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インテリジェンツィア  作者: 文月葉
2019.1.1.9:00.am
3/7

〜ネーロの物語〜

Ⅲ 2019.1.1.13:00.am



 わたし、お父さんとは仲良かったんですよ。お父さんが勉強を教えてくれたおかげで、成績はオール10ですし。休みの日は、家族みんなで出かけたり、庭でピクニックしたりしたんです。創真も、そういうのにはついてきて…普段は、お父さんに反抗的なのに。まったく、都合のいい奴なんですよ。

 あの日は、知ってると思いますけど、パーティーがありました。我が家では何年も前から、それこそ私が生まれるまえからあったんです。私は、別に着飾るのは好きではありませんが、嫌いでも無いので毎回出席していました。実際、いろんな仮面や衣装を着ている人を見るのは、楽しいですし。

 あの日の朝は、お母さんはいつも通り忙しくしていました。皐月さんを呼んで、部屋に閉じこもりっぱなしで。毎年そうです、お母さんは。

 でも私は、そこまで気には止めません。いつも支度をするのはお昼を食べ終わってからです。

 お昼は、特に何もなく、食堂で食べました。たしか、食べたものはサンドイッチかなんかだったと思います。

 お昼が終わって、少しお腹の中のサンドイッチが減ると、美咲さんを呼びました。彼女は、私専属のお手伝いで、年齢も近く私とは友達に近い間柄です。呼んだ理由は、もちろん、夜に向けて身支度をするから。

 身支度が終わってからは、ほとんど庭のハンモックで本を読んでいました。お母様は、もちろん服装が乱れたら困る、と注意しました。でも私は休みの日はよく庭で本を読むんです。だから、その日も同じ。たまに、庭の中にいる動物たちーお気に入りはいつの間に住み着いたグレーのふさふさした兎ですーが来るので、撫でたりしました。

 すると、3時くらいでしょうか、近くで人声がしました。お父様、お母様、そして冬樹さんの声です。なにやら話しているようでしたけど、とくに聞きはしませんでした。断片的に聞こえていたところを思い出すと、本番前の打ち合わせみたいなもののようでした。毎度のことなので、まあ、聞かなくてもいいかなと思ったんです。

 その時読んでいた本がクライマックスだったので、私はすぐにそのことなんか忘れてしまいました。

 夕方になると、家に入りました。夕日では、本は読めないので。部屋に帰って、すこし髪を直したりしていました。

 そのあと、トイレに行こうと思って廊下に出ると、ばったり冬樹さんに出くわしました。特には、何も喋っていません。軽い挨拶をしただけです。

 私が最後に父を見たのは、パーティー会場に向かうときです。ノックをして、父の様子を見に行きました。いつも、父は大事なことを忘れるんです。本番直前までピリピリしてるのに、本番は…まあ、だから、7時に下に来ること、と言ったんです。

 そのあとのことは、私は知りません。たぶん冬樹さんや母から聞いたかと思いますけど、30分を過ぎても父が来ないので、冬樹さんが見に行ったら、父は死んでいた。私が知っているのはそれだけです。

 ごめんなさい、あまりお役に立てなくて。でも私、この屋敷の人の中に、犯人がいる気がします。パーティーの参加者は、ダンスホールと庭以外には入れないはずなんです。鍵がかけられているので。とにかく、何百人と来ていたのですから、屋敷に住む人を最初にあたった方がいいと思います。お願いです、絶対に犯人を見つけ出してください。

           ∞

「と言い、彼女は部屋から出て行った」

三上はつぶやいた。

「何、この物語調のメモ」

「いやー、このが、なんとなくいいような気がして」

雲林院は頭を掻いた。

「いやー、じゃないわよ。こんな風に書くくらいなら、もっと相手の表情なんかをよく書いときなさい」

「はーい、はい」

雲林院は面倒くさそうに答えた。

「あんたね、見た目いいからといって、そんな態度で仕事するのはよくない。いつかは、誰かの上に立つことになるんだから、がんばりなさいよ」

三上は、少し憤っている。

「ごめんなさーい。次の人は…息子の創真さんか。その時は、ちゃんとやりまっせー」

雲林院の態度は、三上には直せそうにもなかった。

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