介があったように清水由香です、よろしくね、後出来れば健二とも仲良くしてあげてね」

相手を威嚇するように睨みつける高山を諌めるように言う清水案外、いやかなり相性がいい気がする

(ひょっとして二人は付き合ってるのか?)

一瞬そんな雑念に囚われかけたが、振り払いこちらも自己紹介をする

高町

「俺は高町瞭です、ひとまずこちらこそよろしくお願いします」

一礼した俺を見て、高山が近づいて耳打ちをする

高山

(おい、あまり野郎に耳打ちなんてしたかねえんだけど、一つだけ言っておくぞ、由香に手を出したらぶっ飛ばす)

高山の耳打ちにつられるように俺も小声で話す

高町

(わかっている、それぐらいわからないほど俺は鈍感じゃない、人の恋路を邪魔して馬に蹴られて死にたくはないからな)

俺が言ったことを聞いた瞬間高山は顔を真っ赤にし始めた。

高山

「ば、馬鹿野郎、俺は別にアイツに興味があるわけじゃねえ、俺とアイツは幼なじみなんだ、だからそんなことは―」

高町

「そこで一旦ダウトだ、残念ながら幼なじみから始まる恋も有ることを俺は知っている、(そんなことより大声になってるが良いのか?)」

俺が大声になっている事を指摘するとハッとして見渡すが、何の話をしていたかわからなかったようで、訝しげな顔でこちらを見ている清水と早くしろと言わんばかりにこちらを見ている真田先生ぐらいだった。

高山

(とにかく、俺とアイツはそんな関係じゃねえ!)

高町

(まあ、そこまで言うなら信じるが)

高山

「あんまり納得できないけどいいや、そうだ、俺の事は気軽に下の名前のほうで健二って呼んでくれ」

高町

「わかった、俺も下の名前の瞭で頼む」

高山

「応! よろしく」

拳と拳をぶつけ合い、ひとまず仲良くなった高山だったが、その際にお互いがおもいっきりぶつけ合った為手を痛めたのは言うまでもない事だろう。

改めて状況を冷静に見てみると、一気に二人が相手ということだ、一対一より多対一が得意な俺にとっては有利な条件ではあるが、それでも相手についての情報は今見て気づいた健二は尻に敷かれるタイプぐらいとどうでもいい事しか思い当たらない。

由香

「えーと、先生私たち一人一人じゃなくて二人で同時になんですか?」

俺の気持ちを代弁するように言ってくれるが、ここまできて覆ることはないだろう、最初から諦めているから別にいいが結果的に覆ることなく、清水さんはしぶしぶ二対一に了承した

(あの清水って人はきっと正々堂々一対一で勝負がしたかったんだな)

武芸者らしく正々堂々一対一、これは神聖なものならば当たり前だが、本当の実戦は違う、だいたいが乱戦になって常に注意をしていないと死ぬ、きっとこれを教えたくて二対一なんて不利な状態にしたのだろう

真田

「さて、場所だが二人は知っての通りあの機械を使って闘うのだが、こっちは知らないからな、二人は先に用意をしてステージは森林地帯にしてくれ」

高山

「うげ、俺あそこ苦手なんだよなぁ」

由香

「不得意な部分を得意にするだけで戦力がかなり上がるんだから文句言わないの、行くわよ」

ほとんど引きずられる形で機械まで連れていかれ、無理やりヘルメットのような物を被らされてから電気を失った機械の様におとなしくなった。

高町

「一体何が起こってるんですか?」

ステージ? 森林地帯? 何の事だかさっぱりなので現状把握するため聞く

真田

「うちの学校は科学的な技術も優れていてな、あの機械を着けることによって精神のみをバーチャル空間に繋げるんだ」

高町

「バーチャルってことはそこで武器の登録とか、場所の指定をしたりするんですか?」

真田

「察しがいいな、ほとんどお前の言った通りだ、だが幾つか違う点があるがな、一つはこれが訓練用のシュミレーターであること、実地試験以外はほとんどこれだ、あと一つは攻撃を受ければ致命傷の部分を除いては痛みがくることだ」

先生の説明には驚かされることばかりだが、何より驚いたのは痛みがくることだ、精神の痛みを肉体に戻すというのは誰から見ても異常なほどの科学力だと俺は思った、一応一つだけ聞きたい事が有ったから聞く

高町

「痛みは体に怪我の跡とか残るんですか?」

怪我の跡が体に残るならば攻撃のほとんどを回避しなければ夜に姿を隠して妖魔や敵を狩るとき服が破られたり、サングラスを取られた時に顔や体に目立つ怪我が有ったら正体がバレる可能性があるため非常に厄介になってくる。

真田

「いや、怪我は残らないが精神が受けた痛みは致命傷以外は肉体に残らない、仮想空間で受けたダメージは体に跡としては残らないから安心しろ」

それを聞いて少しだけ安心したが、もう一つ嫌な考えが生まれた。

高町

「ってことは致命傷って認められなければ目の付近を斬られたり、腕を斬り落とされてもダメージカットがされない可能性が有るってことですか?」

場合によっては更に酷いダメージを抱えたまま妖魔との戦闘に出ることになる

(こりゃあ、手を抜いて闘うことは出来そうにないな、嫌なもんだ本当に)

真田

「質問はあるか? ないなら二人同様ヘルメットを着けてくれ、その後武器に関するインフォメーションが流れるから、それに従ってくれればお前の得意な武器を使えるだろう、ちなみに言っておくが武器はいくらでも持って行っていいが、重量等を考えないと大変だから気を付けろ、それと最後にもう一つ、一応遠距離攻撃が可能の銃も使用が許可されていて、ハンドガンだけだが、使いたかったらそうしてくれ」

俺は忠告に頷き、さっさとヘルメットを被り、健二達がやっていたようにシステムを起動させる。

高町

「よし、後は武器の製作をするだけか」

武器の製作は精密製作とイメージ製作が有ったが、時間をあまり使いたくないため自分の思い浮かべた武器の形状を使うイメージ製作に設定して投げナイフ15本と俺が持っている『トリックブレード』と予備として双剣を1セット分用意した、一瞬銃を使うという考えも思い付いたが、まだ早すぎると思い、止めて最後に装備を確認して終わった

高町

「終わりました、それでこの後はどうすれば良いんですか?」

真田

「用意が出来たか、後はこちらで操作するから少し待ってろ」

少し待つと意識が急に離れて行くのを感じて、それが始まりの合図と思い意識を手放した。

〜〜〜side高町end〜〜〜



―第五十一話―

―試験・前編―

―完―

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