27.悪魔が残した2つの真実
「なんであんなに期待されてるのやら……」
「まあいいじゃないですか! それはご主人様が強いってことですよっ!」
王国を飛び出し、オレとルナは王国から借りた馬車に乗り、目的地である辺境の村を目指していた。ゆらりゆらりと馬車は開けたそ平原の街道を進んでいた。
「あの目、絶対それだけじゃないと思うけどね」
アヤメから課せられた試練、といってもただの調査だ。「モンスターが現れ、確認できたら討伐しろ」って言われている。王国兵とはこういうものなのだろう。誰かの下につくのはもうあのパーティで散々やっていたから慣れていた。
「それにしても最近は物騒ですよね。変異種のモンスターがたくさん出てきて」
「そうだなぁ」
たしかにルナの言う通りだ。オレが1人で旅を始めてから出会ったモンスターの大半は変異種だ。本来、そんな多く現れるはずがない。理由はわからないがオレたちが知らないどこかでなにか起きているのだろうか。
「でも、オレたちがやることに変わりはない。今は目の前のクエストに集中しよう!」
細かいことは気にせず、ただ馬車はゆっくり進むのだった。
「なんか、なんともありませんよね」
「そうだね。普通の村って感じだけど」
ようやく辿り着いた場所は、他の村と何ら変わりなかった。本当にここに変異種が現れたのだろうか。
「どうします? このままここにいるわけにもいかないですし」
そうだな、といい、ひとまず考える。が、旅に来たらやることは変わらない。オレはルナにまるで覚えているか試すように、
「ルナ、『旅の鉄則』は覚えているか?」
『旅の鉄則』とは、この前の村にて3日ほど滞在していたとき、あまりにも暇だったため、役に立つかわからないけど知識を叩き込んでいた。大半が旅の常識とか戦闘のやり方とかだけど。そんなどうでもいい話をどうやら覚えていたらしく、
「はいっ! もちろんですよ。『まずは寝床を確保せよ』ですね!」
「正解っ! というわけで宿を探します。ルナ隊員、わかっているな?」
「はいリーダー、まずは宿を探しますっ!」
こんなくだらない茶番を繰り広げる呑気なハルトたちだった。
宿を見つけ、寝床は確保したがこれで一日が終わるのは勿体ないのでギルドにむかった。超小規模なギルドだけど、情報を聞くくらいはいいだろう。オレはギルド嬢に聞く。
「王国から来た兵士だけど、ここで何が起こったか教えてもらっていいかい?」
質問すると、資料を片手に調べていた。
「はい、情報によると……どうも人の言葉を喋るとか……あくまで噂なのであまり鵜呑みにしない方がよろしいかと」
「えっ! モンスターって言葉を喋るんですか?」
驚いたようにルナはオレに問う。
「ああ、オレもよくはわからないけど、そういうモンスターもいるって情報は聞いたことはあるけどね」
「ギルドからはこれ以上の提供はないですね。申し訳ありませんが、あとは調査をお願いします!」
「まあ、これが目的だしね」
「頑張りましょうっ!」
ハルトたちは気合十分で挑むのだった。そしてハルトは、――なにかの存在に薄々気づいているのだった。
〜王国・謁見の間〜
王国から異例のレベル0が旅立ち、ふたたび静かな空間となっていた。そこに残っていたヴァルク・レオーナは姫であるアヤメに質問していた。
「姫さまは、なぜ彼をあんな村に行かせたのでしょう?」
アヤメは退屈そうな顔をしながら、
「気まぐれだ……と言っても、信じないのはわかっている。正直、われとしては楽しみだ。この退屈な世界に革命をもたらしてくれるかもしれないからな。ただ、王国としては手放しては置けぬ存在だ」
「それはつまり……?」
アヤメは窓の外を見つめ、神妙な顔をし、
「――ヴァルク、おまえは神を信じるか?」
「神……ですか。いえ、私はそういう胡散臭い話など信じてないですよ。それに、それはあくまで神話であって、我々の世界には関係あるはずがないですから」
ヴァルクは否定した。王国の中に神話を信じ、信仰している教団もあるが、世間から見れば異常者扱いされている異教の存在。
「それは同感だ。われも信じてはおらん。だが、一冊の神話にはこんな言い伝えがある」
そしてアヤメはそばに置いてあった本を広げ、読み上げる。
「『神は下界に二つの真実を残した。一つは己のために全てを捧げる悪魔。もう一つは、誰かのために全てを賭ける悪魔』とな。われが唯一、興味を持った話だ」
「神が残したのは悪魔なのですね」
神が残すのなら天使などだが、その神が残したのは全く違う悪魔だった。
「皮肉な話だ。下界の動物に興味を持った神だが、自分は神の掟により下界には行けない。だがら魂を送ったのだ。相対する二つの魂は、架せられた己の欲求のため、いつからか真実に縛られた悪魔となった。……まあ、自己欲求を求めすぎると周りが見えなくなるという作り話だ」
「それで、ここまで長々と話されて、姫さまはなにを言いたかったのですか?」
ヴァルクには、姫さまが言う話の本質を理解することができなかった。
「無限の力は、有限の命すらも蝕む。ハルトはこの世界で何を見るのか……気になっただけだ」
そう言うと、アヤメは本をしまい、自室へと戻っていった。
「全く、姫さまっ! まだ勉学してないでしょう、早くしてくださいっ!」
「ぎくっ! 嫌だ! 絶対にしないぞっ!」
その光景は変わることなく、相変わらずの王国だった。




