22.ライアンパーティの行方とその結末 ⑪ 〜北門防衛戦〜
「どうして今、ハルトの名前が出てくる!?」
この場において、ハルトは関係ない。なのにシモンズはその名前を口にした。その忌々しい名前を。
「はぁ、そうか。最初から話さないといけないのか。まあ仕方ない。これも仕事って言うことで。でもこのモンスターたちを片付けながらね」
そう言うとシモンズはゴーレムに対して構え、正拳突きをする。その威力は、俺たちとは比べ物にならないほど。
「スキル『深淵の拳』」
ゴーレムは砕け、一瞬にして倒したのだ。噂で元冒険者と聞いたが、まさかここまでとは。
「これでも前はレベル4の冒険者だったんだよ。さて、どこから話すかね。それじゃ、君たちの実力についてのお話からだ」
横で戦っていたガリアが対峙していたモンスターもあっさりと倒し、この北門はシモンズの独壇場となっていた。
「なんだよ、話って?」
シモンズはモンスターを相手にしながら話す。
「結論から言うと、君たち、セレシアを除くパーティの強さはもはやレベル2と同等だ。そりゃゴーレムが倒せるわけがない」
何を言っている? たしかに俺はレベル3の冒険者だ。それも上位の。あともう少しでレベル4へと到達できるのだ。
「いいや、俺たちはたしかにレベル3だ。ギルドカードにも書いてある……」
「それは3年前の話だ。お前たちは元々、セレシアのおかげでギルドからの評価が良く、実際に功績もあったからレベル3だった。けどな、お前たちは気付いていないだろうさ。ハルトが加わってから、いつも倒しているモンスターが、半分の力で倒せることにな」
そうだ。ハルトが加わってから、俺たちはいつもより楽にダンジョン攻略ができるようになった。
「けど、それは俺たちが強くなったからで!」
「本当にそうか? 仲間が加わるだけでいきなり強くなるのか。あったとしたら、支援魔法でバフされたんじゃないのか」
「……ッ!」
たしか、ハルトは前線で戦えるヤツじゃなかったから、支援魔法やアイテムといった後方を担当していた。レベル0に大した魔法が使えるはずないと思い、支援魔法などないのと変わらないと思っていた。
「ようやく気付いたか。けどもう遅い。お前たちはあたかも自分の力だと思い込み、鍛錬などをサボった。そして3年の月日が流れ、レベル2まで落ちたってわけだ」
納得できない。できるはずがない。だってレベル0だぞ!そんなヤツにそれほどの力などあるわけない。
「そんなわけあるか! 俺は最強パーティのリーダーだぞ! 大体、あんなレベル0にそんな魔法が使えるわけないだろうが!」
「ああ、たしかにそうだ。証拠はない。改めてスキルを調べない限りな。でもな、周りを見てみろ。お前の行動を見てきた冒険者がここにいる。本来レベル3であるお前が、同等のモンスターを倒せないんだ。ライアン、お前がレベル3じゃないって証拠はこれ以上ないだろ」
俺は言い返すことができなかった。ガリアも驚いたまま言葉を発することはなかった。そうだよ、アイツが悪いんだ。全て俺の人生を狂わせたハルトが。
「あぁそうかよ。だからなんだよッ! それがどうした! 全部アイツが悪いんだよ。俺の人生を狂わせた。そうだ、さっき死んだ冒険者も悪い。囮として役割を果たせなかったんだ。アイツがもっとできれば俺はゴーレムなんか簡単に倒せた。何もかも全部だ! ここにいる冒険者が悪いんだよ! ……グハッ!」
そして俺の視界はシモンズではなく、空を見ていた。何が起きた……なんだか頬が痛い。触ると赤く腫れている。あ、血だ。誰の血だ?俺の口から出ているのか。俺は殴られたのか、シモンズに。それすらも俺には理解できなかった。
「お前みたいなクズが冒険者を口にするなッ! 見てみろ周りを。お前を信じ、慕ってきた同じ冒険者だ。誰も殴られたお前を助けるやつなどいない」
そこにいる冒険者たちは助けることなく、ボソボソと話していた。唯一駆け寄ったガリアも、何も口にしなかった。
「その痛みを覚えたら、さっさと支度をしろ。ライアン及び、パーティメンバーはもうここにいる価値などない。お前たちを追放処分とする」
ついこの前、俺は1人の冒険者を追放した。そいつは使えなくてクズで、魔法もろくに使えないレベル0だった。それでいてセレシアとは仲が良かった。だから追放した。俺の人生には邪魔な存在だった。しかし、そのレベル0は知らぬ女を連れ、ドラゴンを倒していた。さらに、俺たちはレベル0の支援魔法でここまで駆け上がったらしい。全員で蔑み、嘘をつき、極限まで心さえも痛めつけたはずなのに……
――今度は、俺たちが追放される番だった。
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