16.決して交わることのなかったはずのハルトとライアン
「改めて、作戦事項を確認する。ここから前方半径300メートルをブロック分けし、それぞれ冒険者たちは指定された配置についてもらう。今回は全員がパーティのため、基本的にパーティで行動してくれ。また、何が起きるかわからない。警戒を解かず、常に万全の状態で戦闘ができるように準備してもらいたい」
翌朝、ヴァルクさんを筆頭に討伐隊は動き出した。重装備をした冒険者たちがそれぞれの場所へ向かう。1ブロックにつき1パーティといったところか。やはりこれほど総動員してやるとなると相当な気合いを持って皆は望んでいるのだろう。
「ご主人様、私たちはどこに向かうのですか?」
「地図を見ると、ここから北東にある森の中になっている。そこにいって、あとはひたすら待つだけだ」
他の冒険者は開けた平原だったり、滝がある渓谷の周辺だったりと様々だ。今回オレたちが担当する森は、木々で囲まれているからネビルドラゴンがくることはないだろう。
「それでは、無事ここに戻ってくることを願う。作戦、開始ッ!」
最後の言葉をかけ、本格的に始まった。
「なんか緊張しますね。こんな大きな作戦となると」
「オレもここまでのは初めてだからね。ひとまずは生きて帰れることを目標にしよう」
「そうですね」
横目でライアンたちが向かっているのは東だ。念の為確認しておく。
それぞれが冒険者と自覚し、戦場へ向かうのだった。
「暇ですねー」
「そうだね。でも、いつ来るかわからないし警戒はしないと」
すでに森に入り、ここで待機して2時間が経過していた。もう来ないんじゃないかと思っていたその時、
ドンッドンッドンッ!
地面を揺らすほどの大振動が襲い、バランスが取れなくなる。
「なんですかこれは!?」
「わからない。だが今は身を守るのが優先だ」
直後、すぐに収まる。この感覚は地震と似ていた。しかしオレは地震ではなく、なにかが起きていると察する。
「スキル『周辺索敵』」
スキルを使用し、探索するが、モンスターの検知はない。だがなんだ、もしこれが地震ではなかったら。
「あるとすれば、小型のモンスターが一斉に移動したとか……それだと仮定してどうして急に。何かから逃げるためか。一体何からだ。レベルの高いモンスターだとして、地面で生息しているモンスターが逃げる……ッ!」
オレは改めてスキルを使用する。
「周辺索敵」
やはり反応はない。だが直感だが何かが近づいてくる。このスキルの範囲は半径100メートル。周りに冒険者はおらず、モンスターの反応もない。だとすればまだ索敵していない場所は……
「地下だっ!……ルナ、来るぞッ!」
「ふぇっ、はっ、え?」
オレはすぐさまルナを抱え、ジャンプし木の上まで避難する。それは地中から現れた。変異種なのか両手の爪が発達していた。その分翼はなく、だが、その形はドラゴンだった。
「ご主人様! あれってまさか!」
「そうみたいだ。あれが、ネビルドラゴン」
それは空を飛ばない、土竜だった。最初からオレたちを食う気だったのか、さっきいた場所は地面ごと抉り取られていた。あのままだったら丸呑みじゃないか。ひとまず安全なところでルナを降ろす。
「とうとう現れたな。思っていよりデカい身体をしてるな」
「あれがネビルドラゴン……ご主人様、頑張ってください!」
「ああ、安心してくれ。ルナは木の後ろまで」
そしてオレは戦闘モーションへと入る。ネビルドラゴンは地中へと潜る。ここを潜り、自在に動けるということは、すでにオレたちはネビルドラゴンの巣に入っていたのだろう。だから周辺にいたモンスターたちが動き出したのか。
「ッ! 素早いやつめ」
またしても真下から攻撃され、それを避ける。環境からして不利というわけか。なら、無理やりにでも地上に引っ張り出す。
「ネビルドラゴンさん、モグラ叩きって知ってる? スキル『雷撃一閃』!」
オレは地面にスキルを叩きつける。土は水分を含んでいるため電気を通す。それは地面にいるモンスターも。その攻撃に耐えられなかったのか、自ら地上に出てくる。
「見つけた。逃げてないで、さっさと終わらせよう」
あまり時間もかけたくないし。ここはサクッと終わらせたい。オレは魔法書を広げる。
「さあ、スキルを『創造』する時間だ。今日はサクッとやるよ!」
地中からの攻撃は諦めたのか、爪できりかかる。その発達した爪の攻撃は凄まじい。
「スキル鉄の剣」
金属で作れらた剣を生成し、
キィーーーン!
と音を立て攻撃をはじき返す。しかし爪が粉砕することはなかった。やはりそれほどまでに強度があるってことか。
「ならこれならどうだ。『音波の矢』!」
無数の矢を生み出し、一斉に掃射する。硬いであろう鱗ですら貫通する。怯んだところに最後の一撃を与える。
「スキル『流星群』」
生み出した剣を高く上空へ上げ、さらにスキルによって強化することでそれは天から降る裁きの鉄槌。まるで流星の如く降りかかる剣はネビルドラゴンの身体をいとも簡単に貫通した。その衝撃のせいか、身体のほとんどが破損し、塵となって絶命した。
「これで……大丈夫か」
魔法書を閉じ、戦闘が終わる。
「ご主人様!」
いきなり後ろから飛びつく。やめてくれ首が閉まるって!
「あんなでっかいモンスターを倒すなんて。しかもなんですか! 私が見たことないスキルばっかり使って。もう凄すぎですよ!」
オレは仮面を取り、ルナと目を合わせる。
「大したことないって。ルナに怪我がなくて良かったよ。ひとまず、目的は達成したしヴァルクさんに報告するか」
「そうですね」
さて、これからどうするかと考える。報告したら、誰もしらない場所で過ごすのも悪くはないか。
「あれほど大きな衝撃音があったんだ。急いで戻って報告……」
「――おい……なんでだよ。お前……まさか……ハルトか!?」
振り返ると、そこにいたのは、ここにいるはずのない人物だった。かつてオレを罵り、ついにはオレをパーティから追い出したのだ。今もパーティのリーダーとしてやっているであろう、そして東の方で待機しているはずの、ライアンが。
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