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第4話 座敷わらしを見えること、見えないこと

 バイトの応募をした不動産会社から面接の日程が連絡されてきた。仕事の内容は、その会社の管理物件の定期清掃や、入居が決まった物件の清掃を行うと言うものだ。仕事を覚えれば1人で作業できるし、免許のある原付を使って仕事ができる。電話で作業開始と作業完了の連絡をすれば大丈夫だし制服も貸してもらえる。


「春休みとか、人の移動が多い時期に仕事が増えるから、学生でも割とやれるんだよね」

「大学との両立は大丈夫なんですか?」


 母親くらいの外見になった座敷わらしの縁さん。相変わらず俺の生活を支えてくれるが、そろそろはおばあちゃん感はなくなりつつある。掃除用具を買ったイ○ンモールでは一定額買うと抽選券をもらえるが、その抽選でお買物券を当てて半額が戻ってきた。縁さんいわく、そのくらいではまだまだ座敷わらしの本領発揮には程遠いそうだ。


「昔はよくハワイ旅行とか当ててもらって喜んでいたのですよ」

「ハワイ旅行か。今はそこまで超プレミア感ないからな」


 沖縄旅行の方が高いまである。沖縄、行ってみたいな。


「しかし、背が伸びたりはしないんですね」

「外見は変わっても、成長するわけではないので」

「まぁ、おばあちゃんになったのは副作用というか悪い影響だからか」

「そうですね」

「ところで、他の人にも縁さんが見えるか見てもらうことはできますか?」


 座敷わらしが見える人が増えれば、彼女の老化を防げるかもしれない。


「見えるなら、うれしい、ですけれど」

「同い年で俺より先に同じ大学に入った友達を呼ぶから、その時はちょっとお願いね」

「はい」


 ♢


 翌日。バイトの面接はあまりにもスムーズにすんで、その夜には採用を伝えられた。ささやかなお祝いを縁さんにしてもらう。するとこれも運が向いてきたうちなのか、友人2人がケーキを買って来てくれた。本当は祝わせるつもりもなかったのだが、タイミングよく来たものだから、入学祝兼引っ越し祝い兼バイト決定祝いになった。

 冬弥としょう。二人は高校が一緒で、冬弥は部活も同じバドミントン部だった。昌はたまにエセ方言が混ざるので全国各地に喧嘩を売っているといえる。ちなみに、縁さんの話はまだしていない。


「バイトも早速決めるとは、幸先いいな」

「いやぁ、よく粘ったなぁ。うちの学部は偏差値低いから、お前の学力なら普通に受かるから何とも言えんわ」


 2人は普通に入って来たが、用意されていた料理に驚いた。


「デリバリーか?時間かかったやろ」

「いや、デリバリーなら普通の皿には盛りつけないだろ。こっち来る前に料理覚えた?にしては手が込んでいる気が」

「いやいやいや。こいつが料理覚えるなんてありもはん」

「もしかして、おばさんが実家から来て準備したとか?だとしたら申し訳ないな」

「まさか、従妹ちゃんに頼んだ?ぼてくりこかすぞワレ。表でろや」


 まぁ確かに2人なら俺が料理できないの知っているからそういう反応になるのだろうけれど。わかるけれど、わかるのと受け入れるのは違うぞ。


「なぁ、今この部屋には何人いる?」

「算数のお時間か?1+1+1=3ってか」

「待て。ホラー系の話なら今日はお暇するぞ」


 そういえば冬弥はホラー苦手だったか。眼鏡の奥の瞳がわかりやすく動揺で揺れている。


「いや、怖い話ではない」


 目の前にいる縁さんは少し悲しげだ。まぁ、10年近く見える人に会えていないから、そうそう見つからないとは言われていたけれど。


「座敷わらしって知ってるか?」

「ちょぺっとな。幸運をもたらすロリっ娘だっけ?」

「住んでいる人に幸運をもたらすが、座敷わらしがいなくなると没落するとか聞いた気がする」


 いなくなると没落って本当か?少なくとも、幸運頼りだと破滅するとは縁さんから聞いたけれど。


「この部屋にいるって言ったら信じるか?」

「なるほど。これは禅問答だにゃー」

「新手の宗教に見せかけたマルチ商法か?大学生だとひっかかって友人なくすケースがあると学事課で啓発運動していたな」

「縁さん」

「はーい」


 縁さんの声は当然のように聞こえていない。だが、彼女が外干しを終えたバスタオルを被ると、2人にはタオルが浮いているように見えるはずだ。


「マジかよ。マジシャン芳孝爆誕じゃん」

「まさかマジックお披露目会?」

「いやいやいや」


 バスタオルをたたんでもらい、紙とシャーペンで意思疎通を図ってもらうことにする。


「おー、バスタオルがたたまれた。いいかんじにお金をあたれる(もらえる)な」

「これだけで飯食えるな。週末どっかでパフォーマンスやるか?」

『お外にはでられないです』


 丸っこい字で縁さんが必死に書いて紙を2人に向ける。このあたりの道具も俺から許可を出してあるので使える。


「お、お、お、お?」

「ちょっと待て。再起動するわ」


 眼鏡をずらし、目頭をおさえながら手でこちらに『待て』をする冬弥と、方言を失い「お」しか言えなくなる昌。人間は理解できないことがおきるとこんなかんじになるのか。

 続けて、再びテーブルでせっせと文字を書き、2人に見せる縁さん。


『大丈夫ですか?』

「だ、だだだだ、だだだだだだ」

「壊れたペットロボみたいだな。まぁ、きもちはわからんでもない」

『はじめまして、座敷わらしのよりです』

「は、ははははは、ははは」

「はじめまして。いや、これ全部ドッキリとかじゃないよな?」


 そうであってくれといった視線を俺に向けてくる冬弥。


「縁さんだ。色々あってお前らにも紹介しておこうと思ってな」

「もしかして、もしかしなくても、もしかしなくもなく座敷わらし?」


 彼女は満面の笑みで『よろしくお願いします』と書いて見せた。


 ♢


「ちょっとまだ信じきれないが、とりあえず信じたということで」

「いやぁ、いくそった(驚いた)わ」

「なんか良いことあったか?あぁ、バイトが決まったか」

「イ○ンで買い物したら商品券当たって半額戻ってきたぞ」

「最高じゃねえか。座敷わらしさん」


 しかし、見えない人がふえているために今は子どもから俺より年上な見た目になっていることを伝えると、


「たかで(本当に)話せば話すほど幼女化すんの?」

「人々の信仰心の問題か、自然が少なくなってきた弊害か。文明社会・IT社会もいい部分だけじゃないのかもな」

「でも、別に俺は信心深い自覚はないぞ」


 クリスマスも祝えば三が日に初詣に行き、一昨年死んだお爺ちゃんの葬式は寺でだった。


「何か特別な条件があるのかもしれないな。縁さん、後天的に見える・見えなくなるとかの経験はありますか?」

『後から見えなくなる人はいます』

「みょーちきりん(不思議)なこともあるね」

「例えば、座敷わらしに感謝しなくなるとか。何かしらあるのかもしれないね。逆に言うと、後から見える人はいないわけだし」

『芳孝さんと会えてよかったです』

「まぁ、条件とか今はわからんだに。とりあえずお祝いするべ」

「そうだな」


 その後は3人で美味しい料理を楽しみ、最後に二人から、この事は誰彼構わず教えるな、とくぎを刺されつつ解散となった。

 俺だってこの2人以外には話せるとは思えない。親だって信じてくれるかどうか。

実際に心霊現象とかこういう事象に遭遇した時、真面目にその話ができる相手がどれだけいるかは人によりますよね。普段こういう話を面白半分にでもしれいるかどうかとか、色々な条件が重なりますが。


基本的に座敷わらしにとっても不運な事象は起こりにくいので、こういうところから変に問題が発生することは基本ないです。

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