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進み続ける異世界の原点  作者: 雲煙模糊
桜庭龍太side
15/32

18杯目~気まぐれ冒険者の魔界観光~

 初めましての人は初めまして。

 リアルタイムでお読みになっている方はこんにちは。

 久しぶりの方はご無沙汰しています。


 この度、読者の皆様のお陰でPV1,500、ユニーク800を突破する事が出来ました。

 ありがとうございます。


小説作成時BGM:【MMD艦これ】第六駆逐隊でMarine Bloomin【暁 響 雷 電】

「おぉぉ! とても綺麗です!」


 底まではっきり見えるほどの透明度を維持したまま、何千年のも変わらない時を過ごしてきた景色に犬娘が感嘆の声を上げる。


「確かに綺麗だね。魔界にもこんな所があるなんて、知らなかったよ」


「ここは下界でも有名な泉なのよ。確か名前も付いていた筈だわ、確か名前は……」


「“悪魔の子池”でしょうか?」


「そう、それよ。なに、ホムンクルスの間でも有名だったの?」


「いえ、そういう訳では有りませんが……マスターがよく話してくれていましたので」


「え? 僕?」


「あ、いえ、すみません……今のマスターではなく、その……」


「あぁ、リュウタを殺すように命じたマスターの事ね」


「テノ?」


「なによ、本当の事でしょ? それとも、まさか無かったことにすrぐへっ!」


 背後から意図しない衝撃を受け、エルフの少女はそのまま泉の中に落ちる。

 犯人は興奮を抑えきれなかった獣人娘だ。


「ぷばっ! ちょっと無駄乳! いきなり何すんのよ!」


「テノちゃん! この泉、冷たくてすっごい気持ちいい!」


「だからどうしたのよ! それと私にタックルかます理由とどう関係性があるのよ!」


「テノちゃんにも一緒に味わってほしくて!」


「一人でやってなさい! だいたい、あんた年いくつよ! 二十は越えてるわよね!?」


「今年で二十一!」


「だったら水浴びくらい一人でしなさいよ!」


 エルフの少女と獣人娘は泉の中で水飛沫を上げながら騒いでいる。

 仮にも魔界の地で……とはいうものの、魔物の気配が無い事は彼女たちが一番良く理解している。


「あはは、一足遅かったね。やっぱり獣人族の速さには勝てないや」


「マ、マスター、私は……」


「ねぇ、クリオス」


「は、はい、なんでしょうか?」


「前のマスターはどんな人だった?」


「前のマスター……ですか?」


「うん、どんな人だった? 優しかった? 怒りっぽかった? せっかちだった? マイペースだった? 綺麗好きだった? だらしなかった? 研究とか好きなタイプd」


「マ、マスター!」


「ん? どうしたの?」


「あ、その……あの……なんと言いますか……」


 歯切れの悪い青髪の少女は喉まで出かけた言葉を飲み込む。

 彼女が人造人間として生を受けてから四年余り。

 暗殺スキルや射撃の技術力は高くても、心の通わせ方はてんで不慣れなのである。


「クリオスはね、もしかしたら僕が前のマスターの話を嫌っているって思っているもしれないけど、そんな事は無いよ?」


「……そうなんですか?」


「うん、まあね。まあ、テノは嫌かもしれないけど、僕は別にそこまで思ってないよ」


「私にマスターを殺すようにと命じた人の事ですよ? 嫌では無いんですか?」


「そりゃあ、好きか? 聞かれると困るけど、別に嫌じゃない。現に僕はこうして生きているし、クリオスだって生きている。生きて、僕の為に前を向いて頑張ってくれている。僕の道の手助けをしてくれている。前のマスターがいなきゃ……有り得なかった未来でしょ?」


 少年は泉の端に腰を掛け、じゃれ合いながら水浴びをしている少女たちを見守る。

 水面には黒い服を着た彼の姿が映し出されている。


「そうですね。前のマスターが私を作らなければ、こうしてお話することも出来なかったかもしれません」


 青髪の少女も少年の隣に腰掛け、同じく少女たちを見守る。

 金色の瞳が水面上で揺れ動き、波紋によって姿を失う。


「でしょ? 僕たちは生まれる場所は選べないし、失敗も沢山するけど……それでも生きていれば楽しい事だって沢山あるし、失敗を成功の糧にすることだって出来る。生を受けたから出来ることさ」


「そう……ですね。分かりました」


「それに……僕の暗殺が間違いだったっていう保障も無いしね」


「え? それはどういう意味でしょうかマスぁっ!? ゲホッ! ゲホゲホッ!」


 澄み切った水で作られた水球が青髪の少女を直撃する。


「ふんっ、いつも偉そうにしてるから――って、あれ? なんでホムンクルスだけなのよ! リュウタ! どこなの!?」


「ふぅ、危ない危ない……油断も隙もなんだから」


 泉を覆う木々の上に座りながら高みの見物をする少年。

 ほんの一瞬前まで、青髪の少女の隣に座っていたように見えたが……


「あ! あんな所に! ちょっと! 降りてきなさいよ! てかあれを使ったわね!?」


「テノがいきなり水魔法を使うからでしょ? 魔物がいないからって、そんな事に魔法を使っても良いの?」


「あんただって魔法以上にレアにスキル使ってるじゃない! この卑怯者! チート野郎! チキン! 童貞!」


「えぇ……そこまで言われる? しかも一番最後は関係ないような」


「……マスターはそこで見ていてください。私がお相手します」


「へぇ、なに? 私とやろうって言うの? 人造人間ホムンクルスの分際で?」


「……エルフ様、お気持ちはお察しします」


「はぁ? 察するって何を察するのよ」


「私とマスターが話していた事に嫉妬されていたんですよね?」


「は? 何言ってんのあんた、頭大丈夫?」


「え? そうなの? テノも素直に言ってくれれば良いのに……気付いてあげられなくてごめんね?」


「水龍呼び出されたくなかったら、木の上の猿は黙ってて」


「ですが、私もこれだけは譲る気はありません」


「いや、いらないから」


「そうですか……あくまで、ツンデレというキャラを通す気なのですね」


「おぉ、クリオスちゃんは学習能力が高く――」


 少年の残像を水面から現れた槍が貫通する。


「ちっ、外したか……チート野郎め」


「ねぇテノ? 結構本気で刺しに来なかった?」


「私はいつでも全力少女よ。手を抜いたことは無いわ。特にあんたに関してはね」


「あ、これがツンデレのデレt」


 突如発生した荒波に攫われ、暗い水底に引きずり込まれる少女。

 エルフの彼女に容赦は一切感じられない。


「わぁ、容赦ないね。まあ、遊びも程々にして、夕食にしようね」


「あ、待てリュウタ――って、もういないし……ちっ、逃げ足の速い奴ね」


 少年は泉から少し離れた岩場で空を見上げる。

 名前の分からない星座、色の違う二つの月、異質な形をした雲……異世界に召喚されてからどれくらい経ったのだろうか?


「……さて、魔王は何を教えてくれるのかな?」


 言葉は宙を舞って景色に溶け込む。

 言の葉に乗せた思いが伝わるのは……どれほど先の事なのだろうか?

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