11.レベル0 VS レッドドラゴン
「ここら辺からモンスターも出るから気をつけて」
「わかりました!」
現在、オレとルナは老人からのクエストを達成するためレッドドラゴンが出現した場所まで歩いて向かっていた。ルナにとっては初めてのクエストで緊張すると思っていたが、案外楽しそうにしていた。
「でも、ご主人様がいれば大丈夫ですよね?」
「オレだってルナを守れる保証なんてないさ。オレのスキルはそんなに便利なものじゃないしね。だから、ルナにも今回の戦闘で戦い方を覚えてもらいたいんだ」
「戦い方……?」
「そうだ。たしか『妖精族』は補助スキルに長けていたはすだ。直接的な戦闘は無理かもだけど、後方支援ならできると思うし」
「そうですね。でも、私は魔法なんて使ったことはありません。だから足でまといになると……ご不要だったらここで捨てても……」
オレは立ち止まり、ルナの方に顔を向ける。しっかりと目を見て、
「それだけはしない、絶対に。約束だ。どんな困難な道だったとしても2人で必ず乗り越える。心配になるのはわかるさ、不甲斐ない主人で悪いと思ってる」
「ち、違いますっ! ご主人様は強くて、カッコよくて、頼りになって……なにより私を助けてくれました! だから……そのっ」
オレはそっとルナの頭を撫でる。するとルナは目を見開き、徐々に顔が赤くなる。
「そっ、その、これは」
「でも、オレはルナを見捨てたりしない。それだけは誓うよ」
ルナはオレの手を両手で掴み、優しく包み込む。その手はとても温かかった。
「……はい。私も、ご主人様と一緒にお供します」
また一つ、何かが打ち解け、近づいた気がした。
今思うと、ちょっと恥ずかしいな。あれから時間は経過し、さらに森の奥へと進む。さっきよりもモンスターがいた雰囲気を感じる。
「どうやらここにいたらしいな」
地面には血痕らしきものを見つける。血は固まっている。だいぶ時間は経っているがここにいたのは間違いない。オレは魔法書を広げ、スキルを発動する。
「スキル『周辺索敵』」
ここにはいないのか。いや、レッドドラゴンは地面だけで生息しているわけじゃない。ドラゴンには翼がある。
「ルナ、近くにいる。気をつけて」
「で、でもどこに?」
確実に反応はある。あるとすれば、オレたちがいない場所で近いところ。それは、
「上だ!」
次の瞬間、上空から一直線で降下してくる。その紅い鱗はレッドドラゴンだった。今にも殺気立ってこちらを襲ってくる。
「っ! 火の息か!」
オレはルナを抱きかかえて攻撃をかわす。いきなり攻撃するとは厄介だな。
「怪我はないか?」
「は、はい。なんとか。でも、あれがレッドドラゴン……」
ルナを下ろし、レッドドラゴンへと身体を向ける。体長は5メートルほどあり、オレたちを殺す気でいる。
「ご主人様、どうやって倒すのですか?」
「こっちにも策はある。今回は下がっててくれ。まずは戦い方を教えないと」
そう指示し、ルナを後方へ下がらせる。
「さてさて、どうしようかな」
さすがはレベル4相当のモンスターだ。これは村の人が困るのも納得だ。だったら、やるしかないよな。
「さぁ、スキルを『創造』する時間だ」
魔法書を広げ、スキルを発動させる。
「スキル『氷の弾丸』」
左手をかざし魔力を一点に集中させ巨大な氷を生成する。突進するレッドドラゴンは受けきれず、一撃で地面に倒れ込む。しかし、再び起き上がり諦めることなく突進する。
「やれやれ、少しは学んだらどうだ!」
オレはその場から一瞬で真上へと跳躍する。スキル『跳躍』によってレッドドラゴンの攻撃は当たることなく、隙だらけの上を取っていた。
「オレだって飛べるのさ。『雷撃』!」
指定した場所に稲妻を落とすこのスキルは隙が大きく、急な攻撃の応用ができないというデメリットがあるが、威力は絶大だ。当然、防御することはできず、レッドドラゴンにとどめを刺した。
「ふぅ、こんなもんか」
戦闘が終わり、木の影に隠れていたルナがこちらへ寄ってくる。その顔はなぜかとてもキラキラしていた。
「凄いですご主人様っ! あのドラゴンをたった2発で倒してしまうなんて!」
「い、いやそこまで褒められることじゃないと思うけど。一撃で倒せなかったし」
「そもそも一撃で倒そうとする考えがおかしいんですよ。ともかく、これでクエスト達成ですね」
これが凄いのかどうかはオレにはわからなかった。あの『剣姫』はあっさり倒してそうだしなー。まあルナに褒められるってことは凄いのか。結果としてクエストは達成だ。
「日が暮れる前に戻ろうか。報酬ももらえるはずだし」
こうして緊急クエストはあっさりと攻略したのだった。
「ま、まさか、本当に倒してくださるとは! なんとお礼を言ったらいいのか」
「前も言いましたが、困ってる人を助けるのが冒険者ですよ」
オレたちはギルドへ戻り報告していた。依頼者の老人は驚いていた。それはギルドの受付嬢もだった。
「あ、あのレッドドラゴンを倒すなんて凄いですよ! よろしければギルドカードを拝見しても」
「ああいいよ」
ギルドカードを渡すとまるで悲鳴でも上げるかのように驚愕していた。大袈裟すぎるだろ。
「レベル0! ありえませんよ! 一体どうやって!?」
なんかこれ以上はめんどくさい気がするので適当に流してルナの所へ戻る。
「ご主人様、大丈夫でしたか?」
「うん、けどちょっと疲れた。さあ、宿屋へ戻ろうか」
冒険者はいろいろ起こって大変ということを知ったハルトであった。
「面白い!」
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