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進み続ける異世界の原点  作者: 雲煙模糊
箸休め
28/32

箸休め~魔王少女の夢はお嫁さん!~

 初めましての人は初めまして。

 リアルタイムでお読みになっている方はおばんでございます。

 久しぶりの方はご無沙汰しています。


小説作成時BGM: Another colony (転生したらスライムだった件ed1)

「ぅぅ――……もぅ! つ――ま――ん――な――いぃぃ!」


 建物全体を揺るがす程の声が講堂で響き渡る。

 近くで本を読んでいた蛇顔の老人は思わず椅子から転げ落ちそうになった。


「姫様、どうか真面目に取り組んでください」


「じぃや! つまんない! つまんないつまんないつまんないぃぃ! もっと面白いことしたいぃぃ!」


「……良いですか姫様。今学んでおられるのは魔界の歴史であり、魔王様が見聞きし、体験なさった事です。貴方様もいずれ魔王の座を継ぐものとして……そして、魔界を統べる者としてしっかr」


「その話は嫌! もっと面白い話をして!」


「ですから、そういう話ではなく……」


「それにあたしは魔王にはならない! あたしは……お嫁さんになる!」


「お、お嫁さん……というのは?」


「なに? じぃや、知らないの? お嫁さんというのはね……」


 髑髏、牙、鋼や銀をふんだんに散りばめた机が踏み台にされる。

 傷が付こうが汚れようが知ったこっちゃない。


「好きな相手と一生幸せに暮らせる存在のことなのだ!」


「……そ、そうでございますか。ですが、魔界はどうするおつもりで? 貴方様をお慕いする数多の魔族たちを……お見捨てになるおつもりですか?」


「そんなものはパパがやればいい!」


 人差し指をビシッと老人に向ける。

 ドヤ顔を隠す気は無いらしい。


「確かに魔王様の強さは健在です。ですが、魔王様に何かあった時……魔界の均衡を保つのは姫様という事だけはどうかお忘れなく」


「忘れない忘れない! それに、パパと勝負になるなんて……牙おじさんがいなくなった今なら、鱗のおっちゃん含めても三人くらいしかいなくない?」


 彼女が言う三人のうち、二人は魔物である。


「それに最近なんて、領土同士の小競り合いも滅多に無いし?」


 遥か昔、三人の魔物が魔界の支配者を巡って争いを起こした。

 力の加減が出来なかった三人は大陸全土を揺るがし、やがて彼らが生み出す衝撃に世界が耐えられない事を悟る。


「龍神様と魔界だけが全てではありません。下界、天界、自然界……魔王様の脅威になる存在は多くいらっしゃいます」


 魔界の統治よりも何よりも、彼らには共通した目的が有った。

 そのためには世界が必要であり、人間が必要であり、亜人が必要であり、魔物が必要であった。

 何千、何万年と月日を費やそうと許す事は出来ない。

 奴らを地上に叩き落とすまでは。 


「ですから姫様、魔界の者たちを守るために……はぁ……」


 蛇顔老人の溜息が部屋の底に沈殿する。

 理由は机の上に置かれた一枚の紙切れ。 内容は“気晴らしに散歩に行ってくる!”という簡素な物。行き先も帰宅時間も記されていない。

 哀愁漂う彼の眼差しは遠方にある大空を羽ばたく魔物たちに向けられた。


「いってらっしゃいませ」


 魔界も下界も、空の青さは変わらない。

 雲が漂い、日差しがその隙間から差し込む。

 老人はそっと書物を閉じ、傀儡だらけの講堂を後にした。

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