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第9話 座敷わらしと大学生活のはじまり

少し遅くなりました。申し訳ありません。

気づけば総合で800Pもいただき感謝しております。少しずつ確実に書いていきたいと思います。

分目わんめあいです。苗字の順番だと一番後ろ以外の出席番号になったことがありません。名前順だと一番最初以外になったことがありません。誕生日は4月2日なので、これも最初以外になったことがありません。宜しくお願いします」


 自己紹介からぶっ飛んだかんじの分目さん。教室に入ったところでお互いに見合っていたら講義開始のチャイムが鳴ったので、ひとまず隣同士に座って講義(自己紹介とガイダンス)となったわけだが。


「改めましてこんにちは。このクラスの英語を担当します、支倉=マルティノ=常長です。好きな戦国武将は佐竹義重です。宜しく」


 このクラス、自己紹介が濃すぎて胸焼けしそうだ。そこは好きな武将は伊達政宗じゃないのかよ。他のクラスメートも、「休日は狛犬巡りしています」とか「茨城県出身です。鹿島より水戸です」とか「300連ガチャで☆5サーヴァント1体のクソザコです。今年のお年玉なくなりました」とか、キャラが濃い。


「このクラスは週に2度、月曜日と木曜日にあります。だから月曜日と木曜日は毎週必ず来てください。でないと来年、英語の履修単位がドンドン増えて大変なことになりますよ」


 英語の単位は3年進級の必修条件だ。2年間で週4回分の単位をとれないと留年となる。気をつけよう。


 色々な説明をここで受け、クラス写真を撮ったら今日は解散である。来週からはガイダンスも始まる。必修選択課目から慎重に選ばないと。

 そんなことを考えつつ、クラス写真撮影から教室に戻ったところで解散が宣言された。指定の教科書を買うために購買に向かおうとすると、分目さんに声をかけられた。


「あの、あ、あ、あの時は」

「あぁ、お礼?わざわざいいのに」

「ありがとうございました」

「クラスメイトとしてよろしくね」

「よ、よろしくお願いします」


 固いな。自己紹介はかなりスラスラっと話していたのに。


「だ、台本がないとうまく話せなくて」

「台本?」

「こう、前もって話すことを決めていないと、こ、言葉が詰まるの」

「あぁ、アドリブが苦手的な」


 緊張するタイプなのかな。ぱっと見は明るそうだけれど。


「今日も何を話すか、自己紹介もどうするか、誰かに話しかけられたら何を答えるか、全部考えて来たんですけれど」

「思ったより本当に台本だった」

「想定問答集もちゃんと作ったんですが、まさか貴方と会うとは思っていなくて」

「お、おお」


 想定問答集って。


「台本にないイベントは避けていただきたいですね。来週以降は大丈夫ですので」

「あ、はい」


 今度は台本作ってお礼しますので、と言い残して彼女は教室を出て行った。

 不思議な知り合いができた、としか言いようがない。


 ♢


「演劇サークルとかにいそうだな」

「確かに。それか台本作るから文芸サークルとか」

「ありそうだな。でもあそこ社交的な人少ないかも」


 冬弥と昌と学食で昼ご飯を食べる。A定食はからあげとアジフライで350円。最高だ。あまり人が多くないのは、1年生のガイダンスと一部学部しか動いていないからか。


「俺は食事代が安くすむから朝昼夜のほとんどここだけれどな」

「冬弥はここのメニューの値段まで覚えているからね」

「まぁ、1年で600回は食べているからな。夏休みも空いてる期間は通うし」


 冬弥は大学の最寄駅から徒歩3分の場所に住んでいる。なので夜も18:30まで営業している学食を利用するため、冬弥は最後の講義時間には講義を入れない。学食は土曜日も昼までやっているのでここで食べているという筋金入りだ。そしてその分、学食を縄張りとするサークルや土曜日に活動しているサークルと仲が良い。


「演劇サークルはうちだと2つしかない。かなり真面目にやっているのは秋桜コスモス会か」

「サークルごとに雰囲気は違うものか」

「そりゃ違う。俺のいるボードゲームサークルは時間のかかる重いゲームを中心にやっているサークルだが、もう1つのサークルは奇術のマジックサークルと合同だから軽いボードゲームばかりだ。推理サークルはマーダーミステリーとか謎解き系のボードゲームはやるって聞くし」

「へぇ」

「自分に合うところを探すのが一番だな。1つ所属すれば勧誘を断りやすくなる」

「当分勧誘はやってるの?」

「当然。この時期しか新しいメンバーは入らない。ここで頑張らないとサークルの人数が足りなくなるところもあるし」

「なるほどね」


 俺自身がどこに入るかも大事だが、せっかくのクラスメートだ。仲良くしたい。


「で、連絡先交換は?」

「台本の話のインパクト強過ぎて」

「初動に失敗したな」


 大きなお世話だ。


 ♢


 自宅に帰ると、背の小さい同い年くらいに見える縁さんとお母さんくらいの年齢に見える結さんが、2人であや取りをしていた。


「お帰りなさい、芳孝さん」

「お帰りなさい」

「ただいま」


 家事は一通り終わったらしく、夜の食事の下ごしらえらしきトレーの上の魚が目に入った。


「ぺったんぺったん」

「いいかんじです」

「何やってるの?」

「2人でもちつきです」

「あや取りの2人遊びの1つですよ」

「へぇ」


 なんか楽しそうだな。というか、2人が楽しんでいる。こういう遊びを昔からやってきたのだろうか。


「一番好きなのはゲームボ○イですけどね」

「あれは楽しかったですね。まぁ私はワンダース○ンの方が好きですけど」

「え、なにそれ?」


 ゲームボーイはわかるが、結さんのワンダースワンって何かな。


「電車のゲームが楽しかったんですよ。私達、電車に乗ってどこかに行くことができませんからね」

「電車も車も、持ち主がいるから難しいんですよね」

「宿泊旅行にもついていけませんからね。旅館に入ると私達、しばらく動けませんし」

「南部さんだか伊達さんのお宿に、そんなかんじで座敷わらしが住みついたお宿がありましたね」


 あぁ、なんかテレビで見たことあるな。座敷わらしのいる旅館。一度火事で燃えて再建したとか。


「火事にあった家とかの座敷わらしってどうなるの?」

「そもそも、座敷わらしがいれば火事は起きないかと」

「あぁ、まぁそうか」

「幸運を運ぶ私たちがいると、火事は起きないですね。ただ、一時的に別の家に居着くことはあります。跡取りさんが一人暮らしを始めるとか」

「そういう時に、一人暮らしの跡取りさんは順調でも、実家の商売が傾くとかで戻ることはありますね」

「それは何とも」

「私たちは基本的に見える人が亡くなるまで一緒にいますが、色々な理由で動く時があります。そうすると、それまでの幸運がなくなって生活を崩す方はいますね」

「幸運に慣れると、それがないだけで不幸に感じてしまうことがあるのです」

「難しいね」

「不幸になってほしいわけではないのですが。実業家さんのお家にいた時、話せる相手が息子さんで、その息子さんが独立したところで実家が無理な投資をして失敗したことがあります」


 気をつけないといけない教訓だ。多少無理な投資も、きっと座敷わらしがいれば成功していたのだろう。幸運に慣れてしまい、それが自分の力だと過信してしまった。


「自分の実力を過信せず、運に頼らないようにしないといけない、と」

「私たちはあくまで幸運のお手伝いしかしていませんから。気をつけて下さいね」

「せっかくそう言われたのに途中で忘れてしまわないように、ね」


 しかし、帰りにコンビニでお茶を買った時にもらえた、その場で当たるキャンペーンくじで箱ティッシュがもらえた程度の幸運だけでは終わらないらしいからな。欲に目が眩まないように気をつけないと。

別ジャンルですが、私の作品の書籍版が本日発売です。よろしければお手にとっていただけますと幸いです。


座敷わらしの幸運がありながら不運なことが起きるはずもないので、多分ちょっとした偶然の不運というものがあったのかな、と思っております。そういう座敷わらしが後悔していないか心配ですね。

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