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42.新たな相手、そして動き出す影

「ま、俺の話はどうでもいいんだ。それより、明日がトーナメント表の発表だろ? ちゃんとルールとかわかってんのか?」


「まあ一応は。細かいルールなどはまだ確認してないけど」


 魔法は一切禁止。己の実力で全てが決まる武闘大会、ってくらいしかヴァルクさんから聞いてないからなー。


「だったら、改めてお前にもわかりやすく教えてやんよ」


 ノアの言葉をオレは忘れぬようにメモを取り、頭の中に記憶しておく。



 1…… トーナメントはA〜Dブロックまであり、ブロックで優勝した者のみ本戦に出場できる


 2…… 魔法(魔力)の使用は禁止、また相手を状態異常にさせるような行為も禁止(毒や麻痺を使った攻撃など)


 3…… 試合は1VS1、どちらかが降参するか、戦闘不能になった瞬間に勝敗は決する


 4…… この武闘大会を制した者には『闘神』の称号が授けられる



「こんな感じかな。あとは試合が始まったらその目で確認した方がいいだろう」


「なんかありがとう。こんなオレに教えてくれて」


「なぁに、冒険者ってこういうのが醍醐味だろ。知らない街で、自分が知らなかった世界を知る。新たな境地を開拓するのが冒険者だと思うぜ」


 やはり、冒険者とはそういう姿であるべきなのだろうか。だったらオレはどうだろうか。過去に囚われながら生きている姿は滑稽……いや、今はそんなことを考えてる場合じゃないな。


「それじゃ、俺は帰るわ。今日は楽しかったぜ。またどこかで会ったらよろしくな」


 そう言うと席を立ち、その場を去った。オレもそろそろ戻らないと怒られそうだな。……ん? そこにあるグラスはノアのだよな。……ひょっとして、


「お二人分の勘定です」


 やっぱりそうだよなー。まんまとお金を払わせられたか。これは大会の情報代としてここは腹をくくろう。








 それから一夜明け、今日はトーナメント表の発表だ。闘技場の前には大きくトーナメント表が貼られていた。するとそこにはノアがいた。大きく手を振り、こちらへやってくる。


「よお、また会ったな」


 多分、オレたちの行動を見計らって来たのだろう。それよりも、オレはノアの耳元で、


「おい、昨日のお金は……」


「まあ細かいことは気にすんなって。それよりも見てみろよ」


 なんかはぐらかされたがまあいい。


「ナタリア、あったか?」


「はい、ありました」


「ご主人様、左に書いてある対戦から始まるのですか?」


「まあ普通はそうだろうな……って!?」


 そこに書かれていた名前は、ナタリアだった。するとノアが高らかに笑い、


「ははっ、まさか1回戦からとはな。それで対戦相手はっと」


 ナタリアの名前の横に書いてある名前は、「エドワード」という人だった。するとオレたちの後ろから声がかかる。


「――これはこれはお生憎だね。この天才の僕の相手がそこの女の子だとはね。ま、これは運命。どうだい、僕と共に人生について語り合おうじゃないか」


 丸メガネにマッシュルームヘア、蝶ネクタイという御曹司の息子みたいな子どもは誘い言葉を巧みに使いナタリア呼ぶ少女の手を取る。


「私、ナタリアじゃありませんよ。私の名前はルナですよ」


「ふうぇ!? …… おっとこれは失礼。ナタリアは君か」


「はい、私がナタリアですが?」


「どちらもとても美しい。僕のパートナーとしては十分だ。どうだい、せっかく対戦するんだから、なにか面白くなるゲームをしようじゃないか」


「ゲームって一体なにをするんだい?」


 オレが話しかけると目を逸らしわざとらしく払いのけられる。


「ふんっ、男はどうでもいい。僕はこの美少女に相手してるんだ。……だから君みたいな弱そうな人は引っ込んで……」


「――ご主人様を馬鹿にするとはいい度胸じゃありませんか」


「――主人様が邪魔というのなら私も不要です。あなたの話を聞く必要もありません」


 なんかすごい2人が怒っているような雰囲気を漂わせている。ほら、もう相手動揺しちゃってるよ。


「うぅ……そうか。そんなにそこの男が気に入っているのか。だが、ここで僕が目を覚ましてあげよう! この勝負で僕が勝ったら僕のパーティメンバーとして一生を捧げることだな!」


 なんかよくわからない勝負を仕掛けてきたな。こんな勝負など受ける気などない。そもそもこっちのメリットがないのだ。ここは断るのが当たり前だ。


「盛り上がっているところ悪いが、オレたちはそんな勝負に構っているほど暇じゃないんだ。だからこの話はここで終わりにして……」


「――いいでしょう。この勝負、私が受けて立ちましょう! ご主人様を馬鹿にしたことを後悔させてやりますよっ!」


「同感です。私も、全力であなたを倒します」


 オレの話も聞かず、遮るようにルナが勝負に挑んでいた。


「あ、あのー、だからね、オレたちが受ける理由はないからさ。さっさと行こう……」


「何を言っているのですかご主人様。私だってただの妖精……に、人間ではありません! 受けた勝負には全力で立ち向かいます!」


「主人様、私もここは引き下がるわけにはいかないのです。だからここは暖かく見守って頂けると幸いです」


 これはあれだ。たまーに熱が入っちゃうルナの暴走にナタリアも感化されちゃったか。こうなったらどうしようもできない。


「ふっ、お、覚えておけよ! 必ずお前たちを倒してやるからな!」


 エドワードは急ぎ足でその場を去ったのだった。はぁ、どうしてこうなったのか。オレが肩を落としていると、


「全く、ご主人様に楯突くなんて恥知らずです! ご主人様、大丈夫ですよ。ナタリアちゃんと私が作戦を練って必ず勝利します!」


 と、そしてニコッと笑顔で言うのだった。そんな光景を横でずっと見ていたノアはわかってくれたのか優しく肩を叩き、


「まあ、男は弱いってことだな。じゃ、また明日な〜」


 さてさて、どうなることやら……








「俺たちの街も大きかったが、この街もそれよりも大きいな」


「まあ、武闘大会が開催されるわけだしね。これくらいは大きいでしょう」


「――ようやくか。いいか、俺たちの目標はこの大会で優勝し、ついでに強そうなやつを捕まえて戦力にすることだ。わかったならさっさと行動を始めろ」


「了解だ。お互い気をつけてな」


「えー、私は一緒が良かったけど、ライアン様が言うなら仕方ないわね。さっさと仕事を終わらせましょう」


 俺から2人は離れ、別々の行動に移る。無能を連れるこっちの身にもなって欲しいな。あいつらはただの駒に過ぎない。さっさと俺のために行動してくれよ。


「――さあ、楽しい武闘大会の始まりだッ!」



 全てはアイツに復讐するために。

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