ぎっくり腰4
入院一日目の夜。(団体部屋が空かずに個室でした)
トイレの心配は消えましたが。
腰の方は相変わらずです。
容赦なく、また勝手に筋肉は収縮して自己主張してくるんです!
分かった! あんたのことは忘れてへん! めっちゃ、傷ついてるんやな! だから、自己主張やめて!
動いていないのに何度も襲ってくる痛みに、涙目で夜を乗り切りました。(眠れないかと思いましたが、少しだけ眠れました)
何度も言いますが。
出産の痛みの方がはるかにマシですから! 全然、まし!
(だから出産の苦痛に怯えていらっしゃる女性の方々。全然、怖がらなくていいですから! あんなのギックリ腰の痛みにくらべたらヘボです、ヘボ!)
この間の背中のギックリを起こしたときは、出産後でしたから背中に直接痛み止めの注射を3か所くらい打ってもらったことを思い出し。
あの時も薬、全然効かへんとか思ってたけど、しっかり効いてたんやな。
猛烈に痛かったけど、トイレまで行けたし。
なんてことを思ったり。
いや、それよりもあの時よりウチ、根性なくなってもうたんやろうか。
おかあさん(私の母)が骨折したとき(腰椎圧迫骨折です)は、痛み止めとかは飲んでたと思うけど、トイレに行かないと恥ずかしい、て言って根性でトイレまで歩いて行ったのになあ。(看護師さんからは絶対に動かないでくださいね、て言われてたのにもかかわらず)
ウチ、根性なしなんやろうか。
壮絶な痛みはやはり人を変えるのでしょう。
普段の私からは考えられないような弱気なことを考えてしまったりするのです。
なんでこんな痛い目に遭わなきゃいけないのやろう? ウチ、こんな罰をうけるようなそんなに悪いことをしたんやろうか?
うう、と少し涙ぐんでみたり。
そんなときに、時折、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきまして。
そうです。ここは産婦人科病棟。
新生児室から元気に泣く赤ちゃんの声がここまで聞こえてくるんですね。
赤子の声は不思議。
そばで聞いている人にはうんざりするような声に聞こえるかもしれませんが。
なんだかほっこりしてあたたかい気持ちになるのです。
そんな赤ちゃんの声に、少し元気をもらったりして。
入院二日目の朝を迎えました。
朝食を看護師さんが運んでくださいました。
汁ものはなし。ごはんは俵型ににぎってくださったおにぎり。
お茶は、水差しで飲みます。
ベッドにテーブルをくっつけ、そろそろと横向きの姿勢をとり、手を伸ばして口に運びます。
入院中、激しい痛みが治まり起き上がれるようになるまでの4日間、私はインドの方のように手でごはんを食べました。(右向きしかできなかったので、不浄の手の左手で食べちゃいましたが)
これが、なかなか難しい! 手で食べるのって相当な技術がいることを知りました!
箸よりむずかしいんじゃない?
長女とかいまだに手で食べるときがあるけど、あれ、あの子、上手に食べてたんやな! と、感心しました。
寝ながら歯磨きなんて初めてしました。(できるもんなんですね、あれ!)
それでも普段ならしない不自然な姿勢で行う動作のオンパレード。
首だけ上げて食べてると、筋肉がはって、肩こりや左上半身に軽く筋肉痛をおこしました。
姉や父、長男が昼間にお見舞いに来てくれました。
お菓子とかプリンとか良かれと思って買ってきてくれたのですが、そんなのを食べる気にはなれず、持って帰ってもらいました。長男は保育所で折った折り紙のチューリップの花を何本か持ってきてくれました。
なんとジャイ子は熱が出たそうで。母が病院に連れて行ってくれているとのこと。
ああ、ありがたい。
本当にウチ、実家暮らしで良かった!
これが前に横浜で暮らしてたときのように核家族で旦那不在なら、どうなってたんやろう?
父母の存在のありがたさを噛み締めました。
その日の夜。
主人から電話がかかってきました。
私の状況に驚く主人。前も一回、起こしてるんだから気をつけないと。みたいな会話をしばらくしてから。
『そう……でも、こんな時に◯◯には悪いけど……なんか……◯◯が弱ってると……すごいソノ気が……』
『…………』
主人のアホな物言いに言い返す気力もなく、スルーして電話を切る私。
なんでやねん。
前もウチが風疹で弱ってる時にそんなこと言うとったな。
アレはなんなんでしょう?
電話を切った後でその理由を考えてみました。
弱っている様子が男の嗜虐心を煽るとか(し、しぎゃく?)そういう事やろうか?
昔の中国で纏足をした女の人がフラフラ歩くか弱い姿に色気を感じるとかそういう感じ?←(刺激系主婦漫画雑誌、『漫画グリ◯童話』で得た知識)
……ギックリ腰の最中に襲われた女の人とか古今東西で居てはるんやろうか。うわ、たまらんな。
……は! 今、犯人が(←は、犯人?)病室に乱入してきて襲われたらどうしよう。
身動き出来へんしひとたまりもないな!
確実に悶絶死するやろ!(←痛みのあまり)
いや、それよりも痛みのせいで気ぃ失うやろか。いやいやそれ以前に痛みのあまりショック死やな!
……なんてことを真面目に考えてしまったり。(もはや痛みのあまりマトモな思考回路を完全に失っております)
そんな感じで入院二日目は過ぎていったのでありました。