第四十六話・呪いの館
今回は長くなってしまいましたが、次でこの館の話しは終わりにしたいと思います。
さて、外も良い感じに暗くなり、妖魔が現れる絶好の時間帯になった、前に住んでいた人の残し物の1つである壁時計を見ると時刻を1時と指そうとしていて、この時間はちょうどこの館に住んでいた人が消えた時間だ。
そうこうしているうちに鎧が置いてある大広間からボーン、ボーンと古時計が鳴る音がする。
(おかしいな、ここに来てからいくら1日も経っていないからといっても少しはここにいたはずなのに俺は一度たりとも大広間の古時計が鳴る音を聞いたことがない、これはまさかこちらへの挑発か? いや、まだそう考えるのはあまりにも早計だな、ともかく辺りを探ってみよう)
部屋から出てまず探すのは魔力の粒子、これは魔力を使ったときに出るもので例えるなら銃を撃ったときに出る硝煙反応のようなものである程度は隠し通せるが、妖魔は力を使うときに人間より強力な為かなりの魔力粒子が出るので発見しやすい筈なのだが、妖魔自体の能力値が高い場合隠す事が出来る、それにこちらが効力や威力が高い魔術を使った場合、探知力は人間より妖魔の方が基本的には高いので奇襲も難しい、ならばどうやって妖魔を倒すのか、そのために昔の人は妖魔を倒すための武器アービナルを作った、これさえあれば魔力粒子は出るが妖魔に力負けすることはない、そしてそのアービナルで対抗出来ない妖魔や吸血鬼が出てきた時のために、『人格投影剣』(インテリジェンスアービナル)を作った。
人格投影剣は俺が持っている『フラガラッハ』やもう一本の秘剣やあの男が持っている魔力だけではなく、科学の力で作られた爪型のアービナル、『ディバイン』と『レイブン』今知っているのはこれだけだ(ちなみに左に着けているのがディバインで右がレイブンだ)
魔力粒子を探知するため周囲の魔力に同調してみるが、不純な魔力は感じられない感じられるのは遠くからやって来る土、風、水、光の魔力ぐらいだ、おそらくこれは町を哨戒している三沢たちのもののはずだが…なぜか固まってこの館の方へ向かってくるが、今本当に気にするべきことはそれではない。
高町
「おかしい、何故こんな辺境な町に光の魔術師などという激レアとも言える魔術師がいる? それにあの魔力粒子は由乃と似た感じ、くそっ! この町はなんだって言うんだよ!!」
バンッ! 力強く壁を殴りつけるが、建物の造りがだいぶ良いようで、逆に手を痛めてしまった。
普通ならば魔力粒子で相手の位置などは探知出来るが、その相手が誰なのかということまではわからない、しかし俺にはわかる、由乃の魔力粒子を忘れるなんて出来るわけがない、それ故に由乃と似た魔力粒子が不可解なのだ。
高町
「くそったれが、そのことは後だ今は…」
そう、今はそれも気になるが今は妖魔を探すことのほうが重要だ、居ないに越したことはないが、居たら厄介なので出来るだけ粒子の放出が低いアービナルを持って大広間に向かう。
大広間に続く長い廊下は周囲の暗さに嫌な雰囲気を醸し出していた。
高町
「静かだな、本当に妖魔が居るのか?」
バイトが終わったあと健作に詳しい話を聞いて顔写真を手に入れたが、もうそろそろ鎧が動き出すはずなのだが…
そう思った直後にガタンガタン、ガッシャーン!何かが動いたり倒れる音がするのと同時に廊下を駆け抜けて大広間へと出る。
高町
「これは一体何事だ?」
大広間には本当に鎧が一人でに動き出している。
その中の一つが先ほどの声に気づいてクルリと振り返る、それと同時に他の鎧が一斉に振り返り、こちらに向かっておいでおいでと手招きをしてくる。
高町
「罠…なのか? しかしアレからは魔力というか何かの力は感じるが悪意や殺意等の負の感情は感じられない、むしろ助けを求めているような気がするな」
しかし、いつ手に持った剣で斬りかかってくるかわからないので持ってきた二つで一つのアービナル『双牙』を起動させておく。
警戒を解かずに、ゆっくりと近づいていく、一定の距離まで近づくと鎧は一ヶ所に向かって走り出す。
高町
「あっちは確か書斎だったか?」
午前中の調べで見つけた収穫は部屋の位置とその間取りぐらいだったが、こんな所で役に立つとは思っても見なかった。
走っていく鎧を追って書斎に入ると一ヶ所を指差している。
高町
「そこに何かあるのか?」
双牙の内一本を腰の部分に差し込み、壁に触れてみるが何もない、しかしコンコンとノックをしてみるとここだけ空洞になっていて、部屋がありそうだ。
高町
「お前たちはこれを伝えたかったのか?」
俺の言葉がわかってるようにコクリと頷き、一斉に大広間へと走っていく。
高町
「おい、ちょっと待てよ、開け方ぐらい………行っちまいやがった」
俺の引き留めを無視して一体残らず大広間に行ってしまった、おそらく教えてくれなかったということは開け方を知らないか、教える気がないかのどちらかだがどうでもいい。
高町
「この先から微かに魔力を感じる、という事は何かが居る、それに早めにかたをつけないとヤバそうだな」
さっきまで遠かった水、風、土、光の魔力粒子反応が強くなって家の目の前まで近づいているのがわかる。
高町
「さて、どう開けたものか………」
〜〜〜side高町end〜〜〜
〜〜〜side渡辺〜〜〜
俺は今三沢達と『呪いの館』の目の前に居る。
呪いの館は昔、結婚が決まっていた人が神隠しのように消えてしまったので呪いの館と呼ばれている。
そもそも何故こうなったかというと、昨日から呪いの館の様子がおかしいと拓斗が知らせてくれたので調査の為来たのだが…
秋那
「妙だな、人の気配がする、この館は今お前の家の不動産が所有権を持ってるはずだろ?」
俺に聞いてくるが、俺自身もこれはおかしいと感じているここは空き家のはずなのに館の付近の蔦等は取り除かれている。
無亜
「ね、ねぇやっぱり誰かが住んでるだけよ帰りましょう」
悠子
「そうですよ、誰か住んでいたら迷惑が掛かっちゃいますよ」
珍しく弱気な発言をする三沢にその意見を押すように発言する相沢だけど、せっかくだから入ったことのないこの館に入ってみたい
渡辺
「平気だって、もし誰か居たら謝って帰れば良いだけだし、こんなところに入れる機会なんて何度も有るもんじゃねえぞ」
無亜
「アンタは探検したいだけでしょ!?」
(あれ? おかしいな何故こんな簡単にバレた?)
秋那
「顔にそんな感じにかいてあるからな」
(なに!? たちの悪い冗談だろ?)
慌て持っていたタオルで拭くが何も書いてない。
渡辺
「騙しやがったな!」
秋那
「本当に拭くとは思いもしなかったよ」
などと普通に呆れられてしまった。
渡辺
「でもここまで行きたがらないってことは、まさかあの幽霊を信じてるのか?」
そう、この館には今でも午前1時ちょうどに来るとこの館で消えた人たちの未練などが集まって近くの人を地獄や死の世界に連れていくという話がある。
無亜
「そ、そんなこと有るわけないじゃない、べ、別に幽霊が怖い訳じゃないわよ、ただもし誰か居たら怒られるのが嫌なだけよ」
(なーんか怪しいな、ひょっとして三沢って幽霊が苦手なのか?)
そう思い聞いてみることにした。
渡辺
「なぁ、ひょっとして三沢は幽霊が怖いのか?」
その質問にビクッとしてぎこちない笑顔を向けてくる。
無亜
「何言ってんの? 私が幽霊何かに臆するわけないでしょ? 良いわ、行ってやろうじゃない」
そう言ってズカズカと呪いの館に入ってしまった
悠子
「ま、待ってくださーい」
秋那
「単独行動するな!」
2人ともあとを追いかけてしまったので俺も行くことにした。
渡辺
「おい、待てよ3人共」
走って追いかけ、門を潜って大広間の様な沢山の鎧が置いてある大きなホールに出た。
渡辺
「じゃあ、これからどう行動するんだ?」
秋那
「そうだな、中々広そうだから二人一組でここを探索しよう、アービナルは一般人が居るかもしれないから使うなよ、但し妖魔やこちらに攻撃してくる奴がいた場合は別だ、それと住んでいる人か、何か問題が起こったら連絡してくれ」
確かにここを全員で探索するんじゃ時間が掛かりそうだもんな、問題はどういった編成で探索をするかだ
悠子
「えっと、じゃあ誰と誰が組むんですか?」
それが一番重要だ、下手にチームを組むとバランスが悪くなるから変な風にはしてほしくない。
秋那
「私と渡辺は館の右側を調べるから無亜と悠子は左側を調べてくれ」
俺と麻布、接近と中距離、中距離と接近かバランスは取れてそうだな、そう思った直後無亜が異論を言う
無亜
「ちょっと待ってよ、この編成よりいつもどおりの編成が良いんじゃないの?」
確かにそのほうが合わせるのが楽だよな。
秋那
「確かにそのほうが良いが、たまには違う編成のほうが良いだろう、だけどいつも同じ編成で闘えるとは限らないから今のうちにやっておいたほうが良いだろう?」
なるほどな、やっぱり麻布はよく考えてるな。
無亜
「うー、わかったわよそれで良いわよ」
渋々三沢も納得して調査に向かう。
秋那
「危険だと感じることがあったら直ぐに逃げるか連絡しろよ?」
無亜・悠子・渡辺
「はいっ(おう)!!」
そして俺たちの調査が始まった。
〜〜〜side渡辺end〜〜〜
―第四十六話―
―呪いの館―
―完―