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異世界第7話



「勝った〜!じゃあ、次も私からね!」


「‥‥次は、勝つ」



「しりとり」


「リス」


「スクランブルエッグ(朝食べたな。)」


「‥グリモワール」


「ルイベ(には日本酒だよねぇ。)」


「‥べ?べ‥勉強」


「うなぎの蒲焼(日本食が恋しい‥。)」


「‥貴族」


「串カツ(やばい、ビールが飲みたい!)」


「つ‥(つるぎ)


「牛タン(ビ‥ビールゥウウウウ!!)‥あ!」



「やった!エヴァの負けだねっ!僕の勝ちだ!」


ルイス王子は屈託無く笑った。



どうやらルイス王子は私と同い年らしい。昼食を4人で食べた後、お父様達から2人で遊んでおいでと言われた。初めはどう遊んだらいいのか悩んだが、私が王子にしりとりを教えてあげて今に至る。


私は前世で友達からしりとりマスターの称号を得たことがあるが、今回は3歳児相手だ。『る』攻めにはしないでおいてあげたよ。最後はつい欲望が邪魔をして負けちゃったけどね!


「でも、エヴァの言う単語は分からないのが多いや。何でそんなに物知りなの?」


「うっ‥、え〜っと、本が好きでそれで知ったの」


「そうなんだ、僕も本が好きだよ。さっきの言葉はどんな本に載ってるの?」


「え?!え〜っと、何だったかな!珍しい庶民の暮らしの本とかに載ってたのかな?あは‥あはは」


「へぇ。エヴァは庶民の暮らしにも興味があるんだね。僕もこの国の王族として、民の事をもっと勉強しなければならないなぁ」


や、嘘はついてないよ?!本は好きだし、庶民の暮らしの本は前世でグルメ雑誌とか見ていたし?!かなり苦しい言い訳で心が痛いけど‥。

てゆーか、ルイス王子が立派過ぎてビビるわ。3歳児の生態を観察しようって思ったけど、こんなにしっかりしてるもん?男の子ってもっと何も考えてないイメージだったけど、この世界の子供は皆んなこんな感じなのだろうか。


「エヴァ、ここには百合以外の花は咲いてないの?」


「あっちの温室の中には咲いているわよ。行ってみる?」


「うん。見たい」


「ええ、じゃあ行きましょう」


温室まで続くアーチのトンネルを2人で潜って行く。アーチ状に蔓薔薇の枝が幾重にも重なっていてとっも綺麗だ。そこを抜けたら木々に囲まれてた宮殿の様な外観の温室がある。


温室の手前にある木の下で、クロードが腕を頭の後ろで組み片足を立てて寝ていた。気持ち良さそう。

そっとクロードの近くを通り過ぎ温室の中に入ると、むわっとした湿っぽくて温かい空気が肌を包む。


私のオススメはお花じゃないんだけど、奥にあるアボカドの木だ。そろそろ大きく実ってる頃かなと思い、一緒にアボカド収穫しようかなーと思って振り向いたら王子がいない。慌てて温室を出ると立ち止まっている王子を見つけた。


ん?!!

何か王子がクロードの方をじっと眺めてるんだけど?!クロード人間の姿に変身したまま寝てないよね?!うん、大丈夫、精霊に戻ってる!じゃあ何でだ?!と思い、王子に話しかけた。


「ルイス‥どうかしたの‥?」


「いや、‥あの木の下に何かがいる様な気がして」


「!‥何か見えるの?」


「見えるって訳じゃないんだけど、何か違和感を感じて‥。でも気のせいかもしれないね、変な事言ってごめん」


そう言ってクロードの方から私の方へ顔を向けてこちらに歩いてきた。


え、マジで?!

よくよく王子を見たら、薄っすらと赤い魔力を纏っていた。気づかなかった!!私が言うのも何だけど、3歳で魔力纏うのは早くないのか?!


「ルイスはもしかして魔力を使えるの?」


「!‥‥うん」


「どうやって魔力を解放したの?!大丈夫だった?!」


自然に魔力を纏えるのは普通8歳以上って聞いていたから、私みたいに魔力解放した時に死にそうになったんじゃないかと心配する。


「いや、最近なんだけど気づいたら自然と魔力を使える様になっていたんだ。王宮魔導師が言うには、僕は魔力が人より多いからそのせいだろうって‥。」


そう言った王子は、私から一歩離れて俯いた。


「‥怖いよね?この歳で魔法が使えるって、気味が悪いよね。周りの人はみんな僕を見て怖がるのが分かるんだ」


彼は今にも泣きそうな顔をして言った。



実は公爵家でも使用人を含め、魔力を纏っている人は数少ない。市街地に足を運んだ時にも稀に見るくらいだ。

魔力量の個人差はあるが、本当はみんな平等に体の中に魔力を持って生まれてくる。しかし、子供の頃に魔力を纏った人と触れ合う機会の少ないまま成人してしまうと、魔力を纏えず魔法は使えなくなってしまう。そしてその事実は一般に知られていない。私もクロードから聞いたし。

魔力を使える人は貴族に多い。貴族に生まれた子供は幼い頃から魔力を纏う両親と触れる機会がある為に、自然と使える人が貴族中心に限定されてしまうそうだ。


そしてルイス王子が纏っている赤い魔力で使えるのは火の魔法。他の属性と違い、ほぼ攻撃魔法一択である。

魔力を使えない人からしたら、絶対的な権力を持つ王族の3歳児がそれを使えるとなると確かに怖いと思う。そんな恐怖の目で見てくる大人に囲まれた環境を思うと、私は一切迷うことなく告げることを決意した。



「私はルイスのことを怖いなんて全く思わないわ。まだ会ったばかりだけど、あなたは真面目で優しい人だってわかるもの。ちょっと負けず嫌いな所も私は好きよ」


エヴァはそう微笑んだ後、手から炎で出来た小さな龍

を作り出した。

自分の周りをゆっくりと一周泳がせた後、水魔法で同じ形の龍を出して頭上でその2体を相殺させる。

キラキラと霧のような雨が空から落ちてきた。


「実は私も魔法を使えるの。誰にも言っていないから2人だけの秘密でお願いね」



創造神の加護で全属性の精霊の恩恵を受けられるエヴァは虹色の魔力を纏っている。今の龍は、いつも精霊と魔法で遊んでいるうちに技術が上がって作れるようになったものだ。


それを見たルイス王子は目が飛び出すかと思うほどビックリしたけど、とても綺麗な光景に興奮した。


「すごいよエヴァ!!それどうやるの?!」



エヴァは今日1番のルイス王子の笑顔が見れて、心底喜んだのだった。






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