15.仮面の冒険者の正体とは
それはライアンパーティが到着する数時間前のことだった。
「あの、お願いがあるんですが」
「ん? 一体どうした?」
オレはヴァルクさんにお願いごとをしていた。
「ここでは、オレの名前は他言無用ってことにしてもらえませんか? それとあまり名前は出さないでもらいたいんです」
「まあ構わないが」
「あとこのパーティってまだここに到着してませんよね? だったら、オレがクエストの説明してもいいですか?」
オレはさっき渡されたリストに書いてある一つのパーティに指をさす。
「ライアン……私は知らんがいいだろう、ただ挨拶だけできればそれで良い」
「感謝します」
要件を伝え、用意されたテントへ戻る。その途中、すでにいろいろな冒険者が到着していた。まだ彼らの姿はない。
「おかえりなさいませご主人様。何をしてきたのですか?」
「いいやなんでもないよ。ただ、これから忙しくなるからね。準備をしないと」
「ふふっ、ご主人様が準備なんて必要ないですよ。だってあんなに強いのですし」
「そんなことはないよ。それに、ここには冒険者がたくさん来るし。それよりも、他の冒険者にバレないようにしないと」
オレは『創造』スキルで顔のサイズに合った仮面を創り出す。当然、ルナは何をしているのか質問する。
「それはなんですか?」
「今回のクエスト中はこの仮面を付けてやるんだ」
ついでに、ルナと同じフードマントも創造する。
「でも、どうしてですか? 別に冒険者にバレてもご主人様は大丈夫じゃないですか?」
オレは少し黙ってしまう。ルナと出会う前の話はまだしていない。不要な心配はかけたくなかったからだ。
「人前に出るのは嫌いなんだ。だからこれがあると落ち着くんだよ」
ふぅーん、と無理があると思ったがなんとか押し通した。これだけはオレの私情だ。ルナには関係ない。
「それと、新しい魔法を創造したんだ、ルナに試してみてもいい?」
「はいっ! お任せ下さい。ご主人様が言うのなら身体を使ってもいいですよ!」
いやそこまで言ってないよ。まあともかく、オレはルナに魔法をかける。
「スキル『チェンジ』」
魔法を唱えると、ルナの周りがキラキラと光り始め、その容姿が変わってゆく。魔法が終わると、
「ほら、鏡を見てごらん」
戸惑いつつもルナは鏡で自分の姿を確認する。するとそこには、
「あれ!? 耳がご主人様と同じに! それと色んなところも人間と同じに!」
「気に入らなきゃやめるけど、これからフード被って行動するのは辛いと思ってね。でもそのまま外に出るわけにもいかないし、だから外見は人間と同じになる魔法を使ったんだけどどうかな?」
ルナは黙り込み、自分の身体をところどころ触る。そしてオレの方へ向き、
「最高です! 私、憧れていたんですよこの姿に! 本当にありがとうございますっ! ……それと、か、かわいいですか?」
「気に入ってくれて良かったし、うん、とてもかわいいよ」
「そ、そ、そ、そうですかっ!」
ルナは赤くなり、テントの壁に顔を向ける。一体どうしたのだろうか……。ふぅ、まあこれで嫌われたりしたらどうしようかと思ったけど、良かったな。
外から声が聞こえる。その声は王国の兵たちだった。気になり、テントから顔を出し、そちらを見る。
「最後のパーティが来たぞー!」
兵の言葉を聞きながら、奥の方を見ると、見慣れた顔のパーティがダルそうに歩いていた。オレは仮面を被り、フードマントを着る。
「思っていたより、随分と早い再会だな」
オレは反射的に口を零していた。
あれから時間が経過し、星空が綺麗な夜になっていた。オレはライアンたちと接触していた。一瞬、セレシアにバレそうになったがなんとか誤魔化せた。さすがだ、彼女の洞察力は凄い。危機察知能力が非常に優秀な証拠だ。
それはともかく、オレたち冒険者は中央の広場に集められていた。正面のステージに立っているのは、この討伐隊を指揮するヴァルクさんだった。
「諸君、この度は集まってくれて感謝する。我々は冒険者であり、仲間である。互いに協力し、この世界を脅かすモンスターを討伐しようではないか! 報酬は王国から出すため、十分にその実力を発揮してくれ。明日は、冒険者の革命日となるだろう。諸君らの活躍を期待する!」
ヴァルクさんの有り難いお言葉を受け、テントに戻る。明日は早い段階から作戦がスタートする。睡眠は長時間の戦闘のためにも大事だ。就寝準備はすでにルナがやってくれていた。
「悪いねいつも」
「いいんですよ。これが私の仕事ですから。明日は頑張ってくださいね」
「うん、できればオレの出番はない方がいいのかもしれないけど」
ネビルドラゴン、聞いたことない変異種のモンスターだが、なんとかなることを期待するか。
「私、今すっごく楽しいです」
布団を被ったルナはそんなことを言う。
「どうして?」
「だって、こんなドキドキする旅ができてますし、ご主人様と同じテントで寝れるだけで幸せです」
「それくらいなら毎日してるだろ。それに、ルナが良ければ一緒に寝るよ」
「……」
バサッと布団を頭まで被り、それ以降発することはなかった。あっれ、なんかまずいことをいっただろうか。けど、ルナは未だに呪いにかかっている状態だ。なんとかオレの魔力を代償としてなんとかなっているが。いつかは呪いをかけた犯人を倒さなきゃならない。
「あー、えっと、……もう寝ようか。明日は早いからね」
明日も早いしそう言うと、オレは灯りを消したのだった。
「面白い!」
「続きが気になる!」
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