5.ご主人様と呼ぶ可愛い妖精
「まあいい。粉々にしてくれるわァ!」
デカい図体のわりには素早い動きで接近し、飛びかかってきた。常人なら反応が遅れてしまう速度。さすがレベル3以上はあるモンスターだ。オレがパーティとしてやっていた頃はこんなオークの個体は知らなかった。ギルドでさえもわからないとなればそれなりに強いのも妥当か。
だが、
「グヌッ! コレは!?」
振りかざす棍棒は弾かれてしまう。オークキングは何が起こったのかわからずにいた。本来なら一撃で倒せるはずのレベル0に攻撃を弾かれ、焦りを浮かべていた。
しかし諦めることなく攻撃を続ける。
「くそっ、俺様が、人間如きに負けるはずがない!」
しかし攻撃は弾かれる。少しは学ぼうとはしないのか。連続攻撃をしているのにも関わらず、一撃も当たることはない。言ってしまえば当たることはないのだ。
「スキル『攻撃反射』。君の攻撃が当たることは永遠にないだろう。いくら殴っても無駄さ」
「チッ、面倒なスキルを持っているな。だが、これならどうだァ!」
棍棒を捨て、今度は攻撃魔法を使用する。なるほど、物理がダメなら魔法か。少しは考える頭があったとは。妥当な判断だ。
スキルは1人につき1つしか付与されない。オレのスキルが『攻撃反射』とわかった以上、棍棒での攻撃は無駄という判断をし、誰もが使える簡易魔法を使用する。
「ファイアボール!」
バァーーーンッ!
放たれた魔法。ハルトは避けることなく正面で受け止める。爆発と同時に煙が起こる。しかし、ハルトは無傷だった。
「なぁ!?」
無傷のオレの姿にオークキングは思わず立ちすくんでいた。
「スキル『魔法反射』。残念だがオレは無限のスキルを持っている。1つしかスキルを発動できないっていうその概念自体が間違っている」
「ありえぬ。こんなことが……はっ!」
「彼女を痛めつけた罰だ」
ズドンッ!
オレが放った『雷撃一閃』によってオークキングの胴体を突き抜かれる。そのまま勢いよく飛ばされ、壁にぶつかると力が抜けたかのように横になる。
「く、クソ! 一体……どうやって……そんな高速移動をして。こんな貧弱な冒険者に負けるとは……」
「今のはスキル『瞬速』一方向にしか動けないが、最速で移動することができる。しばらくそこで寝ててくれ」
オレはオークキングを無視し、彼女の元へ行く。
「ま、まさか、本当にあのオークキングを倒してしまうとは」
「だから大丈夫だって言ったろ。それにそうでもなかったし」
「そ、そんなはずはありませんオークキングはその名の通りオークの中でも最上位の個体です。それを簡単に倒してしまうなんて……」
なんか思っていたより凄いみたい。こうやってモンスターを倒すのってパーティにいたときはやったことがないからわからないな。
「それよりも、まずは鎖を解かなきゃ」
オレは彼女の手足を拘束している鎖を外す。しかし右足だけ外すことができない。
「ふっ、その鎖は対象の魔力を呑み込む。対象の魔力が尽きない限り、永遠に外すことできない魔法の道具だ。だからとっとと諦めて死ねぇ!」
もう力も残っていないのに、オレたちに向けて魔法を放つ。やれやれ、せっかく生かしておいたのに。自ら命を捨てる行為ほど愚かなものなはないのに。
「はぁ、だから寝ててって言ったのに」
「グギャアァァ!」
次の瞬間、オークキングは自ら放ったファイアボールによって身体が燃え、絶命した。
「『魔法反射』は相手の攻撃を跳ね返すことだってできる。まさか自分の魔法で死ぬなんて思っていなかっただろうけどね」
これでオークキングは片付けたが、まだこの魔法具の問題が残っている。
「これは契約みたいなものか。だとすればオレのスキルでも無理か……」
契約とは最上位の魔法みたいなものであり、何かを代償にすることで発揮することができる、言わば呪いだ。
「あ、あの……、私はいいです。私をここから解放してしまえば、このダンジョンは崩れてあなたが瓦礫の下敷きになってします。どうかその前にお逃げください。私は……少しだけでも長く生きれて……良かったです」
彼女の目からポツリと涙が一滴溢れる。なのに顔を笑っていた。なんでそんな顔をするんだよ。神様、どうか力を貸して下さい。そしてオレは彼女の手を取る。
「……えっ!?」
「そんなこと、言わないでよ。必ず生きる。それだけだろ」
そのまま彼女を抱え、鎖を外す。その行動に当然彼女は驚く。
「なんで!?」
ゴゴゴゴゴゴ……
ダンジョンの崩壊が始まる。
「オレも経験があるんだ。ある人に助けられた。だから今ここにいることができている。そして今度はオレが誰かを助ける番だ」
彼女を抱えたまま詠唱を始める。
「スキル『瞬間移動』」
ポンッと音と同時に、ダンジョンを抜け出す。ダンジョンが完全に崩壊したのはその数秒後だった。
なんとか抜け出し、入口までこれた。ふぅ、間に合ったか。そしてハルトの手には彼女の手がしっかりと握られている。
「あ、あれ、私、生きてる!?」
「大丈夫? 怪我はない?」
「あ、はい……そ、その、ありがとうございます」
「大したことはしてないさ。ただ助けただけだ」
「ですが私の契約は? あれは呪いと同等。鎖がないですが私にかけられた呪いは解けるはずが……」
あのとき、彼女には何が起きたかわかっていなかったのか。ならここで全てを話そう。
「すごくまとめると、契約は君とダンジョンじゃなくて、君とオレに再契約したの」
そうしてオレは自分と彼女を指でさす。
「私があなたと……?」
「そう。君の呪いは永遠の魔力を吸収すること。だからオレの魔力を君にずっと供給するように再契約したんだ。悪かったかな?」
とっさにしてしまったため彼女の意志を聞いていなかったが、あのままだと彼女が絶命してしまうためだ。だけど、嫌われてしまうだろうか。
しかし、
「い、いえ。その……嬉しいです。あなた様に救っていただいて」
ボソボソと話し、そっぽを向いてしまった。あれ、やっぱ嫌われてしまったか。仕方ないか。種族同士の契約は、言い方を変えれば『結婚』に近いものだし。勝手にしてしまったオレの方が悪い。
だとしても、これからのことを説明しなければならないんだよなー。咳払いをし、
「そ、そのー、契約してしまったことにより、つきましては、あー、しばらく一緒に行動してもらはないといけないのですが」
「それって、ずっとあなた様と旅をするということですか?」
「まあそうなるけど」
”ずっと”、という単語が気になったが間違ってはないしな。そうなるだろう。嫌だと思うけど。
「こんな落ちこぼれでレベル0の冒険者だけど、ついてきてくれるかい?」
ハルトはそっと優しく手を差し出す。嫌と言うならばそれでいい。覚悟はできていた。だからたとえ手を取らなくても……
「――あの、一生お傍にいさせてくださいっ!」
オレの手を取り、承諾する。
「で、でも、こんなオレと旅だよ! ましてや近くの街で最低評価の」
「構いません! 私はどこまでもついていきますよ! あ、それと私の名前はルナと言います」
そういえばまだ名前を聞いていなかった。珍しい名前だな。さっきも言ったが改めて名乗る。
「オレはハルト。そのままハルトって呼んでくれ」
「はいっ! それで私とハルト様は言ってしまえば上下関係にあります。私は鎖をつけた下位。つまり奴隷みたいなものです! ですから今度からご主人様とお呼びさせていただきます!」
「いや、ちょっと待ってね。さすがにご主人様はその恥ずかしいしやめた方が……」
すると彼女はさっと顔を赤くしながら、
「はいっ! ご主人様♡」
……まるで話を聞いてない。こうして、レベル0の追放されし冒険者は絶滅したかに思えた妖精族の末裔とともに旅を始めることになったのだった。
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