34.追放されたライアンパーティの行方 ②
とある街、人などほとんど通らない場所。そこに俺は獣人奴隷に戦闘の基礎を叩き込んでいた。
「何度言ったらわかるんだよ!」
俺は獣人奴隷の顔を思いっきり殴った。そのまま倒れ込み、涙を浮かべた。
「ごめんなさい……次はちゃんとやりますから……」
「はぁ、これくらいもできないと困るんだよ。頼むから足を引っ張るな。俺のパーティに入った以上、無能な奴はいらねぇんだよ」
獣人奴隷をパーティに入れ、数週間が過ぎていた。育成に関しては絶望的だった。最初の方は甘く見ていたが一向に成長しない。むしろ日々の鍛錬により動きがダメになっていく一方だった。
来る日も来る日も、鍛錬をしてはできず、俺の怒りが達し、殴る。これの繰り返しだ。
「……頑張るので、どうか見捨てないで下さい……」
「ったく、獣人はその基礎的な身体能力が高いんじゃないのかよ。お前は全く違う。ゴミみたいな獣人を引き当てたってことか」
獣人は、スキルを持たない代わりに、常人離れした身体能力を有する。たしか、レベル5の獣人もいるという程だ。それほど可能性はある。だが、コイツはどうだ。何を教えこんでもできない。泣いて「次はやる」などと言うだけだ。これは考えた方が良さそうだ。
「今日は終わりだ。さっさと寝ろ。お前に自由なんてないからな」
「……はい」
夜は安い宿屋で過ごしている。不満はあるが、パーティリーダーである俺が今はしっかりしてないといけない。こんな弱い仲間に囲まれているが仕方ない。
「それで、あの獣人はどうなんだ?」
最近の成長についてガリアが聞いてくる。
「ダメだな。アイツには才能がない。それにスキルも持たないとなると、せっかく買ったが、切り捨てるしかないかもな」
「そうか。……でも、もう少し様子を見た方がいいんじゃないか? まだ自分の力に覚醒とかしてないかもだしな」
「そ、そうですよライアン様! たとえ戦力にならなくても荷物持ちとかでも……」
「――ダメだッ! 俺のパーティに荷物持ちなんてクソみたいな奴はいらん」
突然の大声にガリアたちは驚いた顔をしていた。俺は気が付かぬうちに立ち上がり、テーブルを叩いていた。俺としたことが。冷静になる。
「とにかく、そんな奴などパーティにいらない。俺のパーティに居ていいのは実力がある者のみだ。アイツみたいなのはいらない」
何度でも頭の中に蘇る、あの忌々しい存在。
「ライアン……それで、どうするんだ? あの獣人を」
「決まってる。もうアイツに価値なんてない。明日にでも捨ててこの街も離れる。また違う奴を捕まえる。今度は奴隷なんかじゃないのをな」
「それってどういう……」
俺はパーティメンバーの言葉など聞かず、その場を去る。決めるのは俺だ。誰の反論も許さない。
こうしてライアンたちは獣人奴隷を追放することに決めたのだった。
「ふんっ、新しい仲間を迎え入れようとしたのに、まさか買った奴隷の獣人がここまでハズレだったとは。無駄な金を使わせやがって」
そして私は追放された。一ヶ月もの間、このパーティと共に過ごした。けど、私には記憶が無い。あるのは受けた傷の痛みだけだ。無数にある傷跡、腫れてしまった所はたくさんある。
何もない場所で私は置いてかれる。力が出ないため、動くこともできない。
「――誰か、助けて……」
そして私は深い闇に堕ちるのだった。
「……様。ご主人様! こんなところに獣人がいますよ!」
何故か、私に朝日がやってきた。ここで終わるはずだったのに。力を振り絞り、声がする方へ視線を向ける。そこにいるのは可愛らしい少女と、冒険者だった。
「――大丈夫かい? もう安心してくれ。君はオレが必ず助ける」
獣人を追放してから一ヶ月が経った。今頃生きていることもないだろう。ろくに食事も与えていなかったからな。餓死しているのが妥当か。
俺たちはまた違う街にいた。今度は奴隷なんてものじゃない。もっと有能な奴を仲間にする。そのために、歩く冒険者たちを観察していた。するとガリアが駆け寄ってくる。
「ライアン。見てくれよコレ」
「あ? なんだよ」
仕方なく、渡されたチラシを見ると、『武闘大会』と書かれていた。
「なんだよコレ?」
「もう少ししたらここら辺で武闘大会が行われるんだよ。優勝すれば賞金も出る。出場できるのはパーティから1人のみなんだ。どうだ? ここは武闘家である俺が出て……」
「決めた。この武闘大会、俺が出る。安心しろ。どうせ弱い奴しか出ない。軽く優勝してやるさ」
これは朗報だ。ここに集まる冒険者は多少は実力がある奴だろう。だったらそこから探せばいい。新たな仲間を。あらゆる手を使ってでも俺は復讐すると決めた。
たとえ、無理やりにでも仲間にすることだとしても。
次回の更新は5月29日、22時頃投稿予定。
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