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進み続ける異世界の原点  作者: 雲煙模糊
桜庭龍太side
17/32

24杯目~今日は宴~

 初めましての人は初めまして。

 リアルタイムでお読みになっている方はおばんでございます。

 久しぶりの方はご無沙汰しています。

小説作成時BGM:【化物語】英語教師が歌う「君の知らない物語」【クレア先生】Bakemonogatari - Kimi no Shiranai Monogatari English ver.

 敵の数は僅か四人。こちらの兵力は百を超える。

 余裕ではないか。

 それにその内三人は女だと?

 魔界も舐められたものだ。

 勇者パーティーでも無い唯の冒険者どもめ。

 女は生け捕り、男は殺して構わん。

 行け! 今日は宴だ!



 下界と魔界の関所、ヴァールハイトを抜けてすぐの森。

 ここは低級魔物の住処となっている。

 低級魔物と言っても、人間界元い下界の野原にいるような魔物とは比べ物にもならないが。


『マスター、そちらに三匹向かいました』


 通信用魔道具から聞こえる幼い声。

 パーティーの斥候役を担う少女、人造人間ホムンクルスは高台から戦況を伝える。


「ありがとうクリオス」


 輝く葉が生い茂る林冠りんかんの隙間を縫う様に動く者。

 全身黒で統一されたラフな格好の少年は木々の間を移動しながら通信を済ませる。


「テノ、アリス、親玉は見つかりそう?」


 通信どおり、三匹のオークが現れた。

 左から斧、斧、剣。

 いずれも少年を敵として認識している。


『こっちにはいないわ』


 凛とした声が通信機から流れた。

 それを合図に剣が振り落とされる。

 少年は背中に背負っていた大剣で受け止めた。

 重苦しい音が魔物の顔を歪ませる。

 構わない。最初から一撃で倒せるなど思っていない。

 ぶんぶんと力一杯振り回す。

 額には汗。

 攻撃を仕掛けているのは魔物だ。

 だが、どの場面を切り取っても押しているのは少年の方である。

 刃の無い大剣はまだ一度も攻撃に転じていない。

 警戒しながら斧を持ったオークが参戦。

 後ろに目でも付いているのか、正確無比に背後からの一撃を避ける。


『まだ見つかりません!』


 今度は明るく元気な声が通信機から流れる。

 躊躇っていた最後のオークが飛び出した。

 これで三対一。刃が飛び交う。

 まるで一種のパフォーマンスのように避ける、避ける。

 普段息切れなどしない魔物が肩で呼吸をし始めた。


『マスター、そちらに増援が行きます。数は四体です』


 了解、そう応対する声に焦りは無い。

 先に戦闘を始めていたオークが少し距離を取り始めた。

 増援を待って体制を整える。

 作戦としては悪くないだろう。

 相手がこの男の場合は保障できないが。


「あ、僕のターン?」


 防御から攻撃への転。

 たった一歩の踏み込みで敵の懐に到着。慌てて武器を構えるがもう遅い。

 まずは一匹、重力に逆らって宙を舞った。


「グリォベッダ!?」


 残りの二匹に緊張が走る。

 気付いたら仲間が空へ飛ばされていた。動きを目で追うことは出来なかった。

 敵の背後にある大木から増援が現れる。

 安堵も一瞬、すぐに次の一撃がオークたちを襲った。

 今度はしっかりと武器で受け止める。

 仲間の二の舞になどなるものか。


『こちらテノ、頭目らしき奴を見つけた。これから応戦に――』


 魔物たちが最後に聞いたのはその通信のみ。

 己のリーダーが目の前の憎っくき冒険者どもを屠ってくれたのか。

 増援を含めた計七体のオークたちの意識がそこで途切れた。


『戦況報告。北北西エルフ様と頭目と思われる魔物が現在応戦中、南東アリス様が他多数の魔物と応戦中です』


「クリオス、そこからテノの援護をお願い出来る?」


『問題ありません。射程圏内です』


「おっけー、ならテノの援護と引き続き戦況報告を宜しく。僕はアリスのお手伝いに向かうよ」


『承知しました』


 地表から這い出る太い根を飛び越え、獣人娘アリスが奮闘している戦場へ向かう。

 ここまでは作戦通り。

 パーティーをバラバラにして戦闘を行えば、一人ずつ撃退する為に仕掛けてくる。下界と違い、魔力に満ち溢れた魔物たちは魔術の使用を惜しまない。

 森を抜けた先で待ち伏せされ、前にも後ろにも動けない状態で挟み撃ちされてはたまらない。


『戦況報告。南東において交戦中のアリス様が苦戦しておられる模様。遠距離からの魔術支援が厄介です』


「了解。それじゃあ……」



 《時間操作タイムレイン



 魔法や魔術に勝るとも劣らない秘術。

 異世界転生者である桜庭さくらば龍太りゅうたの固有スキルが発動した。


「さて、敵さんの数を数えようかな」


 何もかもが止まった世界でたった一人、少年は魔物の間をすり抜けて行く。

 さっきまで聞こえていた雄叫びも、葉っぱの揺れる音も、鳥の鳴き声さえ聞こえない。本当に彼を除く全てが止まっている。


「前衛が十五体、後衛支援が十二体、隠れて待機しているのが八体の計三十五体か。流石のアリスでもこの量はきついだろうな」


 体術を得意とする獣人娘の武器はその四肢。

 手甲を嵌め、鍛え上げた膂力りょりょくで次々と魔物をしていく。

 手の届く範囲、脚の届く範囲なら負けない自信がある。


「次は囲まれる前に後衛から倒す事を覚えないとね。さて、解除」


 再び葉っぱが揺れ、雄叫びが木々に反射する。

 飛行する炎や氷の刃が一斉に獣人娘を襲い始めた。


「っ!」


 咄嗟に防御姿勢を取る。

 足が止まる。

 手が止まる。

 敵はその隙を見逃さない。

 隠れていた八体と前衛の十五体、合計二十三体が彼女に飛び掛かった。


「よっと」


 少年はその隙を逃さない。

 無防備に武器を振り上げ、襲い掛かるその隙を。


「ガラグエラァッタ!?」


「グジゲロゲッ――」


 一直線に描かれた斬撃は円を生み、獣人娘を中心に波紋する。

 重力を味方にする為、離陸していた魔物たちに避ける術は無い。


「残り後衛支援十二体。アリス、大丈夫?」


「ご主人様! いつの間に来られたんですか!」


「ついさっきね。アリスは戦える?」


「大丈夫です! 戦えます!」


「よし、行こうか」


 遠くで聞こえた銃声を合図に走り出す冒険者二人。

 後衛で魔術支援していた魔物たちは何が起きたのか理解出来なかった。

 ほんの数秒前、敵は獣人族の少女一人。

 近接戦を得意とする武闘家の類。

 確かに動きは素早く、膂力も申し分無い。


「ギギルガガゲッケ!?」


 だが所詮武闘家の冒険者一人。

 一度に対応出来る数など知れている。

 多勢に無勢。

 戦況はこちらが優勢だ。


「はぁぁ!」


 ゴブリンの脳漿のうしょうが飛び散る。

 持っていた杖がカランコロンと音を立てて転がった。

 慌てふためく小鬼たち。

 戦況は冒険者の優勢である。


「余所見してる暇は無いんじゃない?」


 一刀両断。

 樹齢数千年の大木が真っ二つに割れ、下敷きになるまいと魔物が散り散りになる。

 単独行動する魔術使いなど恐れるに足らず。

 詠唱する口は拳によって塞がれた。


「お疲れ様ですご主人様! 助かりました!」


「お疲れ。テノたちは大丈夫かな?」


『戦況報告。エルフ様が頭目を捕らえ、無力化に成功。これよりエルフ様の下に向かいます』


「了解、こっちも終わったからそっちに行くね」


『承知しました』


 通信が切れる。

 周辺にはまだ息のある魔物が数匹残っているが、戦おうと武器を取る者はいない。


「それじゃ、僕たちもテノたちの所に行こうか」


「はい!」


 この日、魔界に衝撃のニュースが走る。


「テノちゃんたちは大丈夫ですかね!」


「クリオスの狙撃とテノの魔法なら大丈夫じゃないかな」


 魔界の森を制覇し冒険者。

 その力、勇者に勝るとも劣らず。

 我、魔王ベリアルはこれを祭りと称す。

 よって、手始めにの者を殺した者に賞金と地位を与えるとする。 

 腕に自信のある者、暇を持て余す者、金の無い者。

 皆自由に参加して構わない。

 したがひて我こそはと思う者、フェアフルングに見参せよ。


『こちらクリオス。エルフ様がマスターに早く来るようにとのことです』


「テノはせっかちだな……アリス、走るよ」


「了解です!」


 戦場から走り去る冒険者の姿を確認し、木の陰にそっと身を隠す者が一人。

 その名をベリアル。

 現魔界を統べる魔王三大勢力の一角にして、フェアフルングの統治者である。

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