25.お姫さまと共に、――旅は始まる
これは緊急事態である。知らない女の子が今、目の前にいる。「お金持ちの超絶可愛い女の子」と言ったのだ。こんな展開などあるのだろうか。これから覚悟を決め、旅を再開する予定なのに、気が狂ってしまいそうだ。
「どうした? ふふっ、まさかそんなにわれの美貌に見惚れるとは……は、恥ずかしいぞっ!」
うん、違うから。はてさて、こんな森深くになんで子どもがいるのだろうか。ここは聞いてみるしかないか。
「えっと、アヤメちゃんだっけ、なんで君はこんなところに?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた。答えは簡単じゃ。それは……家出だ!」
いやー、そんなに胸張って言われても困るし、自慢げに言うことでもないよ。
「アヤメちゃんはなんで家出なんかしたの?」
「まあ話せば長い。それとアヤメでよいぞ」
そこからアヤメによる長いお話が始まる。オレとルナは真剣な眼差しで話を聞く。
「あれは数日前のことだった。お目付け役が仕事でしばらくいなくなると言ってな。そやつは毎日『勉強なさい!』などとうるさくてな。いい機会だったし、そやつがいない間に逃げてきたって話だ。そしたらこの森で迷ってしまい、途方に暮れていたその時、おまえたちがいたのだよ。これもわれの運が素晴らしいって証拠だな!」
「……えっと、続きは?」
「ん? もう終わったぞ。何を期待している、これ以上掘っても面白い話などないぞ。つまり、われをこのまま王国まで護衛せよって言っているのだ」
なんか壮絶な過去があるのかと思ったら、本当にただの家出とは。オレとルナはアヤメに聞こえない場所まで移動しこっそりと、
「あ、あのご主人様。どうします? 私たち、王国に向かうのではありませんでした?」
「んー、まあ、行く場所は一緒だし、それに親御さんだってきっと心配してるだろうしね」
そもそも、こんなところに女の子を1人にはできないし。
「で、おまえたちはそこで何コソコソと話しておるのだ?」
「わかったよ。オレたちは君と一緒に王国へ向かうよ。ちょうど王国に用があったしいいよ」
「うむ、それでこそ冒険者だ。せいぜい、われに怪我をさせぬようにな!」
「ご主人様……なんですかあの態度? ちょっと叱ってきましょうか?」
ねぇなんでそんな笑顔なの!?怖いからとりあえずその右手の拳を抑えようか。
「まあまあ、ちょっとの間だけど、パーティみたいなものだしね。ほら、仲良くしようよ」
「まあ、ご主人様が言うのなら……」
そう言ってルナは拳を収め、移動の支度を始めるのだった。はあ、これだから女の子は怖いんだ。改めて女の子には逆らえないことを悟ったハルトだった。
「で、ハルトとルナはどういう関係なのだ?」
「一応はパートナーってことでいいのかな?」
「なぜ疑問形なのだ……まあいい、ルナはハルトとは?」
「そうですね。私は奴隷であり、一生ご主人様についてゆくと決めた身ですから!」
そう言い、なんかすっごい目線を感じる。圧がすごい……。
「オレは奴隷って思ってないけどね。1人のパートナーとして見てるさ」
「ご主人様……!」
「あのー、もうよいか? われが質問したのが悪かったから。それでなぜ旅をしているのだ?」
旅の理由か。具体的は詳細は言えない。妖精族であるルナを守るためもあるし、もう一度セレシアに会わなきゃいけない。
「まあ、一番の理由は楽しく暮らしたい、かな。そのためには冒険者としてお金を稼がなくちゃいけないからね」
「冒険者とはさぞ大変なんだろうな」
「そういえば、アヤメはどんなお家なの?」
「われか? われの家は大きいな。使用人もたくさんいる。それゆえ逃げ出すのが大変だった。なんせ逃げたらお仕置きがあるからな。あれはわれにとって人生の試練だった……」
どうやら家出に相当な覚悟をしていたようだ。……なんてくだらないのか。
「その分、報酬は弾むぞ。お前たちを一度家に招待してもよい」
「それはどうも。ってついたな」
歩きながら話していたせいか、気付いたらもう王国についた。厳重な壁で守られており、各入り口には王国兵が配備されていた。検問は問題なく突破できた。
入口を抜け、そこに広がってる世界を見て、オレとルナは息を呑む。
「これが……王国か」
「すっごいです! 私、こんなおっきな街は初めて見ましたよ!」
オレがいた街とはレベルが違った。人口の多さ、たくさんの種族、賑わいが比べ物にならないほどだ。まさからこれほどとは。
「われにとっては日常だからなんの感情も抱かないな。ほれ、こっちだ」
俺たちは言われるがまま、アヤメについて行く。しばらく歩くと王国を象徴とする城が見えてきた。たしか、ヴァルクさんには城に来てくれって書いてあったっけ。ちょうど方向が一緒なら都合がいい。そして城の前へと到着する。
「近くで見ると迫力が違うな」
「まるでお姫様がいる感じですね!」
「そんなに凄いか? われはなんとも思わんが」
アヤメはずっとここで育ってきたからなのかあまり思うことはないらしい。とにかく、今は親御さんだって心配してると思うし、先にアヤメを送り届けよう。
「で、アヤメのお家はどこにあるの?」
「ここじゃよ」
なるべく近かったからいいな。ちゃんと逃げないように徹底しろと言わないといけないし。……ん?
「えっと……お家は……?」
「だから、ここじゃよ」
そしてアヤメは、城を指したのだ。オレが言おうとしたら、横からルナが口を開く。
「アヤメちゃん、ご主人様を困らせたらいけないでしょ。はやくお家を教えてください」
その時、城から使用人が現れる。その使用人は走りながらこちらへ迫ってくる。歓迎にしてはだいぶ慌てているようだが。だが、次の一言で全てが解決する。
「ア、アヤメお嬢様! どうして逃げたりするのですか! 心配しましたよ!」
「すまない。もうしないから許してほしい」
その光景を遠くから見つめるオレとルナ。
「ご主人様、今『お嬢様』って聞こえたのですが、聞き間違いでしょうか?」
「いや、オレも聞こえた」
そうハッキリと。
「ん? 何をボケっとしている? われはこの王国の一番偉い人なのだ! ……そういえば言ってなかったな」
王国に到着し早速お嬢様に遭遇、いやもっと前から会っていたとはな。これは、なかなか面白い旅になりそうだ。
こうして、新たな出会いを重ね、ハルトたちの旅は新たなスタートを迎えるのだった。
※作者の独り言
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次回は王国編の始まりですよっ!
……誤字脱字ほんとにごめんなさい<(_ _)>
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