異世界第1話
「エヴァ、こちらにおいで」
銀色の艶やかな髪は腰下までサラサラ伸びており、透き通った白い肌の美女が私を呼んでいる。
陽だまりのような優しい笑顔には、エメラルドの宝石が埋め込まれているんじゃないかって思う程、淡いグリーンの輝きに満ちた瞳をしている。
日本人として黒髪黒目に慣れてる私にはとても刺激的なのです。
「ダッ、ダバブゥ〜バッ!(まっ、まぶしいぜ‥母様!)」
どうやら私は事故にあって死んだ後、新しい世界にこうして赤子として生まれ変わったみたいです。
周りの人と部屋の造りやデザイン的に、ここはヨーロッパ諸国の何処かなのかなぁ〜?と思いきや!
なんと!
魔法があるんです!!
実はここ、異世界なんですよ、奥さん!!
興奮しちゃうでしょ?!
初めは夢かと思ったけど、ここの家に仕えている使用人さん達はサラッと生活魔法(?)を使う。
ドライヤーかな?と思ったら普通に手から熱風出してるし、庭師は何も持ってない手から水を出して水やりするし。
生まれたばかりで言葉も体も思ったように動かせないのに心はアラサーっていうもどかしさはあるけど、次は誰がどんな魔法を使うかワクワクし過ぎて毎日が楽しい!
あ〜生まれ変わってよかった!ありがとう神様!
そうそう神様と言えば、
私が死ぬ時に助けた酔っ払いおじいちゃんが神様っぽい格好をして、すっごく申し訳なさそうに夢に出てきた。
もう死んじゃったから元の世界に人間として戻す事ができないみたいで、私の好きな世界に転生させてあげたいってこと。
助けてくれた事と、私を死なせてしまったお詫びに、おじいちゃんの出来る範囲で何でも願いを叶えてくれると言い出した。
それなら、私は魔法が使いたい!それもチートレベルで!ってわがまま言った気がする。
前世では肩こりに悩まされてて重い荷物とか持ちたくなかった記憶があるから収納空間の魔法とか、
一瞬で海外に行けるようになって旅行もいっぱいしたいな〜って思って瞬間移動の魔法とか特にねだった。
おじいちゃんは私を可愛い孫のように、分かったよ〜って言っておねだりを聞いてくれる夢。
人の良さそうな可愛い良いおじいちゃんだったなぁ。
あれは夢だったけど、ここには実際に魔法が存在する。実は本当にあのおじいちゃんが神様なんじゃないか?と、たまに思ったりするんだよね。
フワッ…
お母様であるエターリア・アイゼンハワーは私を優しく両腕で包み込み、魔法で絵本を浮かせて読み聞かせてくれる。
「うあう〜あっ(魔法最高〜っ)!」
「あら、エヴァは魔法に興味があるのかしら?いつも魔法に反応するわね」
「だうあ〜あ!うあういう〜!あうあうあ〜〜!
(そうよ、お母様!私、声も身体も自在に動かせるようになったら早く魔法の練習をしたいの!そしてこの世界を冒険してみたいのよっ!)」
「うふふ。魔法を使う私の事がそんなに大好きなのね〜。私もエヴァが大好きよ」
だめだ……何も通じないし、何も自分じゃ出来ない。
こんなんじゃ、いつになったら魔法が使えるのか分かったもんじゃない。
こうしちゃいられないわ!
今から魔力を感じる事だけでもできないのかな?
昔ラノベ小説か何かで、魔力を感じる方法を読んだことがあったなぁ。
確か……
魔力は温かくて人の体を常に流れている。
手を繋いで魔力を持った人から魔力を送ってもらう。
それを感じ取り血液が体中を巡るのと同じように魔力を循環させると使えるようになる。
うん、そんな感じだった気がする。
この世界の魔力がどんなものかは分からないけれど。
…よし、曖昧だけど試しにやってみよう!
丁度お母様が魔法を使いながら私を抱いてくれてるからその魔力に意識を集中してみて‥
あっ、これかな?
お母様から体温じゃなく、もっと別の奥深くに温かくて流れている何かを感じる。
よしよし行けそう!
それを私の中に注ぐように導いて、血液のように心臓から手足先、頭を通ってまた心臓へ循環させてみる。
体の構図が分かってると良いね!
あったか〜い。
お母様から流れてきた温かい何かが、私の体の中で澄み渡ってきた気がする。
『ドクンッ』
その瞬間エヴァーミリアンの身体が激しい光りに包まれた。