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36.同じ経験など、絶対にさせないと決めたから

 オレが扉を開けると、眠っていた獣人が起き上がっていた。どうやら無事に目覚めたようだ。


「オレの名前はハルト。ただの冒険者さ」


 軽く挨拶をする。すると、まだ怯えているのかその目はまだ怖がっていた。


「心配しないで。ルナが言う通り、オレたちが君をここまで運んだんだ。だいぶ衰弱しているようだったから」


「そ、それは……ありがとうございます」


「いきなり思い出すのは難しいと思うけど、何が起きたのか覚えてる?」


 オレはそっと何があったのかと状況を説明させる。あの状況から見て、他のモンスターに襲われたのか、相応のことが起こったのは間違いない。


「私は奴隷としてとあるパーティにいました。しかし、主人様は私の成長は気に入らず、ろくに食べ物も貰えず、あの何もないところに置いていかれたのです。非力な私は何もすることができず……ただの死を待つばかりでした。そこにあなた様が助けてくれたのです」


 まさかそんなことがあったとは。それにしても、奴隷で追放ねぇ。オレやルナと過去の経験が類似しているのは気のせいだろうか。それはともかく、つまり奴隷として遣わされていたが、実力が伴わず追放されてしてまったってわけか。全く、一体どんなパーティが追放するのか。


 しかし、奴隷が追放されるのは珍しいことではない。所詮は道具。そんな認識でしかない人間が、この世界にはたくさんいる。


「そうか。それは辛い体験をしたね……でもここは大丈夫。君を傷つける人はいないよ。完全に回復するまではここにいるといい。ルナ、この子の面倒を見てくれないかな?」


「はいっ、ご主人様が言うのならば。っというより、女の子とお話ができるのはちょっと嬉しいです!」


 まあ女の子相手ならルナの方が最適だろう。そこまで歳は離れてなさそうだし適任だ。


「痛みとか酷くなったら薬を置いておくから飲んでくれ」


「ご主人様はどちらへ?」


「ちょっと用事がね。あとは頼んだよ」


 オレは部屋を後にする。扉を閉めると、会話が漏れて聞こえてくる。この調子なら明日には回復するだろう。


「さて、オレはやることをしなくちゃな」







 私を助けた人はこの部屋からいなくなってしまった。そこ代わりにずっと私の傍いる彼女はなんだかニコニコしていた。


「あの、なにか?」


「いいえ、私、獣人を見たのは初めてでその耳は本物なのですか!?」


 彼女はだいぶ興味津々だった。そんなに興奮するものだろうか。獣人は人間とは違い、頭に獣の耳がついている。それをモンスター扱いする人間もいるけど、この人は違うみたいだ。


「本物です。別にたいしたものではないと思います……」


「そんなことはありませんよ。それは立派な個性じゃないですか!」


「立派な……個性」


 そんなこと初めて言われた。私はずっと人間に憧れていたのに。


「あっ、肝心なことを忘れてました! あなたのお名前はなんて言うのですか?」


 そういえば私の名前は言っていなかった。と言っても、私に名前はない。


「私に名前はない……ずっと道具として生きていたから」


 私にはそんなものなど必要ない。それがなくても役割さえ果たしてしまえばいいのだから。


「だったら決めましょう!」


「……何を?」


 すると、いきなり私の両手が掴まれ、


「あなたの名前ですよ。なんて呼べばいいかわからないし、せっかくなら可愛い名前にしましょう!」


 なんかわからないけど盛り上がっている。こんな経験は初めてだ。何もかもが新しい。ちょっと体力がないし怖いかも。……けど、理由はわからないけど一緒にいて楽しいと思った。それも私にとって、初めての感情だった。







「それで、体調の方はどうだ?」


「はい、無事に意識は取り戻しましたよ」


「それは良かった。ビックリしたぞ。クエストを終えて帰ってくるや、あんな獣人を連れてくるとはな」


「受け入れてくれたこと、感謝します」


 オレはルナと別れた後、ヴァルクさんのところに来ていた。クエストの報告と、あの獣人についての要件だ。


「なぁに、瀕死の状態を見殺しにできるわけがないだろう。姫さまには勉学の悪魔と呼ばれているが、本当の悪魔になってしまうだろうが」


 まさかアヤメにそう呼ばれていたとは。まあ性格は妥協なしの鬼っぽいし、わからなくもないけど。


「彼女はどうするんだ?」


「ひとますは本人の意志を尊重しますよ。どうやら奴隷として今まで生きていたらしいです。だから、彼女には自由に生きてほしいんです」


「やはりか……獣人は昔から奴隷になりやすいからな」


「それは一体どういう?」


 獣人が奴隷になりやすいとはどういうことだ。オレは食い気味に質問する。


「獣人は他の種族とは違う特種な存在だ。スキルを持たず、その代わりに人間離れした高い身体能力を有する。戦闘能力は極めて高い。しかし、この世界には差別するクソ共が蔓延っている。多少容姿が違うだけでモンスター扱いする野郎たちがな」


 なるほど、そんな過去があったのか。人間も獣人も変わらないと思うけど、そういう目で見る人もいるのか。


「たとえそんな迫害を受けたとしても、オレは彼女を自由にしてみせますよ。そんなくだらないことで人生が楽しくないのは最悪ですから」


「相変わらずだな。私もできる限りサポートはしよう。君を応援する」


 オレが彼女を自由にされる理由。そんなものは単純だ。



――もう二度とオレと同じ経験など、絶対にさせない。

「面白い!」「続きが気になる!」


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