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29.本気を出した〈レベル0〉は村を救う

 朝起きてみれば、異様な光景だった。村人たちがみな、昨日発症が確認された病気に感染していた。


「ご主人様、病気は治ったはずではないのですか!」


 たしかに治ったはずだ。空気感染するものでもない。間接的に感染の線もあるが昨日発症していたのはあの老人ただ1人。あるとすれば……!?


「井戸だ。井戸の水を汲んできてくれ」


「わ、わかりました」


 ルナを井戸に向かわせ、オレは急いで昨日作っておいた解毒剤を村人に飲ませる。


「あ、あの、この薬を使えば、村の皆さんは治るのでしょうか?」


 聞いてきたのはギルド嬢だった。顔色を伺うがその様子から見て、どうやらギルド嬢は感染していないらしい。ギルド嬢は心配そうな顔をする。


「完全には難しい。治すのだったら魔法を使わなければいけない」


 オレが『完全復活』の魔法を使えば完治はできるだろう。しかし、これだけ大勢の人数がいると魔力が持たない可能性が高い。


「ご主人様、井戸の水を汲んできました」


「ありがとう。……うえっ! やっぱりこの水が原因か」


 汲んできた水を一口飲むと、オレはすぐに吐き出した。味には違和感はないが何か混ぜられていた。


「ど、どういうことですか!」


「今はわからないが、これは人為的の可能性がある」


「まさかっ! いったい誰がそんな酷いことを……」


 昨日の老人の症状から見ても、これはパラライザーだけの仕業ではない。他の何かが関与している。オレはひとまず感染している村人たちに薬を飲ませ安静にさせる。とりあえず、これで緊急事態は去ったか。だが安心している暇はない。


「パラライザーによる麻痺、そして他の何かによって麻痺に対してさらに相乗する毒物を井戸水に投与した」


「これからどうします?」


「ここで病人の看病をしたいけど、オレたちにはやらなければいけないことが――」


 その時、後方から衝撃音が轟く。それと同時に村人たちの悲鳴が聞こえた。


「も、モンスターが出たぞ!」

「こんなデカいのは初めてだ!」

「だ、誰か……助けてっ!」


「ご主人様!」


「うん、行くぞ!」


 オレたちは悲鳴が聞こえるところまで駆ける。あまり被害がないといいけど。


「グオオォォォォォオッッ!!!」


 四速歩行の狼、電気が帯電するかのような(たてがみ)。それはやはりパラライザーだった。


「キャャャャャャーーー!!!」


 パラライザーは今にも村人に襲いかかろうとしている。オレは急いで魔法を詠唱する。


火ノ玉(ファイアボール)


 凄まじい音とともに攻撃が相殺される。パラライザーは攻撃で怯んでいる。そのうちに村人を救出する。


「大丈夫ですか?」


「え、えぇ……あなたは?」


「ただの冒険者です。とにかく、今ははやく逃げてください。ここは危険です」


 そう言うとオレは村人を介抱し安全なところへ逃がす。さて、これで村人の安全が確保されたな。あとは、


「そっちから出てくるとは。都合がいい。今は忙しいからさっさと終わらせるよ」


 オレは魔法書を開き、戦闘態勢に入る。あの時、もう目を逸らさず、逃げないと決めたんだ。己の力を使うのみ。


「――さあ、スキルを『創造』する時間だ」






 パラライザーの素早い攻撃は厄介だ。なんとか避けているが、こちらの体力が消耗するだけだ。それに攻撃しても、その回避能力は他のモンスターとは比べ物にならないほどだ。


「さすがだな。レベルが高そうだ」


 パラライザーはその遭遇率の低さからレベルが定まっていない。つまり今までのモンスターとは違い例外だ。どんな攻撃をしてくるかわからない。パラライザーは飛び上がり、鋭利な爪を使って攻撃を仕掛ける。オレはなんとか対応して後方へ下がる。


「ガラ空きだぞ! 『電撃一閃(ライト・セイバー)』」


 放たれる攻撃は、――パラライザーは身体の電気を放出してバリアを展開し、オレの攻撃を防ぐ。なるほど、攻撃だけではなく、防御としても使えるのか。


「なら、近接ならどうだ!」


 スキル『瞬速(アクセル)』を使い、最速で移動し、ゼロ距離からの攻撃をする。


氷の弾丸(アイス・ショット)


 パラライザーに攻撃が通るが、思っていた以上に皮膚が硬く、致命傷とならない。このままだと敵の攻撃範囲だと思い、すぐに離れる。


「はぁ、厄介だな。その帯電している身体に硬い皮膚、オマケに突出した素早さ。今まで出会ったモンスターのなかで一番手強いな」


 だが、ここで負けるわけにはいかない。オレは魔力を大きく消費し大技をくりだす。


無限(インフィニティ)()武器(ウェポン)


 詠唱すると、オレの上空から幾つもの剣や槍、斧などといった武器が生成される。そして手を振りかざすと、武器はホーミングのようにパラライザーに降りかかる。無数の攻撃をすることによって行動範囲を狭め、パラライザーが得意としている回避能力を無意味にする。パラライザーは攻撃を避けるが、全ては避けきれず攻撃をくらう。


「それを待ってたのさ!」


 隙を逃さず、オレはパラライザーに向かって地を駆ける。それに気付いたのか、帯電していた電気を放出してパラライザーも範囲攻撃をする。だが、オレは攻撃範囲をも迷わず突っ込む。まるで自殺行為に見えるが、


『危機回避』


 ここで常時発動スキルが役に立つとは。ここまで溜めておいてよかった。スキルにより攻撃を回避し、再びゼロ距離接近する。さっきは効かなかったが、今度こそいける!


「さっきの攻撃で傷ついた皮膚はまだ再生してないだろっ!」


 あの攻撃はパラライザーの行動を制限するだけではなく、あの身体に少量のダメージを入れることによって、確実に致命傷をくらわせる。


「案外強かった。だが、オレはこんなところで負けれないんだ。『地獄の業火(ヘル・インフェルノ)』」


 その紅い炎は火柱なり、天空まで届くかのようであった。最大級の魔法攻撃をモロにくらったパラライザーは吹っ飛ばされ、そのままとどめを刺した。


「はぁ、なんとか終わったか」


 これで村は救われたのか。


「ご主人様!」


 先頭が終わるや否や、ルナはオレの元に真っ先に駆け寄る。


「お怪我はありませんか!? 本当に……あのモンスターをたった1人で倒すなんて」


「今回ばかりは簡単とはいなかったけどね。でも、やったさ」


 賞賛の声はルナだけではなく、助けた村人たちも声をあげていた。


「なんだよ、あの冒険者は!」

「見たことない魔法使っていたぞ!」

「そんなのどうでもいいだろ。とにかく、この村を救ってくれた冒険者だ」


 みんなは色々と騒いでいるが、とりあえずこうしてこの村の危機は〈レベル0〉の冒険者により救われたのだ。


「ルナ、ちょっと用があるから、ここを頼めるかい?」


「えぇ、構いませんが。ご主人様はどちらに?」


 突然の頼みに困惑するルナ。


「ちょっとね。やるべきことがあるから」


 そしてオレはその場を後にするのだった。









「――このまま生きて帰れると思ったのか。散々村の人たちを苦しませて、お前だけが素直に帰れると思うなよ」


 ハルトの口からこぼれた言葉。それは村を離れてから数分後のことだった。


「面白い!」


「続きが気になる!」


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