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次男の出産2

 えー、三回目の出産にして初。

 私、裂けました。ーー


「羊水が少し混濁してるんです。赤ちゃんが中で胎便出しちゃったみたいで。あまり、時間がかかるとよくない状況なんで、早めに終わるように頑張りましょう」


 先生がそうおっしゃいます。

 今回も私、早く終わると思いますよ。

(過期産スレスレだった私。だから、赤ちゃんはお腹の中で大をしちゃったのかな?)


 以前と同じように、お腹をはだけさせられ、消毒薬がぶちまけられます。

 うおう、いつも思うけど豪快な感じ。

 先生が少し考えたように、ちょっと待って、と私のお腹の上に紙のシートみたいなのを置きました。


「なかなか出てこないときは、ちょっと上からお腹を押させてもらわなあかんからね」


 いえいえ、そこまでには至らないと思いますよ。(そして、その予感はそのとおりに)


 陣痛が来ました。


「はい、いきんでください」


 傍らの助産師さんに不意に言われて、もうお許しをもらえると思っていなかった私は、息を吸い込むのも忘れてあわてていきみます。

 しまった、呼吸が続かん!


「はい、そんな感じ。力抜いて。息、止めなくてもいいですからね。しっかり吸って、吐いて」


 息を止めなくても良いとな?

 私は不思議に思いました。

 これが現在主流になりつつある、ソフロロジー。お腹の赤ちゃんにしっかり酸素を送るために息は止めない方がいいんですって。

 いきむときも、少しずつ鼻から息を漏らすような感じで吐くのが良いんだそうです。

 この病院はソフロロジーを推奨されていて、ソフロロジー教室もあったのですが、私は行きませんでした。もう、三回目だからいいと思ってね。

 でも、個人的には息を止めた方がやっぱりいきんだ感があると思うんです。

 助産師さんはそう指導してくださいましたが、私はやっぱり息を止めていきませていただきます!


「はい、次いきんで」


 思いっきり息を吸い込み、二回目のいきみを私は開始します。

 長男のときのように、短期決戦で。し、の字を書くようなイメージで。首を引き、背中を椅子に押し付けて。


 股間に巨大なモノが下りてくるのを感じました。よし、思いっきり。更に力を込めた次の瞬間。

 ビリッ、と股間から両太ももの裏側に電気のように走る鋭い痛みを感じました。

 今までの出産では感じたことのなかった痛みです。なんだろう?

(おそらくこのときに会陰が裂けた)


「はい、力抜いて」


 先生が麻酔を注射したのが分かります。

 私が長男のときに病院で教わった犬みたいなは、は、は、と短促呼吸をしますと、「ゆっくりと吐いて」と助産師さん。これもソフロロジー?


 先生と助産師さんが赤ちゃんの頭の向きを変え、身体が出てくるのを手助けしてくれるのが分かります。ズルリ、と搬出しました。

 で、出た……。

 泣き声が聞こえました。


 赤ちゃんが運ばれるのが見え、私は時計を見ました。5時半。やっぱりな。

 軽い陣痛とともに胎盤が出ます。

 ふう。三回目にして、ウチ、やっと出産のコツがつかめた気がするわ。今までで一番あっけなくて、ラクやったかも。こんなんやったら、もう一人ぐらい産んでも……はっ、イカンイカン、何を考えてんねん。ウチのキャパは三人までや!


 先生が私のお腹を押して子宮を確認しました。


「……やわらかいな。あかんねん、これ。子宮硬くならなあかんねんけどな。出血、多なるから。ちょっとおさえますよ」


 と、ぐいぐい私の子宮を押さえ始めました。

 ぐおおお! い、いたい!


「痛いけどごめんな。我慢して…………あかんな、まだ。薬も入れよ。ちょっと、子宮マッサージして」


 先生の言葉に助産師さんが交代し、本格的に私の子宮を揺らすように揉み込み始めました!

 うぐおおおおおう! 強烈ですなあ!


「子宮収縮する薬、点滴します」


 もう一人の助産師さんがテキパキと私の腕を出し、針を刺します。


「お、よしよし。硬くなってきた。……赤ちゃんにおっぱいも吸ってもらおか」


 先生が指示され、ベッドで泣いていた赤ちゃんが連れてこられました。私の脇に下ろされ、口を乳首に近づかせますと。引き寄せられるように口を開けて乳首に吸い付きます。

 はは、やっぱり可愛いわ。

 顔は長男ほどにはいきませんが、可愛らしい顔をしております。私、男の子の方が可愛く産めるんかなあ。


「赤ちゃんに助けてもろて、収縮させよ」


 乳首を吸われることにより、放出されるオキシトシン(子宮収縮ホルモン)ですね。


 産後、ここまでぐいぐい子宮を揉まれたのは初めてでしたが、これがやはり良かったのでしょう。今までで、一番出血が少なくて済みました。


 先生は私の脚の間で縫合を始められました。


「痛かったら言うてくださいね。……あのね、結構裂けてしもたんやわ。お尻の方に向けて。……裂ける予定やなかってんけどな」


 私、今回いきみ過ぎちゃったかなあ。切開する前に、押し出しすぎたのかなあ?


 チクチクと縫われるのを大人しく見ていた私は、唐突に昔聞いたA先輩の話を思い浮かべました。


『私の友達ねえ、出産後に会陰縫ってもらうときに「小さめに縫っといてください」て先生に言ったらしいよ」』



 ーー何故、今このとき三回目にしてコレを思い出すのだ、私!


 これは神の啓示?

 最後のチャンスかもしれないから与えてくれたということ?

 私は葛藤しました。

 どうする? 言うてみる?


 私はもう三回目。流石に次は無いと思う。コレが最後かも……。


「ち……」


 私は先生に言いました。


「はい?」

「……ちくちく、します」


 私の根性無し!

(後で調べると、本来縫わなくてもいいところまで縫ってしまうと痛くて我慢出来ないとか。言わなくて良かった)


「ああ、ゴメン! もう終わりやから! ちょっと我慢して」


 先生が言われ、そしてしばらくして終了。


「うん、早かったね」


 時計を確認して先生がお決まりのセリフを。


「おめでとうございます」


 ありがとうございます。


 次男の分娩所要時間は、約二時間、でありました。









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