19.暴走するルナさん&それは傲慢な”金髪幼女”でした
「ごめん、今日はここで野宿でもいいかい?」
「えぇ、構いませんが……」
あれから微妙な雰囲気が漂っていて、オレとルナの間には溝ができていた。移動中の口数もいつもと比べて少なくなっていた。
「そうだ。手紙を見たらさ、後で王国に来いだってさ。姫様がオレたちに会いたいらしい」
「そうですか。では、出発も早くしないとですね」
ここからそう遠くもないわけじゃないが、王国に呼び出されておいて遅刻は厳禁だ。だが、今のオレに、感謝の言葉を受け取る覚悟などないのだ。いつまでも孤独に生きて、死んでしまった方がマシなのかもしれない。
ダラしない顔をしているオレに、ルナは心配そうに様子を伺う。
「ご、ご主人様……何かあったのでしょうか?」
オレはこんな女の子にさえも気を使わせるほど愚か者なのだろうか。
「いいや……なんでもないさ」
またしてもオレははぐらかそうとする。自分の過去を肯定できずに。その時、ペシッとルナは顔を叩き、勢いよく立ち上がる。
「ほんの少しだけです。ご主人様と一緒にいて色々わかりました。だから……本当のことを話してください! 私に隠し事などあまったれるなって話ですっ!」
オレが見たこともないような顔と態度で見てくる。思わず口を開いたまま静止してしまう。
「あ、あのー、怒って……る?」
「当然です! そんなご主人様なんて、私のご主人様ではありません! 私の知っているご主人様はもっとハッキリしていて、強くて、困っている人を助けて、そんな私の理想ばかりですが……それが私のご主人様です」
「オレはそこまでいい人じゃないさ。今思えば、今まで身勝手な行動だったし」
するとオレはルナに指をさされる。
「いいですか! この世界にいい人なんかいませんよ。力を利用して悪いことをする人だっています。でもいいんです。だから……今は私にとっての『いい人』になってください。そして、私に全部話してください」
そうしてルナはオレに手を差し伸べる。はぁ、とため息がこぼれてしまった。さすが『妖精族』は何をするかわからない。人の心を動かすようなそんな力でも持っているのだろうか。そして、オレはゆっくりと手を握る。その手はとても暖かった。
「なんだか、最初と出会ったときと立場が逆だな」
「ふふ、たしかにそうですね。今度はご主人様にとって私が、英雄となる番です!」
オレは全て打ち明けた。パーティから追い出されたこと、仲間とはどのような関係だったのか、どのような仕打ちを受けていたのか、全てだ。それを聞いたルナは、なんかすっごく頷いていた。……え、何がわかったの?
「ご主人様、これは私個人の感想なのですが……それってつまりご主人様の力なのに、それをあたかも『俺たち強ぇぜ!』みたいな解釈で捉えていた仲間が悪いのではないかと思います。ライアンさんとやらはただのクズですね! えぇ、クズです。ガリアさんはなんか立ち位置中途半端な人ですね。ピスカさんは同じ女としてはどうでもいいです。セレシアさんはなんか私のライバル的な存在のようですね。これは争いが起きる運命か否か……」
あっれー、ルナってそんな早口でしゃべるっけ。なんか最後のセレシア辺りから聞き取れなかったが。
「でも、ご主人様にだって悪いところはありますよ」
「それって例えば?」
ルナは顎に手を当て座り、考える姿勢になった。
「そうですね。まず、ご主人様もちゃんとそのスキルを見せるべきですよ。それが大したものじゃなくてもです。どうせクズっぽいライアンさんには通じないと思いますが」
ルナにとってのライアンの評価酷くないですか……まあわからないこともないけど。
「それと……これは一番大事なのですが、ご主人様の他の女の子の影があったこと……じゃなくて、ちゃんとセレシアさんからも聞いたんですか? 『どっか行って』って。助けた人が切り捨てるなんてそんな話、あるんですかね」
たしかに、オレはライアンから伝言として言われた。直接的に言われた覚えはない。あの時は、話しかけてもあまり喋ってくれなかったから、てっきり嫌われたと思い、脳内でそう判断したのか。
「ルナに言われてみればそうかもしれない」
「少なくともセレシアさんの言葉は本音かどうかはまだわかりません」
そうか、オレは自分の過去を否定的に捉え、逃げていたのか。
「でも、ここから決めるのは、ご主人様次第ですよ」
自分次第か。思えば、ずっと目の前から逃げてきた。仮面で偽り、全てなかったことにしようとしていた。だからオレは決める。真っ向から、ライアンたちに関わらないと。
「なんだかルナのおかげで、オレがやるべきことがわかった気がする。今は目の前に集中しないとな!」
「それでこそご主人様です!」
心に誓ったのだ。この人生をイージー攻略するために、ケジメをつけて、――もうお前たちと関わらないと。
それからいつものようにたわいもない話をして、いつの間にか眠ってしまっていた。
「……きろ! ……おい、起きろっ!」
なんだか、朝から騒がしいな。眠たい目を擦り、テントから出ると気持ちいい朝日が身体を照らす。それと、なんか人影があるのだが。
「ん? えっと……」
そこにはルナでもない全く知らない人がいた。
「ふんっ、遅いではないか。随分と待ちくたびれたぞ」
上からの態度で接してくるその人は明らかにオレより背が小さい。
「われは道に迷った。よって、お前たち冒険者に命令するのだ。我を連れてくのだ!」
「……ご主人様? どうかなさいました?」
声で目覚めたのか、ルナが起き上がってくる。
「おはよう、いや、なんか知らない人がいるんだよ」
「ぬっ! 知らない人とはなんじゃ! これでも我は偉いのだ!」
んーと、よく見ると背は小さくて、女の子で、金髪ツインテールが妙に目立つ。着ている服はまるで貴族のような赤のドレスだ。
「誰ですかこの幼女?」
すると女の子は腕を組み、
「よ、幼女とはなんじゃ!? ……まあよい。この煌びやかな美貌がわからないのも仕方なかろう。ふふんっ、われの名はアヤメ、お金持ちの超絶可愛い女の子じゃ!」
こうして、新たな自称、超絶可愛い女の子と出会うことで、ハルトたちの新たな旅が始まるのだった。
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