草笛
五月の田植えの時期のことです。
子供たちを外で遊ばせているときに、私の姉がタンポポの茎を笛にして鳴らしました。
ブィー。
のどかな初夏の太陽の下、素朴な振動音が響きます。
私と主人も姉にならってタンポポの茎を適度な長さに千切り、口に入れました。
先を少し噛んで、息を吹きます。
……私も主人も鳴らない。
あれえ? おかしいなあ。
子供の時、散々吹き鳴らしたのに。
もう一度新しい茎でチャレンジ。
少し、唇で挟む力を込めて。
ビー。
鳴りました。
ああ、思い出しました。この感覚。
主人にコツを教えますが鳴りません。
少し、優越感。
次に私と姉は、田んぼの中に生えている草をとりました。なんていう草かなあ。
麦笛と同じ要領で、中の茎を引っ張って抜き出し、残った茎を葉を折り返して口に挟みます。
ピー。
姉も私も、澄んだ音色が出ました。
主人も真似しますが、鳴らない。
「あれ、なんで鳴らないんだ」
次々に何本も千切っては四苦八苦していますが、全く鳴りません。
ふふ、主人に勝った。
些細なことですが、猛烈に優越感を感じる私。
昔はいろんな草笛に挑戦したなあ。
椿の葉を丸めたやつとか。あれは、大きなラッパのような音がします。
ほおずきには、何回も挑戦しましたが、出来た試しがありません。
笛を作る前段階で、ほおずきの実を長時間揉んで柔らかくしますよね。私はあの段階でいつも飽きてしまって、放り投げてしまうのです。
今度、ジャイ子と共にほおずきの笛に挑戦してみようかな。