37.新たな仲間を加え、パーティは再出発する
「うーん……そうだっ、直感だけど、ナタリアってどう?」
「ナタリア……?」
今、私は名前を決めていた。正直なんでもよかったけど、いざ考えると案外悩んでしまう。
「なんか可愛いし、かっこいいし、それでどう?」
「私は……なんでも。でも、ちょっと好きかも」
「ほんとっ!? なら良かった〜!こうゆうの初めてだったから緊張したよ〜」
「ナタリア……いい名前」
誰かから初めてもらったもの。それが名前だった。よくわからないけど嬉しい気持ちだ。
「悪い、遅くなった」
するとちょうど助けてくれた冒険者が戻ってきた。
「あ、ご主人様。今、ちょうど名前が決まったんですよ!」
「そういえば、そうだったね。それで、名前は?」
「ほら、自分から言いなよ。ほらっ」
なんかすごく恥ずかしい気分だ。
「……ナタリア。どう……ですか?」
不安げに見つめる。笑われるかもしれない。バカにされるかもしれない。覚悟はできている。
「――いい名前じゃないか。オレは気に入ったよ」
「えっ、ほんと?」
「ああ。本当だ。君にふさわしい名前だと思うよ」
「良かったね」
「……そ、そうですか」
なぜだろう、いつの間にか、顔を布団で隠してしまう。なんだか胸が鳴り響いている。身体全体に響き渡るように。なんなら顔まで赤い。どうしたのだろう。でも……
――とっても、嬉しかった。
あれから数日、ナタリアの傷はほとんど回復していた。どうやら薬が効いたみたいだ。この調子なら後遺症も残らなそうだ。
だが、まだ問題は解決していない。それは彼女の、ナタリアの今後についてだ。今はここで治療している患者だが、傷も治ってしまえばここにいる必要はない。オレたちが面倒をみなければ、また奴隷として彷徨うだろう。
だから、彼女はここで決断しなきゃならない。オレはナタリアを部屋に呼び出していた。
「まずは、君が無事に治ってよかったよ」
「いえ、これも全て貴方様のおかげです。あの薬を提供してくださったおかげで治りも早くなりました。本当に感謝しています」
出会った頃の衰弱している様子のときとは全く別人のようだった。さて、ここからが本題となる。
「さっそくだが、話したいのは君の今後についてだ。今はここにいる患者だが、もう君に治療は必要ない。言ってしまえばここにいる意味がないんだよ」
オレは真剣な眼差しでナタリアを見つめる。その光景を横にいるルナは不安そうに黙って見ていた。
「わかっています。私は、所詮は奴隷。これは覆ることの無い事実です」
「そうだ。だけど、君はもう一度やり直すチャンスがある。ここからは自由だ。君が、自分で選ぶんだ」
オレは試練を与える。彼女がどの未来を選択するのか。天国か地獄か。何を選ぶのも、それは彼女自身の意志。それが彼女にとっての自由になる。ナタリアは少し悩み、顔を上げる。
「力がなかったから、私は追放された。仕方ないと思っています。それが私の実力だったから。……でも、諦めきれない。私は……もっと強くなって、私を助けたくれた人の、――盾になりたい!」
「……ッ!」
まさかとは思ったが、そんな決断をするとはな。だが、世界はそんなに甘くない。
「辛いぞ。強さを求めるのなら、試練が待ち構えている。それを乗り越えられるのか?」
「やります。自分で決めたことです」
「君に、才能がなかったとしても?」
「ご主人様!」
この質問にはルナも黙ってはいられないだろう。オレはあえて嫌な質問をしている。それはオレが一番わかっている。しかし、ナタリアは、
「いいの。私に才能がなかったから前のパーティは追放された。だから、もう二度と同じ結末にはしない!」
ナタリアは立ち上がり、オレに視線を向ける。最初からこんな揺さぶりをかける必要すらなかったかもな。
「私は、――貴方様のパーティに入って、貴方様、いえ、主人様を守る盾になります!」
その覚悟、受け取った。てゆうか、オレよりもすごいんだが。思わず口を開いていた。でも、それがナタリアにとっての自由か。
「ようこそ。このへんてこりんなパーティへ。オレたちはナタリアを大歓迎するよ!」
「ようこそナタリアちゃん!」
こうしてナタリアは覚悟を決め、未来を自分で選びとったのだった。まさか、その結末が同じパーティになるとは……今日から大変だ。
「さっそくだけど、明日からこの王国兵の訓練に参加してもらうけどいい?」
「はい、どんな試練だろうとドンと来いです!」
おぉ、だいぶ肝が座っているようで。これは期待できる超新星が生まれるな。
「よし、それじゃ、オレたちは新たな仲間を加えて、このパーティは再出発する!」
「おぉ〜!」
「お、おうー」
この時、俺はまだ知らない。まさかナタリアがあそこまで急成長を遂げることを……
「面白い!」「続きが気になる!」
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