子供の残虐性
『さあ、お前の罪を数えろ!』
歴代仮面ライダーの中で一番かっこいい決め台詞は、「仮面ライダーW」のこのセリフだと私は思っておりますが皆さんはいかがでしょう?
「仮面ライダーW」にハマっていたときの息子はことあるごとにこのセリフを連発。
言葉を投げつけられた私は
『おかあさん、罪なんかありすぎてそんなん数えられへんわ』
なんぞと答えておりましたが。
さて、私が今まで一番罪を犯したのは幼少期だと思います。
でも、これは皆さんも同じではないでしょうか。
無駄な殺生を繰り返した時期としては。
とりあえず、アリジゴクを発見したなら何かを落としてみるのが子供だと思います。
以前にも申しましたが私はアリが怖いので、落とすのはもっぱらダンゴ虫かテントウ虫でした。
(主人なんかはアリを落とさずして何がアリジゴクか、あのアリの足が砂にとらわれるのを見るのが醍醐味なのに、と私に申しておりましたが)
古代ローマのコロッセウム闘技場の観客心理、てあんなものでしょうか。
ナメクジを見つけたら塩責めにする。大きな蜘蛛の巣を見つけたら、何かを捕まえて網に放る。それが子供というものでしょう。
――以下、私の記憶にある幼少期に犯した犯罪歴の数々です。
1 トンボを連続して何匹捕まえられるか挑戦中、三十匹以上のトンボを虫捕り網にためたまま転び、網が水たまりにぼちゃん。網の中のトンボを一瞬で水死させる。
2 天気のいい日、大量につかまえたおたまじゃくしを金魚すくいの袋に入れ、車のボンネットに置いたまま遊びに行き、釜ゆで死させる。
3 拾ってきたカブトムシの幼虫をサナギまで育てたのはいいが、遊びに来た友達に『見せて』といわれて『しょうがないなあ』とスコップで掘り起こそうとしたところ、一発で胴体をまっぷたつ。
4 アリの行列を見つけて、幼馴じみとともに油をかけ、ライターで火を点ける。
5 モグラを罠にかけて捕まえ、バケツの中で飼育しようとするが一晩で餓死させる。
きっと、覚えていないだけでまだまだ罪は犯していると思いますね。
そんな子供時代に母が『地獄』というおそろしい図がのった本を私に見せまして。トラウマになりました。
私は死んだら絶対に地獄行きだと思い、怖くて泣いたことを思い出します。
魔除けの不動明王がはってある家のトイレ(その当時はぽっとん便所)に怖くてしばらく一人で行けなかったこともありました。
だから、私は自分の子供には決してあの『地獄』の本を見せはしない、と心に決めております。
なぜ、今回こういうテーマをとりあげているかと申しますと。
以前、衝撃をうけたことがありまして。
母が、家の前の水田でアオサギのヒナ鳥を拾ってきました。
なかなか可愛い。
大きな水槽に入れ、カエルを捕まえて入れてやるとパク、と食べます。
長男もはりきってカエル獲りに精を出しましたが、ある日、とってきたトノサマガエルが大きくてですね。ひな鳥には大きすぎて食べられない。
『あかん、大きすぎるわ。小さくしたらな』
そばに居た母がそう言った途端、長男はすたすたとハサミをとりに行き、戻ってきてチョキン、とそのカエルをまっぷたつに切断しました。
何のためらいもなく。
見ていた母と私は言葉無く顔を見合わせました。
ひな鳥は死んだものは絶対に食べません。
だから、そのカエルはまさに無駄な殺生の犠牲となってしまいました。
どき、としました。
『子供ってあんなもんやで』
後で母がそういいましたが。
私もそんなものかもしれないと自分の子供時代を思い返していたわけです。
男の子が幼少期に、虫などを殺生するのは成長段階で大事なこと――という説をどこかで聞いたことも思い出し。(定かではありませんが)
息子の行動は特に異常ではないのだろうと思いたかったのです。
少し心配になった理由といいますのが。
最近、海外ドラマの『クリミナル・マインド』(犯罪心理捜査班の話ですね)で犯人の正体が幼い子供という話を見てしまってですね。
そういう子は予兆として猫や犬などの小動物の殺生を繰り返していることが多い。
今回はカエルでしたけれども。息子はヒナ鳥に餌として与えようとしていたわけですけれども。
親として子供の動向には目を配っていなければならないな、とひそかに思った私でした。