第四十八話・後日談
今回は前回に比べてかなり短く、繋ぎの部分です
目を覚まして最初に見たのは確か客間の天井だった
高町
「あー、体が痛てえ、ここは………何でここに居るんだ?」
周囲を見渡してみても、俺以外の人間は居らず、俺をここに運んだであろう人すら見当たらない。
高町
「そういえば、日野さんや、あのヒステリック女も居ない、ボウガンを吹き飛ばしたし、気絶もさせたから、もう危険はないと思うが………」
そのとき急にドアが開いて、日野さんが入ってくる
佳奈子
「おお、やっと起きたか少年、いやーいきなり倒れた時はびっくりしたよ、まったく、一応警察に連絡して引き渡しておいたから、安心して平気だよ」
連絡をしてくれたということは、もうこの人は助かったと考えても良いだろう、しかし油断大敵と言う言葉もある、それに鎧が動いた訳もわからない。
高町
「そういえば日野さん、家族や婚約者に電話か何かしたのか?」
その言葉にニッコリと笑って返してくる。
佳奈子
「うん、いやー、皆泣いちゃってさ大変だったよ、アイツなんて、ずっと人の家に居たみたいで、家に電話したらアイツが出てさ、びっくり、びっくり」
(どうやら心配はなさそうだな、ともかく誰一人として死ななかった事に喜ぶだけだな)
高町
「日野さんはこれからどうするんですか?」
もし、この館に住むと言うならば俺は喜んでここの土地の権利書やら必要な物を渡して新しい家を探さなければならない
佳奈子
「そうだねぇ、この館はもう私の物じゃないし、住みたくないし、まぁ、後のことはひとまず実家に帰ってからゆっくり考えるつもりだから、今日にはここを発つつもりだよ」
(ということは、ひとまず別の家を探す必要は無くなったってことか)
佳奈子
「おお、そういえば忘れてたな、少年君の名前を聞いてなかった」
ハハハと笑いながら聞いてくる日野さん、仕方なく名前を教えることにした
高町
「えっと、今更ですが私は高町瞭です」
佳奈子
「ほう高町か、となると君がこの家を買い取った少年で良いのか?」
高町
「はい、確かに私が買い取りました」
そういうと、日野さんは深い溜め息をついて、俺を諭すように語りかける。
佳奈子
「なぁ、少年、君はいつもそうやって他人に対して壁を作るような話し方をするのか?」
高町
「っつ!?」
(何故だ、どうやって気づいた!? ヘマはしてなかったはずだ、それなのに何故、気づかれた?)
動揺を悟られないように、慎重に返答する
高町
「何のことですか?」
佳奈子
「これは私の勘違いかもしれないが、君はなんか無理してその口調を続けようとしていないか? そんなことは今からじゃなくて、もう少し大人になってからでも出来るし、それに今こんな喋り方をしてたら、きっと疲れてしまう、何に焦っているんだから知らないが、このままでは本当の自分を見失ってしまうかもしれないよ」
俺はこの言葉に少なからず驚いた、初めて会う人にこれ程までに自分の感情を悟られるとは思わなかったからだ、日野さんは鋭い人の様な気がしたが、これ程までに鋭いとは思わなかったし、かなりの誤算だった
(確か前に由乃にも言われたな、ひょっとしたら、案外わかりやすかったのかもな、俺の思考は)
佳奈子
「だから、あんまり無理して話さないほうが良いぞ、少年、中には私みたいに敬語を使われるのが嫌いな人がいるかもしれないからね、なーっはっはっは」
(ひょっとしたらこの人、敬語を使われるのが嫌だからわざと言ったのか…?)
あらゆる意味で台無しな発言だった。
佳奈子
「まぁ、そんなわけでお姉さんからの助言は終了、あとはゆっくり考えてください、じゃあ私はそろそろこの家を出るよ」
急に真剣な眼差しで見つめてくる日野さん、一体どうしたのだろうか
佳奈子
「色々世話になったから、ありがとう」
大きくお辞儀をして、バイバイと言って客間から出ていった。
1人取り残された俺は先ほど言われた事を考えていた
(確かに、違和感が有ったのかもしれないな、無理をしてるつもりなど無いつもりだったのだがな、自分が見えてなかっただけか)
これ以上考えても何もわからなさそうだし、明日も仕事があるから、今日はもう寝ることにした。
(待てよ、この館の行方不明者が見つかったのなら、警察やマスコミが来るかもしれないか、だが特に取れそうな策はなさそうだしな、寝よう)
今度こそ疲れきった体を休ませるために、久々の布団を被って眠りについた
〜〜〜side高町end〜〜〜
―第四十八話―
―後日談―
―完―