零杯目~よくあるお話~
初めましての人は初めまして。
リアルタイムでお読みになっている方はおばんでございます。
久しぶりの方はご無沙汰しています。
小説作成時BGM:まらしぃです。ピアノ弾きます(piano live)
「グリアッ!?」
「ガハラッタ!?」
次々と切り裂かれるゴブリンたち。
総勢五人の少年少女パーティーがダンジョンの中を進み続ける。
「これで六匹目だ」
「ゴブリンしか出て来ないな。罠らしい罠も無い」
先頭の剣士がぼそりと呟き、隊列四番目の黒魔法使いが相槌を打つ。
剥き出しの剣には赤い血がべっとりと付着している。
「グレット、剣の血、拭いてあげ、る」
「あ、あぁ、ありがとうジト」
グレットと呼ばれる剣士はハーフエルフの少女に剣を渡す。
手拭いが汚れるのはこの際、仕方ない。殺したゴブリンで拭くのも気が引ける。
「気に、しないで。ジトたちは、パーティーで、仲間、だから」
常に周囲に気を配りながら、仲間の装備への配慮も欠かさない。
このパーティーの斥候の役割を果たしているのは彼女である。
「ねぇねぇ! あっちに面白そうな部屋がっいだっ゛!」
「勝手な行動はやめろ。今はダンジョンの中だ、森と違う」
「分かってるよ! でもいきなり叩く事無いじゃんアレン!」
後頭部を抑えながら涙目の獣人娘。狐耳が垂れ下がっている。
「お前は落ち着きが無いからな。未然に防ぐにはこれしかない」
禍々しい長杖と藍色のローブは魔法使いの証。
隊列四番手、黒魔法使いことアレンは目の前の獣人娘から目が離せない。
「私だって時と場所くらい考えますー! 成長してますー!」
「だと良いけどな」
「ふっふっふ! 見よ、このワガママボdいっ゛――!」
「おかわり欲しいか? 嫌なら前見て歩け」
うぅ、と唸る獣人娘は後頭部を抑えながら歩みを進める。
そんな四人の後ろをトコトコ付いて行く修道服姿の少女。
胸元には翡翠色の月模様の刺繍。心做しか、何かに怯えているように見える。
まあ、無理も無い。
彼女は今日冒険者になったのだ。
ギルドで冒険者登録を済ませ、カウンターの受付嬢から冒険書を受け取り、彼等四人にパーティーに誘われた。
先頭から剣士グレット、斥候ジト、格闘家ソレイ、黒魔法使いアレン。
皆同じ村の出身で、冒険者になったのは三日程前らしい。
「ティエラさん、そっちは大丈夫ですか?」
「あ、は、はい。特に異常はありません」
「分かりました。ジト、この辺に罠は無いか?」
「無いと思う、けど、壁に埋め込まれている、反射している鉱石が、気になる」
「罠の類か?」
「起動式の罠、ではないと思う。だけど、不思議な感じが、する」
ハーフエルフは壁に近づき、七色に滲む鉱石を眺める。
確かに変わった物質ではあるが、ここはダンジョン。自分たち新米冒険者が見慣れない鉱石など数多存在するだろう。
「触って……分かってる分かってる! 触らないから! 触らないから叩かないで!」
「触るなよ? 例え罠じゃないとしても陸な物じゃない可能性が高いんだから」
獣人族は古来から好奇心旺盛で有名な種族だ。
動くなと言われれば動きたくなるし、触るなと言われれば触りたくなる。
獣人娘も例外じゃない。
よって、黒魔法使いの苦労も絶えない。
「まあ、確かにジトの言う事も気になるが……先に進むか。ここまで一本道だったし、回れ右をして走れば出口まですぐだからな」
「大丈夫、かな?」
「少しでも危険と感じたら迷わず撤退、ここまでの罠は全て潰してきた。かなり慎重に進んでいるから大丈夫だろ」
パーティーのリーダーは剣士グレットである。
先頭にいる理由は明白で、彼が倒せないと判断した魔物と遭遇したら一目散に撤退命令を出すためだ。当然魔物は追ってくるだろうが、パーティーには黒魔法の使用回数が合計三回も残っている。入口まで逃げ切る事が出来れば問題ない。
一行はダンジョンの奥へとつま先を向ける。
呼吸音が嫌に響いた。
足音は反響して不気味さを増している。
修道服の少女は今にも逃げ出したい気持ちで一杯だった。
何が怖い? ゴブリン? トロール? それともオークの群れ?
違う。
怖いのはそれらを含む闇の存在。
何が出てくるか分からない闇の存在に恐れを抱いているのだ。
冒険者としては致命的であり、同時に必要最低限の素質でもある。
「あ、あの――」
そろそろ引き返しませんか、なんて自分には言えない。
折角誘ってくれた仲間たちだ。しかも今日冒険者になったばかりの自分をである。
勝手についてきた挙句、己の弱さ故に撤退を提案するなんて出来る筈が無い。
それにまだ何も起きていない。
遭遇したのはゴブリンが六匹。
いずれも剣士が仕留めた。
「ん? どうかしましたか?」
「い、いえ。大丈夫です」
「そうですか。何か有ったら言ってくださいね」
「……むぅー! アレン! 私もティエラみたいに優しく扱ってよ!」
「態度を改めて出直せ」
「なんでよー!」
獣人娘は修道服少女との差に不満気だ。
何を今更、と呟いた魔法使いの言葉が届かない程に。
「ここまで一本道、か。魔物もゴブリンだk」
「っ! グレット! 前!」
ハーフエルフの少女が叫ぶ。
前にはフードを被ったゴブリンの群れ、視覚確認にて四匹。
手にはいずれも杖が握られている。
先頭の剣士が迷わず走り出し、一番手前のゴブリンを切り裂く。
剣先の血が乾く前にもう一つ奥の獲物へ。
斥候担当の彼女もナイフで応戦。剣士と一緒に二匹目を確実に仕留める。
しかし、先行のアドバンテージもそこまで。
次は魔物たちの番だ。
「魔術、来る!」
またしてもハーフエルフの声。
「flguoa!」
魔術によって生み出されたの炎の玉。
数は一つ。大きさは拳サイズだ。
「炎だ! 後方、警戒しろ!」
今度は剣士の声が響く。
斥候のハーフエルフは難なく躱した。
「了解!」
獣人娘も斥候に習って躱す。
しかし、躱した先で突如異変が起きた。
彼女の背後には先ほどの七色に滲む鉱石が顔を出している。
通常であれば炎は鉱石にぶつかって消滅する。
だが、消えない。
それどころか、鉱石と接触した瞬間に炎が膨れ上がった。
大きさにしておよそ先ほどの二倍程度。
誰かが声を上げる前に反射し、魔法使いの少年を襲った。
「――くっ!」
背後に衝撃が走り、そのまま少年は壁に叩きつけられた。
ローブは焼け焦げ、背中は広範囲で火傷している。
身体は壁と衝突した衝撃で上手く動かせない。
肺も動揺している。
「アレン!? 大丈夫!? ねぇアレン!」
剣士は後方で何が起きたのか理解出来なかった。
魔術によって生み出された炎がアレンを襲った、それぐらいなら予想出来る。
だが、あの負傷具合はどうした? ゴブリンの放った魔術はあれ程までに威力のあるものだったか? それに負傷しているのが背中? 正面ではなくなぜ背中を? まさか、後方から敵が?
聞こえてくるのは獣人娘の慌てた声。
酷く動揺しており、倒れている魔法使い以外は視界から消えている。
「グ、グレット! 指示、を!」
迷いが生じれば人は硬直を強いられる。
そして魔物はその隙を見逃してくれる程お人よしではない。
「fmsuu!」
奥で構えていたゴブリンが叫び、辺り一帯が漆黒の煙に包まれた。
二度目の魔術の発動を許した。
闇は魔物の味方である。
決して、冒険者に味方しない。
「グリアハッタ!」
「グエルリアッタ!」
視界の遮られた状態で魔物たちの声が聞こえる。
「グ、グレッ――」
鈍い音がした後、ハーフエルフの声が消えた。
「て、撤退! ジト、撤退だ!」
もはや遅い。
判断は迅速かつ正確にしなければ意味が無い。
戦場は優柔不断な者に容赦などしないのだから。
「グレット! ジト! どこにいるのっ!?」
よくある話だ。
辺境の村に近い年の子供が四人。
森に出掛けるにしても遊ぶにしても、いつも四人一緒の生活。
そんなある日、村に魔物が現れた。
「ソレイ! アレンに構わず出口へ走れー!」
頼れる大人は近くにいない。
背後には家族と呼べるくらい大切な仲間がいる。
震える足腰にグッと力を入れ、落ちていた木の棒を拾い、剣に見立てで振り回す。
「ア、アレンを見捨てる事なんて出来ない!」
急所命中。
脳漿をまき散らして魔物が倒れた。
勝った、殺した、魔物を殺してやった、皆を守れた。
なんだ、思っていたよりも大した事無かったじゃないか。
怯える必要なんて無かったんだ。
「俺が拾って行くから大丈夫だ! 構わず走れー!」
そうだ、俺はいつか冒険者になろう。
冒険者になって魔王を倒し、村の皆が魔物に怯えなくても良いような世界を目指そう。
「う、うぅぅ! 絶対に! アレンをお願いねグレット! ほら、ティエラも行くよ!」
皆、承諾してくれた。
ジトは危険だからと言って中々了承してくれなかったが。
それでも、最後には俺の話を聞いて納得してくれた。
嬉しかった。
「くそっ! アレンはどこ――っ!」
急所命中。
また一人、倒れる。
いつかのあの魔物と同じように、脳漿が辺りに飛び散った。即死だった。
結局、彼らのパーティーはどうなったのだろうか。
秘められた力に突然目覚め、殺された仲間の仇を取った?
それとも運良く逃げ延びて、悲しみに明け暮れている?
最後を知る者、それはたったの一人の冒険者だけであった。
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☆☆私が最近読んだお話もとい独り言(2019.3.19)☆☆☆
題名:異世界における英雄とアヴェンジャーのあり方は。
作者:朱音ゆむし 様
媒体:小説家になろう
URL: https://ncode.syosetu.com/n8550fc/
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕
キーワード: R15 残酷な描写あり 異世界転移 ダーク 魔法 ファンタジー 異世界 男主人公 シリアス 三人称
連載:52話
文字数:106,175文字
私の3人しかいなかった「逆お気に入りユーザー」に突如、四人目が現れた。
それが朱音ゆむし様でした。
勿論、お話を知ったきっかけもここから。
笑顔でパーティーに迎えてくれた可愛い女の子。
突然の仲間の死。
謂れのない誹謗中傷。
残った仲間同士での仲違い。
勝手な転移から発生した責任と英雄の力。
この先、彼は報われるのか。
彼に手を差し伸べてくれる者は人なのか、それとも人を超越した何かか、またまた魔物か……
さてさて鬱展開にダークファンタジー、私にはあまり耐性が無いようだ。
読みながら「うぅ……おぇぇ……」とまではいかずとも、胸中にしこりが発症。
しかも単純な私は、主人公に感情移入して「てめぇ……地面に埋めんぞ?」なんて汚い感情もちらほら。ダメだな、他作品様に鏡のような役割を持たせてしまうなんて。実年齢は15歳を越しているが、まだまだR15をすんなり読めそうにない。残酷な描写にも少しずつなれていかなくては。
異世界転移&魔法。
実際に行きたいかと聞かれれば、かなり考えてしまう。
理由は明確であり、男主人公の物語はチートやらハーレムがあるが、自分には上手く使いこなせる自信がない。絶対に悪用してシリアス展開に突中してしまう。三人称の語り手からすれば、主人公の噛ませ犬or強敵の演出効果に出される小悪党程度としか認識されないだろう。
結果、私には異世界転移も魔法も向いていない。
私みたいな小心者は安定企業に就職して、頑張る男主人公を応援するのに限る。
がんばれ。




