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1.そして〈無能のレベル0〉は追放される

新作です。しばらく連続投稿します。

 ここはとある有名な街、人口も多い。オレはいつものようにギルドに集合すると、そこはすでにパーティメンバーがいた。駆け寄るがまるで知らん顔をし、まるでオレがいないかのような扱いだった。果たして何かしただろうか?あいにく見当がつかない。だが黙っているわけにもいかないので軽く挨拶をする。


「やぁ、随分と早いね。何かあったの?」


 ようやく気付いたのか、パーティリーダーのライアンが振り向き、オレに告げるのだ。



「よぉハルト。早速で悪いが、お前は今日で終わりだ。パーティから出てってくれ」



 突然の宣告。オレには理解ができなかった。オレは今までこのパーティのメンバーとして共に行動してきたのだ。切り捨てられたような言葉にオレはなんとか返す。


「それって……どういうこと?」


「そのままの意味だよ。俺たちのパーティにお前という存在はいらないんだよ。今日限りでお前の冒険者人生はおしまいってわけだよ。そうだよなぁ?」


 ライアンは仲間たちに問いかける。そして声を上げたのは前衛の戦闘を担当する拳闘士のガリアだ。この街では有名だ。鍛え上げられたその身体は男女問わず人気者だ。


「そうだな。ハルト、お前はもう用済みだ。これ以上、お荷物を担いでダンジョンを潜り続けるのは無理だ。それに弱い奴と一緒にいるのは耐えられない。レベル0のお前はここで切った方がいいという判断だ」


 この世界には冒険者のランクが存在する。レベル0〜5まで存在し、俺はその最底辺に位置づけられていた。だが俺も少しはこのパーティの為に頑張っていた。


「け、けど、オレだって荷物持ちとか戦闘のサポートとかいろいろやっていたし……」


 ライアンはオレの言葉を遮るように、


「おいおい、笑わせるなよ。まさかそれで冒険者やってたとでも言うのかよ。いいか、俺たちは最初からお前のことを同じ仲間だと思ったことなんかねぇーよ。だいたい俺たちレベル3が最底辺と同じ飯なんか食えるわけないだろ」


「そうよ。私はあなたといるだけで毎日ストレスが溜まったわ。ここでお別れできて嬉しいわ。さようなら。さっさと私の目の前から消えてちょうだい」


 そう俺を汚物かのように見つめ口を開いたのは魔法使いのピスカだ。随一の火炎魔法の使い手で、この街には何人もの弟子がいるほどだ。性格は少々荒いが、いつもリーダーのライアンにはベタベタとくっついて愛想を振りまいている。


「じゃあオレはこれからどうすれば……?」


「知るかよ。もう好き勝手生きていいぞ。まあ、お前みたいなレベル0の雑魚を拾ってくれる優しいやつなんて俺たち以外いないからな。今までお前と組んでたのはセレシアが仲間にするって言ったからだし」


「それはみんなの意見だとしたら今セレシアはどこに?」


 セレシアとは、こんなレベル0のオレでも対等に接してくれた冒険者だ。その知名度はこの街だけにはとどまらず、世界に名を馳せている。なんとこの街で唯一のレベル5であり、熟練された剣技でモンスターを圧倒し、『剣姫』と呼ばれる存在だ。


「あいつなら今ギルド長に呼ばれて屋敷にいる。伝言で『あなたを拾った私が馬鹿だった。さっさとどこかに行って』だとよ! どんな気分だよ。俺たちは捨てられた経験がないからわからないんだよ!」


 ライアンたちはオレを嘲笑いながら見下す。そうか。セレシアにすら見捨てられてしまったのか。なら、オレがもうここにいる必要はないようだ。


「そうか。みんながそう言うなら、俺は出てくよ」


 唇を噛みしめ、それがオレの口から零れた言葉だった。3年だ。3年間も、オレはこのパーティのために必死に雑用をした。これもパーティのためだとそう信じて。


「あ、そうだ。当たり前だが今月の報酬分は渡さない。まあ最初から働いてないやつに出る報酬なんかないけどな」


「で、でもっ、それだとオレは生きていけ……」


 ただえさえオレには配当が少なく、節約してようやく生活ができていた。それがないとなると、生きていくことすら怪しい。


「仕方ないな、ほらよ」


 ぽいっと、ライアンがオレに対して袋を投げる。おそるおそる中を見ると、そこにはハエがたかった食べ物が入っていた。


「俺たちが残したやつだ。それでも食って長生きしろよ。ハハッ!」

「あるだけでも感謝しろよ」

「ちょっと〜! ぷぷっ、ライアン様ったら笑わせないでよ〜!」


 オレは袋をすぐに閉じる。ああそうか。これがオレの人生なのか。誰にも相手にされず全て妥協して生きてきた。だから、ただ目の前のことに精一杯生きるのはやめだ。


「どうした? 早く行けよ。ここはお前がいるべき場所じゃないからな」


「そう……だね」


 オレはこんなパーティについてきた愚かさを胸に、後ろを振り向き、ギルドを去っていく。背中越しには元パーティメンバーが高笑いしていた。まるでオレを愚弄するかのように。


 信じたオレが馬鹿だった。今まで多少当たりが強かった時もあったが、それでも同じパーティとしてダンジョン攻略をしてくれていた仲間たちだ。だがそれも今日で終わりだ。レベル0の冒険者など、どこのパーティにも雇われない最底辺。生きることすら難しい。


「さて、ここからどうするかな」


 しかし、なぜかオレは解放感に包まれてきた。パーティ追放されたことで縛りがなくなったのだ。つまり、ここからは自由だ。前は何も出来なかったが、レベル5の『剣姫』がいたパーティにいたんだ。生き残るための術は学んでいる。


 何より、オレにはこの分厚い本がある。神様から授かった魔法書が。オレはもうこんな退屈な人生を過ごしたくない。もっと楽に生きよう。


 例えばちょちょいっと、イージー攻略するかのように。


 ついこの間15歳になったオレはこの街を抜け、新たな旅を始めるのだった。




 もちろん、この後ライアンのパーティが大惨事に巻き込まれるとは知らずに。

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