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私は、叛乱されない魔王に ~恋を知って、恋で生きて~  作者: 者別
第四章 来者争乱、災禍繚乱
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一 吹けばトブような脆弱

本投稿より、第四章となります。


今後もお楽しみいただけたら、幸いです。

 陽光が寝室の窓に燦々と降りかかり、室内を明るく照らしている。その中でコアイは、夜半から変わらずスノウに付き添っていた。


「んっんぅ……」

 スノウは目覚めぬまま声をもらし、寝返りを打った。コアイが手を添えていた肩を下にし、手を頬ではさみ込むように身体を丸める。

 コアイは手を引き込まれるような体制になり、身体を少し彼女へ寄せる。


 コアイから見える横顔は微笑んでいるかのように柔らかく、あたたかい。



 この寝顔を、壊したくない。


 コアイはそう感じて、はさまれた手を動かせなくなる。




 しかししばらく後、突然…………

 東向きの窓から射し込んでいた陽光が赤く色付いた。


 日差しの向きは変わっていない。まだ朝、夕暮れ時ではないはずだが?

 コアイはそう考えたところで……妙な不快感を覚えた。

 コアイは彼女を起こさぬよう、その安らかな寝顔に捕らえられた手を優しく引き抜く。そして彼女が起きていないことを一目確認してから、周辺の様子を見ようと屋敷の外へ飛び出していった。



 外に出て辺りを見渡そうとしたコアイの目に、赤い光の柱が映った。

 光の柱は、城下の一区画から空へと突き上がるように、あるいは天空からコアイの居城へと下る道筋を引き下ろされたように……城と空とを真っ直ぐにつないでいた。


「ありゃあまるで、天から何かが降りてきそうな感じだなあ」

 横から大男アクドの声が聞こえて、コアイは振り向く。


「貴様も見に来たのか」

「そりゃな、あんな奇妙なもん気になるだろ」

 大男は一旦コアイに顔を向けて応えてから、再び光柱に目をやった。


「柱の根……近いな、見に行くか?」

「……王様、楽しそうだな。目がキラキラしてるぞ」

「そうか?」

 コアイは内心、期待感は持っていた、しかし、赤く輝く光柱への嫌悪感を、それよりも強く抱いていた。


「よし、王様が行く気なら、俺は念のためここを見張っとくよ」

 大男は片手を自分の顎に当てながら、そう提案した。


「そうか、頼む」

 コアイは軽く頷いて、赤々と輝く柱へと向かっていった。



 二枚目の城壁、その門の辺り。

 赤い光柱の根元に目測を付けるが、まだそこに攻撃は加えない。まずは、近付いてみる。


 コアイは徒歩で城門をくぐり、光柱へ近寄っていく。すると不意に光柱の辺りから唸り声のような音が上がり、光柱の内側が白く変色した。

 それはコアイにとって不愉快な音、不愉快な模様だった。


 そんなコアイの不快感を察した……わけではないだろうが、光柱はその彩りを弱めていき、やがて消えていった。

 光柱の立っていた部分には、人影が一つ立っている。


「な、なんだこれ……?」

 人影から声が聞こえてきた。独り言だろうか、コアイは一旦立ち止まり様子をうかがう。


「なんだよ使命って!? ていうか、お前誰だよ!」

 人影は落ち着かない様子で辺りを見回しながら、声を上げている。コアイのいる側にも顔を向けたが、コアイの姿に気付いたかどうかはまだ分からない。


「うるさいですね……って何なんだよお前!?」

 人影は苛立った様子を隠さない。


「あぁん!? その、こあい? って女を殺せって、そういうことか?」

 人影がコアイの名を口にした。


「チッ、意味わかんねーけど、しょうがねえか……」

 人影は、声を上げるのをやめて歩き出した。



 少なくともあれは、味方となり得る者ではない。コアイは、彼の言葉、身振りから伝わる嫌悪感を根拠に……その点だけは確信していた。

 ならば、すべきことは。

 コアイは、魔力とともに風を想起する。


「風よ牙よ届け、『疾風剣(エアトゥアラ)』」

 小手調べを兼ねて、まずは簡単に風刃を一つ飛ばしてみる。

 すると意外なほど容易く、人影は悲鳴を上げて崩れ落ちた。


 コアイは周囲を警戒しながら人影に近寄ってみる。

 倒れていた人影は、切り刻まれて呻き声を上げる人間の男と見えた。


「ぐ……い゛でえ……夢じゃねえのかよこれ……」

「お前は何者だ……私がコアイだが」

 男から話を聞こうと、コアイは名乗ってみた。


「あ、あんたが、こあい? あんたを殺せば、元の世界に帰してやるって、声が……」

「それは、女の声だったか?」

 コアイは西の城市での出来事を思い浮かべ、男に(たず)ねてみる。


「ああ、そうだと思う……それより、助けてくれよ…………」

 そう懇願する男の傷は深く、コアイの眼には既に致命傷を負っているように映った。


「その女の声は、他にどのようなことを言っていた」

 コアイはもう少し、話をしてみようと質問を続ける。


「ああ、ほか……アッッ!?」

 何かの答えを思いついたらしき男の身体が突然発光し、輝きとそれに伴う微かな熱を放つ……


 輝きが消えた時には、男の身体も跡形もなく消え去っていた。

 何らかの魔術だろうか? しかしコアイの周囲には、魔力を(そな)えた存在は何一つ感じられない。




 言いようのない不快感を心に残したまま、コアイは城へと戻っていく。

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