01夜:その日は唐突に。
KUROKAです。
初めのうちは書けるだけ書いたら上げて行こうと思います。
徐々に定期的にあげるようになりますけど、悪しからず。
それでは第1夜、どうぞ。
「あー、どっかに落ちてねーかなー...出会い。」
クーラーの効いたマンションの一室。
少年はベッドの上で天井を見ながら1人ぼやいた。
伊佐美 憂蘭。
今年の4月。晴れて大学生となった憂蘭は念願のキャンパスライフを夢見て大学の門をくぐった。
のだが。
「女友達の1人もできやしない...」
入学してから、はや4ヶ月。
彼の夢見たキャンパスライフの計画は大幅にズレていた。
「なぁ、俺。なぜ俺はここにいる...」
彼の計画では、4月に女の子友達を作り、5月には彼女ができてヤッホー。
3ヶ月はデートを楽しんで、そして8月はーー
「童貞卒業...のはずだったよな...」
そう。童貞卒業予定だった。
いま彼はその夢どころか、男友達もろくにできず、完全に孤立してしまっていたのだ。
「一体何を間違ってしまったんだ...」
全部だ。
後悔の念に駆られながらベッドの上でゴロゴロする憂蘭。
彼は夏休みに入ってからというもの、ずっとこの有様ではあるが、なにも童貞卒業を諦めたわけではなかった。
ピロンッ。
「お!来た!」
音の正体は無造作に頭の方に置いていたスマホ。
憂蘭はすぐさまスマホを手に取り通知音の出元であるアプリを慣れた手つきで開いた。
「マッチング成功!へぇ...可愛い子じゃん!」
そう。憂蘭は1人暮らしをいい事に最後の手段として夏休みが始まってから、ずっと出会い系サイトをしているのだ。
「でもなぁ...ここまでは行くんだけど...。」
ここで少し説明しよう。
薄々わかっているとは思うが憂蘭はダメ人間だ。
夏休みが始まって1週間。マッチング成功率は結構高い方だった。
だが、彼は相手に対して無茶な要求が多い人間だった。
例えば、女性から1万円でホテルと言われれば、
ピロンッ。
憂蘭【5000円でお願いします!】
ピロンッ。
女性【本気ですか?】
ピロンッ。
憂蘭【はい!めちゃくちゃ本気です!】
その後、待てども女性から連絡は来なかった。
またある日はーー
ピロンッ。
憂蘭【お金ないんでホテル代払ってください!】
またまたある日はーー
ピロンッ。
憂蘭【車がないんで自宅に来てください!】
この調子でどれも1、2通で終わる始末だった。
だがそれ以上に驚くのは、彼が全く成長しないことである。
いまマッチングした相手に憂蘭は条件を出される前に先手を打ってこう書いた。
「送信っと」
ピロンッ。
憂蘭【どこでも行きます!お金はなしでお願い〜!】
今回も何も成長していなかった。
きっと送られた女性は既に次の男性とマッチングしているだろう。
(今回もダメかなぁ〜)
さすがに憂蘭はこれじゃ会ってくれないことは理解していた。だが、
(いや、今日の女の子はもしかしたら...!)
という無駄な期待を持ってやっているのだ。
いつか自分の要求を呑んでくれる女性が現れるだろうと、まるで取れないクレーンゲームを粘るように頑張っていた。
「あー、もう昼か〜。コンビニいこ」
ピロンッ。
「お、返信きたか」
憂蘭がコンビニに行こうとベッドから起き上がったとき、先程マッチングした女性から返信が返ってきた。
相手からの返信を見る憂蘭。
女性【お金はいりません!×××まで来てください】
「...まじかよ」
その日は唐突に来た。
スマホを持つ手が緊張と喜びで震えだす。
心も踊り出した。そして、
「よっしゃー!童貞卒業だぁああ!!」
もう1度言おう。クズなのだ。
「え!しかもめっちゃ近いじゃん!歩いていける!」
幸運が重なったクズ...憂蘭はコンビニに行くことも、お腹が空いてることも忘れたように急いで準備をしてマンションを出た。
同時刻。
「今日も“奴ら”が掛かったわ。今から会いに来るみたい」
少女は暗闇に声をかける。
「どうする〜?今回のは反応も感じ取れないくらい雑魚みたいだけどぉ〜」
暗闇からおっとりとした声が返って来た。
「雑魚なら生かしておくだけ時間の無駄よ。瞬殺するわ」
少女はそういうと、目的の場所に歩き出す。
目的の場所ーー憂蘭の元に。
今回も読んでくださりありがとうございます。
前回に引き続き至らない点があれば助言頂けると幸いです。この度KUROKAはツイッターも開設しようと思っています。詳細は後程。ではまた。