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寮生活

 主人と私が出会いましたのは、学生時代です。


 二人とも、同じ海の学校に進学しましたので出会ったわけですね。

 この学校、東海地方の、日本の象徴である某山がある県の、天女伝説がある某浜辺の付近にあります。


 船の仕事をするなら集団生活に慣れなければなるまい、というわけで、生徒は寮生活が基本。

 ここの学校がね、ありえないくらい安かったのです。

 私の学んだ科は一年間(専門学校扱い)で、主人の科は二年間(短大扱い)なのですが。


 私の場合、一年間の学費、食費、光熱費……もろもろ合せてですよ。

 なんと。

 6☓万円、ぽっきり。

 安い! 親孝行の学校だぜ!

 現在は私の学んだ科はなくなってしまいましたけど、本当に安い学校でしたねえ。

 国から包丁セット、をもらえたりなんかして。ありがたかったです。(そのときはまだ運輸省だったかな?)


 さて、この寮生活。

 とーっても、楽しかったのです。

 私が入学した時に新設された女子寮に入ることができまして。

 一人、一部屋。オーシャンビュー。広々としたフローリングの娯楽室。班ごとにTVが一つ。

 期間が一年だった、ということもあってですね。(一年以上だと、なにやら問題が起こりそうですが)

 女子寮ライフを寮生みんなで仲良く満喫しておりました。


 反対に男子寮。年季が入ってます。

 女子は男子寮に入れないので、主人に写真で内部を見せてもらったことがあるんですが。

 雰囲気、いまいちでした。ベッドがパイプで、ビニールタイルの床で、殺風景で。

 ああ、女子寮でよかった、と思いました。でも私が入る一年前などは、女子も同じその寮にいたわけです。

 そんなことして大丈夫だったのかな? と思いますよね。18、19の男女がですよ。

(女子は少ないので、一階が女子区画、だったそうですが)

 宿直の教官が毎晩見回りにくる目をかすめて、お互いの区画に忍び込み異性に会うというスリルがたまらんかった、と卒業した先輩方がおっしゃっていました。(うん、それは確かにハラハラして楽しそうですね)

 私が入学したときには男子、女子と分かれてしまったので、そのドキドキ体験はできず、でした。残念。


 代わりに密かにドキドキする機会はありましたね。寮に入って間もないころです。

 教官の中に、宿直当番になると星座観察を行う教官がいまして。

 晴れていて綺麗な夜空だと『希望者は中庭に出るように』とアナウンスが入ります。

 二つの寮からぞろぞろ出て、中庭に集合。

 教官の声に続いて、

「スピカー」「デネブー」

 等々、合唱します。

「……昔の船乗りは素晴らしい。星で位置を確認していたんだ」

 最後にお決まりのセリフでしめくくる教官。


 ……みんな、目当ての異性が気になって聞いちゃいないよ☆

 夜に会える、そして、みんながお風呂あがりの格好、というのがドキドキしましたね。


 そして、時が経つにつれてその中で成立したカップルが、寮の門限時間まで寮の付近でウロウロ、ウロウロする光景が目立ってくるようになるんですね。


 寮生活はこんな感じでした。

 しかし、過去には事件もあったみたいですね。


 私がいたときの話ではなく卒業された先輩から聞いた話ですが。


 ある朝、ひとりの男子寮生が目覚めると、隣に見知らぬおっちゃんが同衾していた……ぞぞっ。


 夜中、酔っぱらったおっちゃんが、勝手に非常口から入り。

眠くなっちゃったな、あ、ベッドがあるな。

と、彼のベッドにもぐりこんだようなのですが。


 目覚めた時の彼の恐怖ははかり知れないものがあるでしょうね。

 それより、これが女子寮生でなくて本当に良かったですが。


 怪談もありましたね。


 やはり、古い歴史ある男子寮。

 夜中のある一定時刻になると、すうーっと白いものが部屋から部屋へ壁をぬけて通り過ぎていくとか。

 これは目撃者続出。やはり霊感がある人しか見れないようでした。(主人は見られなかった)

 信憑性が高かったです。


 夏休み明け。

 夏休み中に事故で亡くなってしまった一人の男子生徒。

 みんなが帰省先から寮に戻ってきた次の日、学校でその旨を告げると

「え? あいつ、昨日いたけど? 見たけど?」

 と証言する寮生続出。

 ……これもありそうな感じです。


 なにはともあれ、寮生活は本当に楽しく、貴重な経験をさせていただきました。

 大勢の他人と、家族のように暮らすなんて、もうあんな経験をすることはないでしょうね。


 今でも、一年間くらいなら、また寮生活をしてみたいな、と思ったりします。



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