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30.だからオレは君を地獄に叩き落とす

 どうしてだ。なんでこんなことになるんだ。こっちは切り札だって使ったんだぞ。負けるはずがない。なのに……なんであのレベル0は生きているんだ!


「クソっ!……まあいい。次こそは必ず仕留める。何度でも叩き潰す時間はあるんだから」


 今はこの森を抜けよう。バレないように馬車を使わなかったから王国に戻るまで随分と時間がかかるな。ふっ、待ってろよ、必ずお前を地獄に連れていくんだ。光栄である私の仕事を奪いやがって。


「いいか、真面目に生きた奴に天罰が下るんだ。ははっ、いつか必ず殺して……」


「――このまま生きて帰れると思ったのか。散々村の人たちを苦しませて、お前だけが素直に帰れると思うなよ」


 歩いていた足を止め、おそるおそる後ろを振り返ると、そこにいたのはあのレベル0だった。






 〜〈レベル0〉ハルト〜


「どうして居場所がバレた! みたいな顔してるな。どうした? そんなに驚いたのかい。安心して。オレがこのまま逃がすはずがないから」


 この村に来た時から抱いていた謎の違和感。そして村に広がった謎の毒。全てが謎の点と点がようやく結び、一本の線となる。


「黙っていてもわかんないよ。ねぇ、どうしてこんなことしたのかな? ――あの時、王国の謁見の間で騒いでいた兵士さん」


 そう。影で色々と悪さを企み、見事失敗に終わった人物とはお姫さまであるアヤメの横で警護していたあの兵士だったのだ。


「……なぜ、わかった? 私の計画は完璧だった。なのにどうしてわかったッ!?」


 まるで逆ギレするかのように大声をあげる。


「それってつまり自分が犯人ってことを認めたんだよね。まあいいや。外部の人間がオレがこの村に来ているのを知っているのは、あの場にいた者だけだ。そして井戸水。あれには毒が混入していた。人間にも害はあるが、あれは本来モンスターに使用するもの。しかもその毒は高価であって王国ぐらいの財産を抱えているくらいじゃないと入手することはできない。この時点で王国の何者かが関与していると断定した」


 ちなみに井戸水を毒味したのはスキル『鑑定(ジャッジメント)』によって判別するためだ。あの時はルナたちにも言わなかった。色んな人に知られると面倒臭いことになると思ったし。オレはまだまだネタばらしを続ける。


「そしてこの依頼って、あの時の様子から、君がやるはずだった依頼っぽいよね。だから、その具体的な内容もわかっていた。何の理由か知らないけど、パラライザーを上手いこと利用して、あたかもパラライザーの仕業によって村人及び、オレたちを殺そうとしたってところかな」


 ようやく長いネタばらしが終わった。なんか喋るだけで疲れたな。一方兵士さんの方は図星だったのか歯を食いしばり黙り込んでいた。


「ああ、そうだ。私はこの依頼を受けるはずだった。王国には報告していないがパラライザーが出現したという現地からの報告があったからな。アイツは遭遇すら難しいモンスターだからな。ここで討伐すれば、昇進は間違いなしだ。けどな……お前という冒険者が邪魔に入った。それも! レベル0という抜かしたクソ野郎がなッ!」


 なるほど。それが動機か。つまり、獲物を横取りされて怒り狂ってしまったということか。なんとも愚かだ。そもそも王国に本当の情報を報告していない時点で違反だろうが。


「だから考えたのさ。いいシナリオだよ。村人とレベル0はパラライザーによって死亡、駆けつけた私がパラライザーを討伐し賞賛を浴びる。だが弊害ある。誰にも見られてはいけない。だから目的であるお前を殺すと同時に、村人も殺そうとしたんだよ。これも私のため。少ない犠牲は仕方ないというわけだ」


 聞くまでもない弱者の戯言だった。耳がいなくなるほど。こんな場所にルナを連れてこなくて正解だった。よし、まあこれでこの事件の全貌も解明できたことだし、


「それで? 結局失敗に終わったみたいだけど。まあ当然、――許されるはずがないよね」


「そうかもな。このまま王国に帰ったら処罰は絶対だろうな。でも、だからどうした? パラライザーによって仕留められないのなら、自らの手で殺すだけだ。私自身の手は汚したくなかったがね」


 どうやら、まだ諦めてないらしい。ほんと、自分の立場を考えてもらいたい。まあ、レベル0が相手なら誰でも強気でやるとは思うけど。


「安心してくれたまえ。お前を殺した後は、村人も一人残らず殺し、ついでにお前の連れも殺しておこう。いい女だったから高く売れると思ったが、これも仕方ない。だからさっさと、お前を殺すよ」


 ふーん、そっか。やっぱり、クズはどこまでいってもクズというわけか。救いようのない人間とはこんな人のことなのだろう。兵士は手持ちの剣をかまえ、オレに向けて殺しにかかろうとしていた。


「死ねぇぇぇ!!!」


 バサッ!


「何っ!」


 オレはあっさりと攻撃を避ける。見た感じ、動きも剣筋も悪くない。さすがはアヤメを警護するだけの地位にいるほどだ。けど、それじゃオレどころか、ヴァルクさんより弱いと思う。


「私の攻撃を避けるとはね。レベル0にしてはいい動き……いや、ただの運か。次は仕留める!」


「もう、いきなり攻撃するとはね。だったらオレもやるよ。戦闘続きで疲れているけどね」


 オレは魔法書を取り出し、詠唱する。


鉄の剣(アイアン・ソード)


 剣を生成し構える。


「さっさとやろうか。――君を地獄に叩き落とす時間だ」

長くなったので続きは明日20時頃更新予定です。


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