46.一太刀にぶつける思い
「とうとう諦めて正面突破か。僕は残念だよ。せっかく楽しく倒してあげようと思っていたのに、こんな呆気ない終わり方を選ぶなんてね。せいぜい儚く散ってくれ」
そんな言葉など気にせず、私は地を蹴り突破を図る。私が防戦一方なっていた理由はいろいろある。いずれ放つであろうその一撃を、私の一撃ではね返す!
『獣脚の一撃』
力を足の一点に集中し、蹴り出す技。主人様との鍛錬の結果、会得した技だ。
ドォーーンッ!
手VS脚。二つの技は勢いよく衝突し、激しい衝撃波が生まれる。やがて衝撃に耐えられなくなってしまったのか、手は私の攻撃の衝撃により消滅する。その光景にエドワードは驚いていた。
「なぜだ……何故ッ! 僕の最強の一撃があんな獣人に勝てないんだ!」
それは酷く動揺していた。
「わからないのですか。ならば教えてあげましょう。それはあなたが弱いからです」
「ぼ、僕が弱いだと!?」
「えぇ。あなたは弱い。だから私の一撃に勝てない。それだけのことです」
まあ主人様に放ったときは呆気なく止められてしまったけど。
「その無数の手の力は、その鎧に空気を操る魔法と遠隔魔法が刻印されていますね。防具に魔法を刻印する技術は難しく相当値が張る防具でしょう。ですが、あなたはそもそも強い武器や防具がなんのためにあるのかわかっていないようですね」
「何を言っている。僕は恵まれた家に生まれ、今まで不自由なく生きていた最高の、完璧な人間だ。お前みたいな奴隷種族に僕の何がわかると言うんだッ! この防具だって莫大な資金を用意して発注した特注品だ。生身の獣人に負けるはずがないんだよ!」
私の発言はどうも気に食わないようだ。それもそのはずだ。絶対勝てるという勝機が、たった今負けるという不安に変わってしまったのだから。そうなってしまった理由もわからずに。
「使用者に実力に見合って初めて武器は使いこなすことができる。あなたにはその強いであろう防具は扱えないんですよ。それはあなた自身が弱いから」
真実を告げるとエドワードはまるで発狂するかのように、
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェ! 僕は選ばれた天才だ! こんなことがあってはならないんだよ。僕の思い通りにならないことはないんだよっ!」
「そうですか。ならそのくだらない思想、断ち切ってみせましょう」
これ以上は時間の無駄ですね。それに私の体力もそう残っていない。やるならここしかない!
「僕には勝てないッ! 僕の勝利は絶対ダッ! ヤラレロヨォォ!!」
迫り来る『無限ノ手』。またしても私の周囲から手が忍び寄る。誰がどう見ても不利な状況だった。しかし、一瞬、観客席の方を見ると、主人様だけが微笑み、勝利を確信していた。
『獣脚の一撃・連撃』
私は迫り来る全ての手を弾き返す。全てが相殺されたのだ。そして残るは隙だらけの相手のみ。私は高く飛躍し、落下速度すらも自らの力に変える。この一撃はただの一撃じゃない。主人様に拾われたから、私に戦い方を教えてくれたから、私はここに立っている。
「何故だァ! どうして僕があんな攻撃ごときに!」
繰り出される一撃はとても美しく弧を描く。誰もが息を飲むほど優美であった。
『獣脚の一撃・閃撃』
その技は無防備なエドワードの首元に直撃……する寸前に止められていた。
「全く、あなたに武闘は100年早いですわ」
そのままエドワードは気絶し倒れてしまった。
「試合終了! 一回戦、ナタリアの勝利ッ!!!」
ルドルフさんの声とともに試合の決着を告げるゴングが鳴り響く。
うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
それと同時に歓声が湧き上がる。
「……勝ったのですか」
私はようやく自分が戦いに勝ったのだ悟った。
〜ハルト side〜
俺たちは控え室に向かっていた。
「お疲れ様、ナタリア」
「主人様! 応援ありがとうございました!」
「そんなの当たり前だろ。俺たちはパーティなんだから。なあルナ?」
「そうですよ! それになんですかあの技は!? あんな大技を本番でやるなんて」
ナタリアが一人で自主練をしていたのは知っていたが、まさかこんな高度な技を独自で練習していたなんてな。……なんか俺が教える必要がないような気もするが。
「いえ、あれはたまたまできただけです。それに、まだ一回戦です。こんな所で挫けているようじゃ優勝する事なんてできませんから!」
やっぱり、どこまで行ってもナタリアだ。飽くなき探究心は俺も見習うべきだな。
「すまねぇ、疑った俺が悪かったさ。ナタリア、あんたならローガンをぶっ飛ばせるさ」
「……そのお言葉ありがとうございます」
そこからしばらく談笑し、明日のためにも休息を優先した。皆、この武闘大会に胸を高鳴らせていた。
〜ナタリア side〜
一回戦が終わり、私は控え室へと向かっていた。そしてその廊下ですれ違う人。
「くだらない戦いをしているな、女。やっぱりごっこ遊びがしたいなら帰った方がいい」
そう話しかけるのはローガンだ。お互い、顔を向けず、言葉を交わす。
「あなたにはそう見えたのですね」
「ああ。戦いで全てが見える。お前の戦いへの信念がな」
「それが何か?」
「まあ、いずれわかるさ。誰かのために戦うことへの過酷さをな」
そう言うと、ローガンは過ぎ去ってゆく。私にはまだ彼が発する言葉を意味を理解することができなかった。
「面白い!」「続きが気になる!」
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