田植え&父&犬神家
ゴールデンウィーク中の話に戻りますが。
不本意ですがいつも、みんなが休みの連休に休暇がぶちあたる船乗りの主人。
去年と同じく、私の家におりました。
水田を持っている私の実家。
ゴールデンウィーク連休中にいつも田おこしや代掻き、田植を行います。(収穫した米は自分の家と近所の方に売ったりする程度)
去年と同じく、主人は私の父を手伝ってくれました。
トラクターの運転が割と面白い、と話す主人。楽しいなら、なによりです。
農作業用の機械というのは年々レベルアップしていまして、昔と比べると作業時間が本当に短縮されました。
たとえば、私が子供のときには田植に三日ぐらいかかったものですが。
現在の最新田植機を使うと、半日で済んでしまいます。
加えて、最近のトラクターはかっこいい。カタログなんかみると本当にスタイリッシュ。
去年でしたか。
息子とともに保育園に登園した時、同じクラスのお友達が(おじいさまが農業をされているお友達)。
「☆☆ー! おじいちゃんからトラクターのカタログ借りてきてん。どれがかっこいいか一緒に見ようや!」
とカタログをもって走ってきてくれたことがありました。(まず、都会の保育園では無い会話)
さて、話は戻りますが。
田植をひと段落終え、夕方には主人だけが帰ってきました。
夕食を終え、真っ暗になり、風呂に入ったあとも私の父は帰って来なかったんですね。
――お父さん、大丈夫なの?
主人が心配しだしました。
――なにかあって、帰って来ないんじゃないの?
私たちは心配しておりませんでした。
私がいうのもなんですが、父はかなりのマイペースでスローペース人間であります。
牛乳買ってきて、と頼んだら、車で2、3分の距離のスーパーに行って一時間後に帰ってきたりします。
(なににそんなに時間がかかるのか分からない)
そういう父ですので、私を含めた家族はそんなに気にも留めておりませんでした。
――なにかあるって……田んぼで命の危険にさらされるような事件なんか起こる?
私は聞き返しました。大雨の後とか、小川にハマって流されるとかそういうことは良く聞きますが。
――たとえば。……田んぼの真ん中でバランスを崩して手をついて、顔もついて、抜けなくなったとかさあ。
……犬神家の一族、スケキヨさんのあのポーズが思い浮かびました。(ちょっとちがう?)
そういえば昼間。
田植を手伝っていた長男が田んぼで足が抜けなくなり長靴から足がすっぽぬけて後ろに尻もちをついてどろどろになったことを思いだし。
私も本当に小さい子供の頃、田んぼの真ん中で足が抜けなくて立ち往生し、恐怖のあまり泣いたことを思いだし。(水田の泥の中を歩くというのは本当に力がいるのです)
――あ、ありえんことではないな……
ちょっと私も心配になってきました。
母はほっとき、と笑っていましたが。
どうする、様子見に行ってみる? と主人と話しましたが結局、それからも私たちは見に行かず。
……当の父は、夜十時ごろに無事に帰宅しました。
何をしていたかというと。
イノシシよけの柵を立てていたそうです。
視界の悪い中、苦労して懐中電灯で照らしながら。
わざわざ、暗い夜にしなくても。
明日の昼間にすればいいのに。
全員が心でそう思いましたが、いつものことなのでツッコみませんでした。