第三十八話・二面作戦後編
今回もあまり長く無いです
〜〜〜side秋那〜〜〜
簡易転送で西地区の中央、公園の中心部に当たる場所に転送して来たが、妖魔どころか、魔力すら感じられない。
無亜
「ねぇ、秋那ちゃん妖魔なんて何処にも居ないわよ、さっきの警報は間違いだったんじゃない?」
余程さっきのアービナルの意思について聞きたいのか戻ろう、と促してくるがまだ来たばかりで何の情報収集もせずに帰るわけにはいかないので、嫌がる無亜を無理やり連れて、辺りを散策する事にした。
秋那
「じゃあ、ここからは二手に別れて、妖魔や、黒衣の男が出てきたら通信で連絡をくれ」
無亜
「わかったわ、でも…」
秋那
「何だ? 何か不満でもあったか?」
私が言った言葉に矛盾や無茶は無かったはずだ、なら何だ?
無亜
「でも秋那ちゃん電子機器の操作苦手だからちゃんと連絡出来るの?」
(こ、こいつは人が一番気にしてることを簡単に言うとは!!)
秋那
「確かに私は、電子機器の操作は苦手だが、これぐらいは出来る!!」
そう言うと無亜は何か言いたげな顔をしてこちらを見ていた。
無亜
「でも、渡辺から聞いたけどこの前私に回線を開く筈なのに渡辺に開いたって言ってたけど」
(くっ、何故こいつが知ってる? ………そうか、アイツか、アイツが言ったのかしっかり口止めをしておいた筈なのにな、やってくれるな、本当に。)
心の中であの馬鹿(渡辺)に復讐を誓い、近い内に必ず報復をする事にした。
舘内
『お前ら、仲が良いのは結構だが仕事はしっかりやれ』
秋那・無亜
「「はい、すみませんでした!!」」
くそ、無亜とじゃれていたせいで隊長に怒られてしまった、よし、仕事はちゃんとやらんとな。
秋那
「何にせよ、さっさと行くぞ、話しはその後だ」
無亜
「機材を使えるかどうかの?」
秋那
「違う!!」
即座に無亜に拳骨を落として黙らせる。
無亜
「ぼ、暴力は反対…」
秋那
「真面目にやれ」
そう言って私は辺りを散策しに行った、後ろでは無亜が頭を押さえていたが問題ないだろう。
おかしい、無亜と別れてから5分も経つが一向に妖魔が現れる気配がない、まさか本当に間違いなのだろうか、いやそんな筈はない、おそらくこちらが隙を見せるのを待っているのだろう中々頭が良い妖魔だ。
秋那
『無亜、聞こえるか?』
とりあえず情報を交換する為に通信機を使うが、あまり意味は無いだろう
無亜
『うん、聞こえてるわよ良かった』
秋那
『何が良かったなんだ? まさか不祥事でも起きたのか?』
厄介事は面倒なので少し焦って聞いてみたが、無亜は何故かケラケラと笑いながら返してくる。
無亜
『いや違う、違うちゃんと秋那ちゃんが電子機器を使えて良かったなぁー、って思ったからよ』秋那
『後で覚えておけ』
一応声色を変えて言ってみるが無亜にはあまり効果はないだろう。
無亜
『はいはい、それでどうしたの、何かわかったの?』
さっきとはうってかわって真面目な態度をとる無亜だがこういう風に出来るならいつもそうして欲しいものだと常々思う。
秋那
『おそらくだが、この妖魔の狙いがわかった、それは私たちの隙を突いて攻撃を仕掛けるつもりだろう、私の『魔力放出』で居場所を暴くから無亜はそこを攻撃してくれ』
無亜
『わかった、じゃあ一旦公園の中央に集合して、直ぐに行くから』
そう言って無亜はこちらからの返事を待たずに通信を切った。『魔力放出』とは効力は人それぞれだが、私の場合は風を巻き起こす。
渡辺の場合は地面から石の刺をだせて隊長は雷を起こすことが出来る。
これを利用して近くにいる妖魔を吹き飛ばして倒すと言う作戦だ。
さっそく私は中央に向かうが、私より早く無亜が来ていた。
無亜
「じゃあお願いね秋那ちゃん」
秋那
「ちゃん付けするな」
(まったく、困った奴だな本当に、さて私も準備をしなくちゃな)
秋那
「アービナル、『バリエース』来い!!」
私はポケットに入れていた小さな槍のキーホルダーを握りしめ魔力を通す、その瞬間光を放ち、私の目の前には七年間使い慣れた相棒とも言える全体が水色に統一された槍、『バリエース』が現れる。
秋那
「行くぞ、準備はいいな? 無亜!」
私は返事を聞かずに槍を振り上げて一回転させた
その瞬間に風が吹き荒れ、周りにあった小さな物や、近くにいた妖魔を吹き飛ばすが、何故かいつもとは違う感覚が合ったが、確かめるのは後だそれより―
秋那
「今だ、無亜!!」
私が合図をすると同時に飛び上がる。
無亜
「絶対に外さないんだから、インセレス、必殺『彗星砲武』」
無亜は空中で一回転して風で吹き飛ばした三体に投げつけたが二体は犬のような姿だが、もう一体は人の形をしていた。
犬の方には当たって倒したが人の方には当たらず弾かれた。
???
「おい、こらぁ!! 誰だこんな危ねえ物を投げたの、ついでに俺を起こした奴も出てこい!」
低い男の声で叫んでいるが私たちはその声に聞き覚えがあった。
無亜
「この声って…」
無亜気づいたようだ、だんだん声が近くなり、やがて見覚えがある黒衣の姿が見えてきた。
秋那
「やはり彼か」
無亜
「そうね、アイツね」
そして私たちは同時にその名を言った。
秋那・無亜
「「高町僚!」」
〜〜〜side秋那end〜〜〜
―第三十八話―
―二面作戦・後編―
―完―