35.助けたのは傷だらけの獣人でした
村の事件を解決し、オレたちは王国へ戻っていた。それから数日後、またアヤメに謁見の間に呼ばれていた。
「お見事だ。よくぞ村を救い、帰ってきた。われの千里眼はすごいのだ!」
なんかすごい褒められた。まあ、パラライザーを相手にしたからな。これで王国にも貢献できただろう。
「これで王国内のおまえに対する疑念は晴れたというわけじゃ。……それにしても、まさかパラライザーだったとはな」
それはアヤメも驚いているようだった。最近のモンスターがおかしいと思っているのはオレだけじゃないようだ。とりあえず、助言はしておいた方がよさそうだ。
「私も、ここ最近、モンスターの異変が気になります。王国からも調査をした方がよろしいかと」
「そうじゃな。そのへんも視野に入れておいた方がよさそうだな。それにここから先の街にて、魔獣も確認されたと噂されておる。確認はできていないが、いずれ厄介なことになりそうだ」
魔獣か。魔獣は他のモンスターとは違い、魔力を持つ特殊なモンスターだ。それもその魔力は人間が持つ魔力とは違う類い。並の冒険者相手じゃ到底叶わない。
「ともかく、今回はご苦労じゃった。また頼みがあれば呼ぶ。しばらくはこの城に住むといい」
「はっ!」
オレは深くお辞儀をする。これで泊まるお金の問題は解決された。安心あんしん。
こうして辺境の村のクエストは完全にクリアされたのだった。
謁見の間を後にし、オレたちの寝床として用意された客室で休憩していた。
「それにしても、魔獣が現れたとはな」
「そんなに魔獣って恐ろしいのですか?」
オレが疑問に思っていると、頭に『はてな』を浮かべたルナが聞いてくる。
「うん、魔獣は本来、絶滅しているはずの種類なんだよ。けど、3年前に発見報告がされたんだ。そのレベルも高く、ほとんどの魔獣はレベル4相当だ」
しかも、魔獣の生態についてはまだ解明されていない。どこで生まれて、どこで繁殖し、生き延びているのかも。注意深く観察するしかない。するとドンッ、と扉が鳴り、開かれる。
「ヴァルクさん」
「大変なクエストを終えたあとで疲れているところ悪いな」
「いえ、オレたちは雇われている身ですから。それで何の用ですか?」
「ああ、休憩しているところ悪いが、一つクエストを遂行してもらいたい。なに、簡単なクエストだ。外に馬車があって、そこに積んである荷物を隣街まで運んで貰いたいのだよ」
「それくらいならいいですよ。ここでのんびりしているのも退屈ですし。いいよね、ルナ?」
「はいっ、私はご主人様について行きます!」
「ほんとっ、お前たちは仲がいいな。馬車は城門に用意してある。日が暮れる前に帰ってきてくれ」
そう言い残し、ヴァルクさんは去っていく。さて、早速次のクエストか。
「簡単そうだし、ちゃちゃっとやりますか」
「はい、行きましょう」
今日も平常運転でクエストに挑むのだった。
「これで最後です」
オレは馬車に積んであった荷物を全て下ろした。
「いやー、本当に助かったよ。王国の人には感謝しないとね」
「いえ、これくらい容易いですよ。また何かあったら来ますんで」
思ったよりもクエストは早く終わった。まあ、食料を運ぶだけだったし。
「これからどうします?」
「寄り道もいいけど、ヴァルクさんに早く帰って来いって言われたしな。日が暮れる前に戻ろう」
ササッと帰って今日は休もう。それが一番いい。
まあ、そんなことがあるはずもなく……
「ご主人様。ご主人様! こんなところに獣人がいますよ」
嘘だろ、と思ったがそれは本当にいたのだ。身体中が傷だらけで今にも衰弱死してしまいそうだった。ここは何もない街道だぞ。どうしてこんなところに……今は考えている場合じゃない。助けないと。
「――大丈夫かい? もう安心してくれ。君はオレが必ず助ける」
声をかけるが反応が薄い。これは危険だ。すると獣人はオレの服をそっと手で掴む。
「――誰か……助けて」
「ご主人様! どうしましょう! このままだと死んでしまいます!」
「わかってる。今治療する」
魔法書を開き、スキルを発動する。
『完全復活』
獣人は緑の光に包まれ、傷が回復する。これで安定して呼吸ができるようになったか。しかしルナのときみたいに反応がない。
「ご主人様、回復したのに目覚めませんよ?」
「このスキルはあくまで傷を回復してくれるだけだ。精神的な疲れは時間が経たないとどうにもできない。でも、この調子ならひとまずは大丈夫だろう。このまま王国に連れて行こう」
ルナはホッと胸を撫で下ろす。おそらく、自身と同じ光景だったから心配したのだろう。王国に帰って看病する必要がある。荷物があったところに獣人を乗せ、王国に帰るのだった。
また目覚めると、知らない場所だ。煌びやかな部屋のようだった。あのかつて居たボロ臭い宿とは段違いだった。どうやら誰かが運んで来てくれたようだ。
「んっ……ここは……?」
「あら、目覚めたのですね。体調は大丈夫ですか?」
そこには知らない金髪の少女がいた。まるで女神のような美しさだった。
「あなたが……助けてくれたのですか……?」
「いいえ、助けたのはあの人です。今はここにいないようですけど……ってご主人様! 目覚めましたよ!」
「本当か!」
扉が勢いよく開かれる。現れたのは普通の冒険者だった。けど、私にはなにか違うように見えた。ゆっくりとこちらへ向かってくる。
「大丈夫かい? 酷く衰弱しているようだったから」
「大丈夫……です。あの、あなたは?」
「――オレはハルト。ただの冒険者さ」
この出会いが、私の人生を大きく変えることを、まだ私は知らなかったのだった。
※時系列が難しく混乱させてしまい申し訳ありません。
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