43.追放されたライアンパーティの行方 ③
この街に到着してから日も暮れて、宿屋に滞在していた。
「で、俺が用意して欲しい物は揃ったか?」
「ああ。ここに全部。でも、この薬草とか一体何に使うんだ?」
ガリアは俺が用意して欲しかった品を見て疑問に思う。それもそのはすだ。武闘大会に備えた武器や装備ならわかるが、俺が集めたのは薬草などといった必要のないものだ。
「今は明かせない。だが、これは必ず俺の役に立つ」
当然、俺がこいつらを信用しているわけもなく、言うはずなどないのだ。昔から一緒にいただけの仲だ。死んでしまおうが俺には関係ないこと。
「そういえば、明日じゃありませんかトーナメント表の発表。まあライアン様は誰と闘おうと負けないと思いますが」
「そうだな。明日に備えて、今日はもう休憩でいい。明日の予定は頭に入っているな? 俺たちの未来の為にも必ず遂行させろ」
今日はここで解散し、それぞれの自室に帰っていく。1人となった俺の部屋は静寂に包まれる。だが、頭の中ではずっと鳴り続けている。
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す』
呪文のように繰り返される。苛まれることはなかった。だって、それが俺の、――何よりもの願いだからだ。
朝になり、俺たちはトーナメント表の発表を見ていた。
「Dブロックか。まあここでさっさと勝って本選に上がるだけだけどな」
「見たことある名前はないな。ここで前回の優勝者がいたらシャレになんないからな」
ガリアはいきなり強敵と戦うことがなくて安堵しているようだった。それは俺もありがたかった。ここでぶち当たってしまえば、俺の計画が狂ってしまう。
「Aブロックはここからだと遠いな。めんどくせぇな」
この街の構造は他とは違う。街には4つの闘技場が存在し、ブロックごとによって会場が違うのだ。AとDは一番遠い。だが仕方ない。
「ここからはまた別行動だ。夜には宿屋に集合だ」
ガリアとピスカは返事をし、それぞれ別の場所へと向かった。俺もやらなくてはいけないことがあるが、
「夜まで待つしかねぇな」
夜の街は賑わっている。グラスを片手に夜通しで飲んでいるクソ野郎共がうじゃうじゃいる。そんなバーの一角に、明らかに他の者とは違うオーラを纏っている男を見つけた。俺はそっとカウンターに座っている男の隣に座る。
「こんな時間に、有名人が1人で飲んでいるとは驚いたな」
「……」
無視か。知らねぇ野郎には興味がないってか。なら、この男が興味を引く話題を。
「武闘大会。俺も出ようと思っている。そしたらいつかはあんたとも戦うことになるがそん時はよろしくな」
「……何の用だ」
「ようやく口を開いてくれたか。会えて嬉しいよ、ローガン」
前回大会にて圧倒的な実力で優勝をした男。下手に煽ればこちらの危険もある。慎重に揺さぶる必要がある。
「お前は誰だ? この街の奴じゃなさそうだな」
「ああ。俺は他の街から来たんだ。この武闘大会っていうおもろしそうな大会があってね。是非とも参加したくて足を運んだ」
軽く話をし、相手の様子を伺う。いつもの俺がすることじゃないが、全ては俺の計画のためだ。
「そうか。悪いが俺はよそ者には興味がない。さっさと去りな」
やはり、交流すらしないか。なら強行突破で挑むしかない。
「いい話があってね。ローガンは名の知れた実力者だ。そこでお願いがある。俺のパーティに入ってくれないか?」
「冗談キツイぜ。俺は誰かの傘下に入るつもりはねぇよ。それに俺だってパーティを率いるリーダーだ。悪いが他を当たってくれ」
そう言うとその場を立ち去ろうとする。ダメか。一筋縄ではいかないとなると面倒だ。だが、こっちには武器がある。それもとっておきのだ。
「――二ヶ月前に解散したあのパーティなんてないも同然だ。いつまでそんなパーティを引きずっている」
「ッ!」
ビンゴだ。強者ほど心に棘がある。それをいたぶるように差し込めば、それは弱みとなる。
「あんたは二ヶ月前までパーティを組んでいた。たしか名前は……そう、ノア。とある理由により口論になり、結果として解散状態だ」
「どこでその情報を?」
「たまたま聞いたんだよ。そう怒んなって。俺は別に馬鹿にしたいわけじゃないさ」
「じゃあ何しに来た。返答によっては拳で決める必要があるけどな」
これだから脳筋細胞野郎は嫌いだ。最後まで話を聞いてもらいたいものだ。
「いいや、俺は共感しているんだ。憎い相手がいる。それは俺も同じだ。だから、俺たちは分かり合える。同じ屈辱を味わい、痛みを知っている。身近な存在に裏切られた気持ちをな。だから、俺たちと一緒に来れば必ずいい人生になる」
ローガンはその場で黙り込み、口を開く。
「……無理だな。俺は俺自身の力であいつにわからせねじ伏せる。用が済んだんなら帰ってくれ」
一体どこまでガードが硬いのやら。だがいい。これ結末になることも想定済み。であれば、この男にフィールドに俺が入るだけだ。
「そうか。やっぱり勧誘は無理あるか。だったらよ、――武闘大会で決めないか? せっかく面白い舞台があるんだ。それに戦うことは好きだろ?」
「俺に勝負で勝つだと? 馬鹿を言え。この俺が誰にも負けるわけないだろう」
「――なら、本選にて決着をつけようじゃないか。もし俺が勝ったらあんたは俺のパーティに入る。俺が負ければあんたの言うことを聞くさ」
わかりやすい挑発だ。こんな挑発など受けるはずもない。だが、今のあんたなら受けるさ。だって、俺と同じ目をしているからな。
「いいだろう。だが、勝負を仕掛けてきたのなら、予選で敗退などという茶番は止めてくれ。笑えないからな」
「ああ。約束するさ」
約束を交わすとローガンは立ち去った。この勝負、俺が負けると思う奴の方が多いだろう。前回大会優勝者と無名の冒険者じゃ知名度で差があるし、そもそもここにいる連中は俺の実力を知らないからな。だが、俺は負けない……いや、負けるはずがないのだ。
「頼むから、俺の計画を崩すなよローガンよ」
ポツリと一言呟き、俺は夜の夕闇に消えていくのだった。




