14.ライアンパーティの行方とその結末 ⑥
続きはまた明日です。
俺たちは目的地に向けて出発していた。この前のダンジョン攻略が失敗に終わったからなのか、ガリアは不安げに、
「本当にいいのか? 詳細もわからないクエストを受けて」
「あったりまえだ! ここで成果をあげなくてどうするんだよ。もう俺たちに残されているものは少ない。冒険者が大勢いるこの討伐隊で一番の成果を上げれば、レベルも上がるし、俺たちの実力もやっと理解されるんだよ」
「でもライアン様、モンスターは聞いたことない名前だったけど大丈夫なの?」
「心配すんなって、俺が守ってやるよ。それに、この前は運が悪かったんだよ。あの変異種に遭遇するなんてな。普段だったら負けるはずがねぇんだよ、なぁセレシア?」
「……うん、そうね」
最近、セレシアの機嫌が悪いのか、反応が薄いことが多い。つまり、このクエストでモンスターを討伐したら俺の株もうなぎ登りってわけだ。これはむしろチャンス、ボコボコにしなくては。
「しっかし、奴隷を連れた冒険者ってなんだよ。そんなのいるのか?」
クエストの詳細はギルド長であるシモンズから教えてもらうはずだったが、現地にいる冒険者に聞くことになった。
「今は従うしかないだろう。ギルドに楯突くのは自滅するだけだ」
「わかってるつーの! 俺が嫌なのは、もう少し良い待遇をしてもらっていいと思うんだが」
「まあまあ、いいじゃないですかライアン様。このクエストを私たちパーティが単独でクリアすればいいんでしょ?」
「ああ、そういうことだ。だから今はやるしかねぇな」
不満はあるが、ここは平穏にいこう。モンスターの首を持ってきたときにはセレシアも惚れるに違いないしな。
「思ったより多いな」
ガリアの一言の通り、前線基地へ到着したライアンたちはその光景を見て驚く。まさかこれほどとは。だが関係ない、俺はガリアの肩を叩き、
「心配すんなよ。こんだけいれば、モンスターの囮に利用できるさ。えーっと、ほら、例えばあそこのフードマント着たやつとかな」
指さした方向には、後ろ姿だがボロい2人組みがいた。
「どうせ高く見積ってレベル3だろう。いいように利用して、美味しいところをかっさらう。どうだ、いい作戦だろ?」
「ま、俺たちが最強になるなら仕方ない犠牲だな」
他の冒険者も見てみるが、俺より大したやつはいなそうだ。一番レベルが高くてもセレシアぐらいだしな。
「――お前たちが最後の冒険者か。ここまでよく来てくれた。王国は心より感謝する。私はヴァルク・レオーナだ」
俺たちの前に現れたのは王国の騎士だった。そういえばいたな、王国の臣従で、その実力もあるといわれている女が。おそらくこいつだろう。将来的に王国に媚び売っとけば役に立つだろう。
「これはこれはどうも、俺の名はライアンだ。で、そっちが仲間で、そこにいるのがあのレベル5、セレシアだ」
「君がレベル5のセレシアか。兼ねての噂は聞いていたがよくぞここまで来てくれた」
「……いえ、私は別に」
相変わらず、関係ない人には冷たい。俺ぐらいしか信用してないからか。
「早速だが、お前たちにも今回の作戦概要を説明したい……ところだが、私は王国と現地で連絡を取らねばならない。だから後のことはそこにいる冒険者に聞いてくれ。安心したまえ、実力は私が認めているからな」
「待ってくれ、俺たちはシモンズから『奴隷を連れた冒険者に話を聞け』って言われたんだが」
「シモンズか……問題ない。おそらくそれは彼のことだ。ともかく話は彼からだ。では」
そう言い残し、凄まじいスピードで別の場所へ向かっていった。王国はめんどくさそうだし大変だな。
「聞いてたか? 今は大人しく従い、あのボロ冒険者に聞く。口は出さなくてもいい、俺が全部やる」
確認を取ると全員が頷く。これがリーダーの役目。全てはセレシアのためだ。俺はその2人組の冒険者に近づく。
「おい、王国にお前からクエストの説明を受けろって言われたんだが、ってなんだその顔、仮面か?」
肩を掴みこちらに向けさせると、仮面をした冒険者だった。もう1人はすぐに仮面の後ろへ身を隠した。その態度はやはり奴隷か。よく見えなかったが女の奴隷か。
「失礼、オレは人に顔を見られるのが嫌いなんでね。この状態でも構わないかい?」
「ああいいぜ。でも、舐めた態度取ってると痛い目に遭うからな」
「わかってるよ、君のことは。有名なパーティだしね」
ほほぉ、こいつ、俺のことがわかってんじゃないか。とうとうこのパーティも世界の頂点に立つ時も遠くないってわけか。
「そうかそうか。お互い楽しくやろーぜ!」
俺は肩組みしようとするが、その手はヒラリとかわされる。なんだ今の?避ける素振りもなかったのに。
「ごめんね。さっきも言ったけど、人と馴れ合うのは好きじゃないんだ。説明、始めても?」
「ああ」
ライアンパーティは仮面の冒険者にクエストの説明を受けるのだった。一瞬、どこか懐かしさを感じたが、ただの気のせいだろう。
「以上だ。指定された配置についてくれればそれでいいよ」
「了解だ。互いに生きて帰れることを祈ってるぜ」
心にもないことを言い残し、俺たちはその場を後にする。しかし、セレシアだけはそこに留まる。
「おい、セレシア、行くぞ」
しかし俺のこと言うことは聞こえてないのか、無視され、普段喋らない口を開く。
「――ねぇ、仮面の人、どっかであったことある?」
「……いや、ないと思いますよ。そうだったとしても誰かと間違えているかと」
「そう、ごめんなさい」
会話をし、俺たちのところへ戻ってくる。
「なんであんな質問したんだ?」
「……どこかで、あったような雰囲気だったから。人違いだったけど」
「そうか。ならさっさと行こうぜ。クエスト開始は明日からだ。今日は十分に休んで明日を迎えようぜ」
セレシアだけは首を傾げているが、この日から俺たちは最強パーティの人生がスタートするんだから。
「面白い!」
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