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ぎっくり腰2

 前回の続きですが。

 昼前に父が家に戻ってきまして、動けない私のために焼きそばを作ってくれました。

 ええ、カップ焼きそばです。夜店の一〇ちゃん、です。

 悪阻全開でもある私。

 なぜか、焼きそばなら食べれるのです。

 うつ伏せになり少しのけぞりながら、ちまちまと焼きそばを食べました。(そう、このときは少しのけぞることができました)

 こういうときでも、気持ち悪くてもやっぱりお腹はへるんですね。

 トイレの回数が少なくて済むように、お茶は少しだけ飲みました。


 本当はガンガンに腰を冷やすべきなのでしょうが。

 季節は冬真っ只中。そして何せ私は妊娠中。不安定な初期9週目でもあります。

 そのまま、脚だけこたつに入れてじっとしておりました。


 それから父は、知り合いの法事に行くために出かけました。


 家には私と耳の遠い祖母(しかも風邪気味)の二人!

 動けない私のために祖母は気を利かして、亡き祖父が使用していた尿瓶を持ってきてくれました。


「便所行けへんやろ、これ使い」


 いやいや、トイレはトイレでするわ!


 私はそう思いました。

 トイレぐらい気合でいけるやろうと。ゆっくりとなら。這ってでも。

 動けなくなってからもうかれこれ五時間あまり経過していました。

 よし、そろそろトイレ行ってみようか。


 気合を入れ、そっと上体を起こしてみました。そろそろとほふく前進しようとしたとたん。


 ビキーン!!


 今まで経験した中でも最大級の痛みが!


「うあっ!」


 あかん、腰を伸ばさねば。

 あわてて(でも動きはゆっくりで)今度は仰向けになりました。


 涙が出ました。


 痛い。めちゃめちゃ痛い。

 あかん。無理! ほんまに無理!

 これはだめです。トイレ行けそうにない!

 どうする!?


 見ていた祖母が今度は亡き祖父が使用していた大人用おむつをもってきてくれました。


「尿瓶も無理やわ。着けたるさかい、お尻上げ」


 そう言ってジャージを脱がそうとしてくれました。

 うん、私ももう今日はおむつしか道はないと思う。

 そう心に決めて少しお尻を動かそうとした矢先。


 ビギーン!!


 先程と同様の痛みが。

 うんぎゃああああ!!


「あ、あかん……」


 涙目で私は祖母に首をふりました。

 オムツも着けられそうにありません!


 そのまま、今度は寝返りも打てないまま5時間が経過しました。


 どうしよう、トイレ!?

 夜には少し、マシになったりする? いやいや、無理やろう?!

 必死に考えながら体勢を動かさぬようピタリと固まる私。


 夕方になり母も父も帰宅しました。

 父が保育所に子供たちを迎えに行ってくれました。

 帰ってきた子供二人。

 1歳5か月の長女がドタドタ、と私めがけて走ってきました。

 このまま飛びつかれたりしたら。

 地獄です。


「アカン! こんといて!」

「行ったらアカン!」


 叫んだ私と長女を捕まえて叫んだ私の父の言葉に、私を見下ろしながら下唇をつきだし震わせ、必死に泣くのを我慢しようとするジャイ子。

 かわいそうに。ごめんなさい、ジャイ子!

 でも今は本当に無理!


 それから夕食に母がうどんを作ってくれましたが。


 運んできてくれたうどんを昼間の焼きそばのように食べようとうつ伏せになろうとしましたら。


 ビギビギビギビギビギーーーンッ!!


「あ、ああっ!!」


 あわてて床につっぷし、じっと痛みが治まるのを待つ私。


「あかん、夕飯食べやんとくわ」

「せやな、そうしい」


 私の様子を見てうどんをもって立ち去る母。

 私は涙目で痛みをこらえました。

 ひどい。この前の背中よりひどい。なにこれ。


 それからが、本領発揮でした。


 ぴくりとも動かない私に、腰の筋肉は勝手に自己主張を始めたのです。

 そうです。

 勝手に、きゅうう、と腰の筋肉は私の意志とは無関係に収縮を始めたのです。


 うんぎゃあああああ!


 私、動こうとしていないのに!

 勝手にビキビキビキ、と動き出したのです。それと呼応して走る傷みの交響曲!


 自己主張、せんでエエ!

 なんで!?

 痛いのになんで勝手に収縮してんの!?

 そんなにこれほど傷ついてます、ってウチに教えたいんか!?


 私は悲鳴をあげました。


「じっとしてても、勝手に筋肉収縮して痛い!」


 涙目で訴える私に、母がため息をついて言いました。


「もう、救急車、呼び」


 私は頷いて、母から携帯を受け取り、119番を押しました。


「ぎっくり腰を起こしまして、動けないんです」


 住所と名前を伝え、そして、救急車は5分後くらいに来てくれました。


 ――しかし。



 それからもスムーズに搬送とは行かなかったのです……。

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