18.交差する二人&ライアンパーティの行方とその結末 ⑧
振り返ると、そこにライアンがいた。どうしてここにいるのか。考えたが、おそらく持ち場を離れたのだろう。しかし、一番厄介なのはここを見られたということだ。他の仲間は見当たらず、どうやら単独行動しているようだ。
「おい、なんか言えよっ! お前、どうしてこんなことろにいるんだよ」
オレは黙り込む。本当は関わるつもりなどなかったからだ。
「ご、ご主人様……?」
ルナは不安そうな顔をする。当然だ、今の俺の顔はどうなっているだろうか。きっと醜い顔をしているだろう。でも、ルナに心配はかけたくない。オレは優しく頭を撫で、
「大丈夫、ちょっとここにいてね」
オレはゆっくりとライアンの方を向く。正直、顔なんて見たくもなかった。
「久しぶりだね、ライアン」
「なんで、お前がこんなところにいるんだよ。使えないレベル0がどうして……それに、このドラゴンの死骸はお前がやったのか!?」
「……そうだよ。オレがやったさ」
「ありえねぇ! だってお前はクズで何もできなくて、ただセレシアに拾われただけの野郎だ! そんなやつがこんなモンスターを倒せるはず……」
そう興奮しないでくれ。わかったよ、全て話すから。でもお前たちは信用してくれなかったじゃないか。だから今度は、もっとわかりやすく。
「――これが現実だよ。君たちはオレを捨てた。それは変わることはない」
ただそう告げ、オレは後ろを向き、ルナの元へ寄る。
「そうだ。セレシアに伝えておいてくれ。ありがとう、ってね」
オレは仮面を付け、ルナを抱え、スキル『跳躍』を使い、その場から立ち去る。
「ご主人様? 大丈夫ですか?」
「心配ないよ。ちゃんとけりをつけないといけないと思っただけさ」
オレは急いでヴァルクさんのところへ戻るのだった。
「ん? お前はハル……ううん、あの冒険者じゃないか」
咳払いをし、なんとか誤魔化していた。ちゃんと名前は他言無用ってお願いは守ってくれていたようだ。オレは討伐したことを伝える。どうやらここも戦場になっていたようだ。おそらく、王国は最初からこの事態を想定してここまで動員させたのか。
「ネビルドラゴンなら向こうの森で死んでますよ」
「それは本当か! であれば、早速向かい死体の回収を」
「それなんですが、急な用事があるのでオレはここで失礼します」
「待て、どうして今すぐここを離れる……そうか。その目は戦士の目だ。なにかあったのだと察する。なら構わない、あとはこちらがなんとかしよう」
説得するのに時間がかかると思ったが案外あっさり行けたな。しかしヴァルクさんに呼び止められる。
「そうだ、用事が済んだなら、後で王国に来い。あのモンスターを倒したんだ、姫様も会いたがるに違いない。この紙に日時を記した。お前が良ければ、来るといい」
そして手紙を渡される。オレはポケットにしまい、
「ありがとうございます」
一礼してその場を立ち去る。
「ご主人様、これからどこに?」
「遠い場所だ。誰にも邪魔されないところへ。ついてきてくれるかい?」
「はいっ! ご主人様とならどこまでもと言ったではないですか!」
ともかく、オレは一刻もこの場から離れたかった。
〜パーティリーダー・ライアン〜
「ハルト……」
まさか、ここにいるとは。そばにいる死骸は本物だ。本当にアイツがやったのだとしたら……いや、ありえない。アイツにはそんな力など存在しないのだ。
「どういうことなんだよッ!」
俺は感情に任せ、地面を蹴る。よく見るとそこは大きな穴が空いたクレーターとなっていた。同時に、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。
「おーい、ライアン、大丈夫か?」
「ライアン様〜、どこにいるんですか!?」
そこにはさっき置いていったはずのパーティメンバーがいた。俺が振り返るとガリアたちは駆け寄る。
「ライアン! 大丈夫だったか? こっちはモンスターがたくさんきて大変だったんだよ。ライアンの方は……えぇっ! なんだよこれ。ドラゴンの死骸……まさかライアンが!?」
驚くように俺に問いただす。それも当然だ。俺が1人ここにいてこんな死骸があったら驚くだろう。
「……いや、俺じゃない。他の誰かだ。俺が来たときにはもう終わってた」
言えるはずがなかった、本当のことなど。俺の予定ではハルトは落ちぶれ、最底辺の暮らしをしている中、俺はセレシアと幸せな生活をするのだ。だが予定は狂い、ここにいた。生きてちゃいけないやつが。それに、ここで生きていたと伝えると面倒になりそうだ。
「……そうか」
「そっちは大丈夫だったのか? 俺の方にもモンスターの大群がきたけど」
「ああ。セレシアが全部片付けてくれたんだ」
「もう、肝心なときにいないんですからライアン様ったら」
その無双した本人はつまんなそうな顔をしているが。
「セレシア、これからどうすればいいと思う?」
「……とりあえず、王国の人と合流した方がいいんじゃないかな」
「そう……だな」
どうしてリーダーの俺が聞いたのか自分でもわからない。動揺しているのだろうか。これじゃダメだ。気合いを入れ直す。
「よしっ、ひとまず戻るぞ。もしかしたら他のところはまだ戦闘しているかもしれない。ついでそこに華麗に登場して王国に認められればいい功績だ!」
今は目の前のことに集中する。今度こそ、自らの手でハルトを潰すと、そう心に誓った。
「面白い!」
「続きが気になる!」
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