第二十七話・闘いの前に
こんばんは、作者のサイレンです、今回は闘いはありませんが、次回は闘いに入ります、それと今回はかなり長いです
今こいつは何て言った?
模擬戦? 何のために?
俺は確認の為もう一回聞いてみる。
高町
「なあ、今模擬戦をしたいって言ったか?」
その質問に渡辺はさも当たり前の様に返してくる。
渡辺
「ああ、言ったけど? それより良いだろ? 相手が居ないんだ頼むよ」
渡辺には世話になっているからな、仕方ない受けてやるか。
高町
「わかったよ、ただし少しは手を抜けよ、こちらはなんだかんだでブランクがあるんだからな」
これは勿論嘘だ、理由は簡単『銀の牙』(シルバーファング)の可能性がある渡辺の動きを見て、修行の糧にしたいからと俺自身の実力を試したいからだ。
そう言うと渡辺は嬉しそうに言う。
渡辺
「サンキュー、場所は光風公園でいいか?」
光風公園? 確か初めて相沢を助けた場所の事か。
高町
「わかった、そういえば武器の方はどうする? 俺は素手でも構わんがお前はそうはいかんだろう?」
その質問に渡辺は、はっとして、いかにも何にも考えていませんでした、と言いたげな顔をしていた。
渡辺
「わっ、悪い、そのことすっかり忘れてた」
やっぱりな、予想はしていたがまさか本当に忘れていたとは、もっと考えてから発言してほしいものだ。
高町
「やはり忘れていたか、まあ、ある程度は予測していたがな、武器の事なら形状を教えてくれたら一定のライン迄は俺が用意してやるよ、渡辺、お前の武器の形状は?」
渡辺
「マジで!? よっしゃー! テンション上がってきたー!! 俺の武器は基本的に両手で持つ大剣だぜ、でも用意出来んのか?」
(両手剣、ということはパワータイプか? いや、両手剣=パワータイプという安直な考えはどうなんだろうな、だが実戦で見極めるしかないということか、かなり厳しい闘いになりそうだな、それに…)
渡辺
「なあ、俺は大剣使うけど、そっちはどうすんだよ? そっちは俺が使う武器を知ってるけど、俺は知らないって不公平じゃね」
確かに渡辺の言う通り不公平だな、しかし―
(俺が使ってバレても大丈夫な武器は色々有るが、どれを使うか、やはりここは剣道の竹刀の形状で行くのが無難だな)
そう結論付けて、渡辺に答える。
高町
「俺は、剣道で使う竹刀の様な長さの剣で、やらせてもらう」
渡辺
「そっか、高町はアレぐらいの長さの剣か」
おそらく、今、渡辺はイメージトレーニングをしているのだろう、アホみたいな顔をして考え込んでいる
そのとき、漸く少し遠くから麻布が歩いて来た。
秋那
「渡辺、商品を運ぶのを手伝ってくれ」
(漸くか、それにしても長かったな、ここはそういう所なのか?)
高町
「渡辺の代わりに俺が行こうか?」
秋那
「いや、多分絶望するぞ? 色々と」
俺の提案に少したじろぐ麻布だったが、頼もうとしていた渡辺は、俺とやるであろう模擬戦のイメージトレーニングからは当分帰ってきそうにないから俺が代わりを買って出たのだ。
高町
「いや、おそらく今の渡辺よりは確実に役に立ちそうだからな」
俺は後ろに居る『それ』に親指を向けながら言う。
秋那
「わかった、ただしこの先に何が有っても大丈夫だという覚悟を決めてからの方が良いぞ」
麻布はいったい何故こんなにも言うのだろうか、それほどまでに悲惨な事になっているのだろうか? しかし、恐れる物は無いのだから大丈夫だろう、そう思い麻布にその事を言った。
麻布
「わかった、じゃあ君に頼むよ、こっちだ、着いてきてくれ」
そう言って麻布は元来た道を引き返す、俺はそれに走って追いかけた。
高町
「何だこりゃ!?」
俺は目の前の光景に思わず叫んでしまう。
大量のお盆の上には様々な料理の数々、まるで何処かの大食いチャンピオンが居るのかと思わせるほどの量なのだ、辺りを見渡してもそれっぽい奴はいない。
(待てよ、麻布はここに来る前に確か覚悟を決めておけと言っていたが、まさかこの事だったのか?)
高町
「なあ、麻布さっきお前が言っていた覚悟っていうのはこの事か?」
返ってくる答えは予測できるが、一応先ほどから俺に目を合わそうとしない麻布に聞いてみる。
すると麻布はニヤリとしながら言った。
秋那
「先ほどしっかりと言っただろう? 覚悟を決めておいてくれと」
この言葉だけで俺が思っていたことは本当だということを実感できたのは、三沢と相沢がこちらに気づいて来た時だった。
悠子
「あ、高町さん」
無亜
「げっ、アンタが来たの 渡辺はどうしたの?」
今の『げっ』と言う言葉から判断すると、どうやら食べるのは三沢の様だ。
秋那
「渡辺は何だか知らないが、ボーッとしているんだが高町、君は何故渡辺があんなふうに成っているかを知らないか?」
渡辺がボーッとしているのはイメージトレーニングだろうが、今その事を言うことは出来ない、いや、言いたくないと言うべきだろう、何故なら俺は一度三沢との模擬戦を断っているのだから、もしも俺が模擬戦の事を話したら確実に闘え、と言ってくるだろう、元々俺は模擬戦自体はあまり乗る気ではなかったが、力試しと恩の為にやるだけなので、言わない。
高町
「さあな、俺はアイツの事はよく知らんし、その事ならお前たちの方が分かるんじゃないか?」
逃げるための言葉を並べた、それにしても我ながら上手くなったものだ。
高町
「そんな事より早く飯を食べに行こう、それと結局これいくらだった?」
目の前にある大量の料理を指差して言う。
その言葉に、三沢はビクッとしながら何時も五月蝿いほど元気な三沢とは思えないほど弱々しく言った。
無亜
「え、えーと六千円ぐらい? あ、あははは」
苦笑いをしながら普通では信じられない額をサラッと言いやがったこいつ。
高町
「ハアッ、六千円か、まあいいお釣りをくれ」
俺の言葉に三人ともきょとんとして俺の顔を見る
高町
「何だ? まさかお釣りをぼったくるつもりだったのか? だったら残念だったな、しっかりと覚えているからな」
無亜
「そ、そうじゃなくて、怒らないの?」
高町
「いったい何に怒る必要があるんだ? 金のことか、最初に言っただろ? 一万円で払えって、だからいくら使おうと構わねえよ、後悔しないとも言ったしな」
これは嘘ではない、本当に後悔などしてはいないし、する気もない、最初から世話になるので奢るつもりだったので構わない。
悠子
「でっ、でも沢山使って大丈夫なんですか?」
俺の財布事情を心配して言ってくる。
高町
「大丈夫だ、使い時はわきまえているし、使い過ぎるつもりも無いしな」
その後も麻布や相沢は色々と言ってくるが、その度に「大丈夫だ」と言って、どうにかした。
そして、いざ目の前にある大量の料理をどうやって運ぶか考えたが麻布の「普通に何回か分けて運ぶしか無いんじゃないか?」と言う意見に対してそれ以上の方法を思い付かなかったので三回に分けて二個づつお盆を運ぶ事にした。
高町
「お、重い」
その料理はほとんどが大盛の為、かなりの重さを誇っていたが、三度目の行き来で漸く運び終えた。
ちなみに渡辺は一回目に来るときに殴って強制的にイメージトレーニングを終了させたが、何かを忘れている気がしたが、気のせいだと思い、考えなかった。
高町
「じゃあ食べるか」
一同
「「いただきます」」
食べる前にしっかりいただきますを言ってから食事を始める、渡辺は大盛牛丼で麻布はヘルシーそば、相沢もヘルシーそばで俺はきつねうどん、三沢はというと俺たちが注文したもの全てと、カレーライス、ぶっかけうどん等大量に食べている、これは余談だが三沢は俺がきつねうどんを食べ終わる前に、ふと三沢の方を見ると自分で注文したものの半分は食べきっていた
(本当にコイツはどんな胃袋をしてんだ?)
そんな疑問を持たせる夕飯だった。
渡辺
「なあ、高町」
夕飯を食べ終わった渡辺は俺に話しかけてくる。
高町
「何だ?」
渡辺・高町
「後でやる模擬戦なんだけ(おい、バカやめろ)」
そう言って渡辺の言うことを遮ろうとしたが、時すでに遅し、といったところだろうか、三沢は食べるのを止め、麻布は興味が有りそうな顔でこちらを見ていて相沢は少なからず興味は有るのだろう、自分のヘルシーそばを食べながらこっちを見ている。
無亜
「ねえ、高町アンタ私が模擬戦しよう、って言った時に何て言ったっけ? 確か武術は辞めているから嫌だって言ったわよね? それがどうして渡辺と模擬戦をするのかしら?」
もの凄い笑顔のまま言うがアレは確実に笑っていない顔は笑っているが、内心確実に『私とやらなきゃ殺すわよ』って言ってるような顔だ、ここで承諾しなきゃ確実に俺は殺られるだろう、そう思いしぶしぶ三沢との模擬戦も了承した。
高町
「ただし、あんまり期待しないことと、今日は無理だからな」
無亜
「わかってるわよ、私も高町の実力を見たいから、速く食べるわね」
そう言って食べにかかる三沢だったが二、三分して相沢と同時に食べ終わった
(何て速さだよ…)
そんな突っ込みを心の中でして、俺たちは光風公園に向かう、俺は武器の用意があると言って、インフェルノで先に光風公園に着き、人がいない事を確認してからメットインの中から、一つの小さな玩具のトランクケースを取り出した。
高町
「さてと、アービナル『イセリアル』発動!」
小さなトランクケースの玩具は大きくなり、中からトランクケースの大きさに明らかに合っていない竹刀や、大剣が現れた、実際バイクのインフェルノも実はアービナルなのだが、移動用にしか使わないので、常に実体化、つまりキーホルダーや、媒体に戻さなくて良いのだ、その分魔力の消費も少なくすむ。
取り出した大剣と竹刀の大きさの木刀を見て、傷やヒビが入っていないか見るが俺が使う木刀にヒビが入っていた。
高町
「参ったな、うーむ、だがこれぐらいならどうせ武器を気で強化するんだから大丈夫だな」
先ほど渡辺とルールを確認したが、武器の気で強化はアリだが、身体強化は無しらしい、それと武器が壊れても敗北を宣言しなければ問題無いらしい。
その後イセリアルを元の大きさに戻し、メットインにしまって、渡辺たちを待った、渡辺たちはその五分後に来た。
高町
「これで大丈夫か?」
渡辺に大剣の木刀を投げ渡す。
渡辺
「うぉっと、…ああ、これで大丈夫だぜ」
高町
「じゃあぼちぼち始めるとすっか」
渡辺
「ああ!」
高町
「よし、高町瞭―」
渡辺
「渡辺慧―」
高町・渡辺
「参る(行くぜ)!!」
同時に足を踏み出し、闘いの火蓋が切って落とされた。
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―第二十七話―
―闘いの前に―
―完―
次回は何時もより速く、おそらく月曜日か、日曜日の十二時前に投稿します。